本日は雌のカバ「モモ」の誕生日であります。
・「モモ」は長崎バイオパークにて飼育されている雌のカバであります。
1994年3月6日、父「ドン」と母「ノンノン」の間に仔カバが生まれましたが、
その日は気温/水温ともに低く、通常カバは水中で出産するのに対して、
この日の「ノンノン」は低い水温を避けて陸上を出産場所に選びました。
体長80cm/体重は32kgで生まれた仔カバは寒さのために体力を消耗して
「ノンノン」の母乳が飲めない上に、下痢と脚部の負傷も重なったため、
やむなく「ノンノン」から引き離す決断を下しました。
その後、仔カバを職員用の風呂場に運び、冷えて衰弱した体を
シャワーで温めて体温上昇に努めました。仔カバが元気を取り戻したところで、
母乳の代わりに牛乳を与える事にしましたが、どのような種類のミルクが
適しているのか解らない状況で付近の牧場に電話で問い合わせられたところ、
牧場主の勧めによってジャージー牛のミルクを調達してもらう事となりました。
やがて、仔カバを「ノンノン」に返そうとしましたが、早々に引き離した事により
「ノンノン」は仔カバを受け入れようとしなかったため、
飼育担当者の方々14人のチームで人工哺育に取り組まれる事となりました。
カバの人工哺育成功例がない状況で手探りでの飼育が行われ、
担当者の方々による泊まり込みでの世話が続きました。
仔カバは生後約1か月を経過した1994年4月9日に一般公開されました。
しかし、無事には育ったものの生後すぐに親と引き離さざるを得なかったために
泳ぎ方を全く知らず、水に入る事さえ怖がっていたほどでありました。
同年5月12日、いつかカバの社会に戻すためにも泳ぎは必須であるとの考えから、
仔カバに対して泳ぎの特訓が始まりました。やがて訓練が功を奏し、
不格好ながらもバタフライ風に泳げるようになり、同年6月1日には
6000通を超える応募の中から仔カバは「モモ」と命名されました。
また、「モモ」の泳ぎの特訓の際にはマスコミに繰り返し取材された結果、
長崎県内だけでなく日本全国に知名度が広がる事となりました。
「モモ」は生後半年が経過した時分から離乳が始まり、
その後、体長2m/体重350kgにまで成長した時点で、
飼育場所を室内からカバ池に引っ越しさせる事が決まりました。
しかし、「ドン」や「ノンノン」がすぐに「モモ」を受け入れる保証がないため、
まず引っ越しの第一段階として、「モモ」を両親と柵越しに「お見合い」させて
自身よりも大きなカバに慣れさせる事から始まりました。
引っ越しは1996年7月16日に決行されました。通常カバなどの大きな動物は、
パーク内など短距離の移動でも頑丈な檻や箱に入れてトラックで運送しますが、
「モモ」は人に慣れているためパーク内を歩かせながら移動させる事としました。
しかし、パークに訪れた多数の来園者とマスコミの取材陣のせいか
「モモ」の移動は思うようにいかず、しかもこの日は朝から暑かったせいもあり、
30分で済むはずのカバ池への移動が3時間もかかる事となってしまいましたが、
引っ越した後、「モモ」は柵越しに「ドン」や「ノンノン」と過ごす事となりました。
当初「ノンノン」は柵越しに「モモ」を威嚇しておりましたが、体調を崩して
「ドン」と離れて飼育される事で持ち前の気の強さが影を潜めていき、
担当者の方々はここで「モモ」と同居させる事に決められました。
1998年11月18日、「モモ」は「ノンノン」がいる柵の中に導かれ、
その後の2頭の関係は良好なものとなっていきました。
その後、担当者の方々は「モモ」の結婚について考えられ、
相手探しの矢先に東武動物公園の西山登志雄園長から
2歳の雄カバ「ムー」について連絡があり、結婚の話は順調に進み、
「モモ」と「ムー」の結婚式は大安吉日にあたる2000年3月21日に挙行されました。
2頭は結婚式当日に初めて一緒の柵入りを果たし、関係も良好なもので、
気の早い方は赤ちゃんの誕生を質問されるほどでありましたが、
人工哺育で育った「モモ」が立派な母親になれるのかという懸念もありました。
2001年1月、飼育担当者の伊藤雅男氏は「モモ」の体の変化に気付かれましたが、
人工哺育で育ったカバという事もあり、自身の思い過ごしとも考えられました。
しかし、4月22日の昼前に飼育担当者の1人から「モモが子供を生みそうです」
との連絡があり、伊藤氏を始めとした飼育担当者の方々や多くの来園者が
見守られる中、5時間以上の苦痛の後に「モモ」は水中で仔カバを出産しました。
伊藤氏が驚かれたのは、「モモ」が生まれたての仔カバに対して
普通の母カバと同じように水中で授乳していた事でありました。
生まれた雄の仔カバは「ももたろう」と命名されてパークの人気者となり、
3頭でカバ池で仲良く「川の字」になっての寝姿も見せました。
「ももたろう」は1歳の誕生日を迎える前の2002年4月に
中国の西霞口野生動物園へと旅立っていきました。この旅立ちに対しては
「モモ」のファンから抗議の電話が多数ありましたが、雄の仔カバは父カバから
縄張り争いのために攻撃を受けて命を落とす例があるため、
この旅立ちには「ももたろう」の命を守るという意味合いも含まれておりました。
2003年7月26日に誕生した雌の仔カバは「ゆめ」と名づけられ、
4歳になる2007年6月26日に静岡県の富士サファリパークに旅立っております。
2009年4月1日には第3子となる雄の「龍馬」が誕生し、
2010年3月17日に鹿児島県の平川動物公園に旅立っております。
2011年5月28日には第4子の雄「百吉(ももきち)」が誕生しております。
「モモ」と「ムー」は順調な繁殖を続けておりましたが、
2012年2月6日に夫の「ムー」が腹膜炎によって生涯を閉じてしまいました。
また、2013年7月2日には「百吉」が北海道の旭山動物園へと旅立っております。
同年11月7日、神戸の王子動物園から新しい夫となる「出目太」が来園して、
18歳差の夫婦となりました。「出目太」との間には、
2016年10月に第5子の雄「テト」が誕生しております。
長崎バイオパークのカバは、日本有数のカバの大家族として
来園者や地元の人々に愛され、親しまれております。
けものフレンズにはカバのフレンズの方々がいらっしゃいます。
カバ様もゴルゴプスカバ様も、ライダースーツのような独特の服装と
丁寧で物腰の柔らかそうな振る舞いが印象的でいらっしゃいます。
カバは動物園でその姿を確認できる動物ではありますが、
世界での生息状況においては絶滅危惧に指定されている存在でもあります。
これからもカバが元気に過ごす事のできる世の中とするために、
私達の日々の取り組みの積み重ねが重要となるのであります。
本日もお祈りいたします、みんみー。