本日は1895年にイギリスにてナショナル・トラストが発足した日であります。
・「ナショナル・トラスト」とは、歴史的建築物の保護を目的として
イギリスにおいて設立されたボランティア団体で、正式名称は
「歴史的名所や自然的景勝地のためのナショナル・トラスト」であります。
「ナショナル・トラスト」はその設立の目的として
「国民の利益のために、美しく、あるいは歴史的に意味のある土地や資産を
永久に保存するよう促すこと、土地については、実行可能な限り、
その土地本来の要素や特徴、動植物の生態を保存すること、
そしてこの目的のために、資産の所有者から歴史的建造物や
景勝地の寄贈を受け、獲得した土地や建物などの資産を
国民の利用と楽しみのために信託財産として保持すること」と定めており、
単なる環境保護ではなく、歴史的建造物や景勝地を
国民の遺産として保持する事で、愛国心や国民の一体感といった
ナショナル・アイデンティティを形成・強化する事を意義としております。
この組織による保護活動が著名となった事から、同様の趣旨を持った活動、
あるいは理念そのものを「ナショナル・トラスト」と呼ぶ事もあります。
2015年現在において、424万人の会員と6万人超のボランティアが支える
イギリス最大の自然保護団体となっております。
英国政府の公的機関であるイングリッシュ・ネイチャーや、
イングリッシュ・ヘリテッジらと協力して活動を進めており、
主な対象はイギリス国内の自然遺産や文化遺産であります。
多くの方々から寄付を募り、これを財団/NPO/NGOなど税制上で有利となる
組織を通じて使う手法で、対象の維持/保全/未来への引継ぎを図っております。
また、行政組織に働きかけ、経済上/行政上/法制上の手法を工夫する事により、
対象の維持/保全/未来への引継ぎを図る。
・「ナショナル・トラスト」は1895年1月12日、ロンドンのスラム街での
住宅改良運動で成功を収められた社会改革者のオクタヴィア・ヒル氏、
環境保護団体での実績のある弁護士のロバート・ハンター氏、
湖水地方の鉄道建設反対運動の指導者を務められた
司祭のハードウィック・ローンズリー氏の三名によって設立されました。
設立の背景には、他のヨーロッパ諸国でのナショナリズムの高まりに比して
大英帝国では国内統合が進んでいないのではないか、といった
知的エリート層の方々が抱かれる危機感がありました。
トラストの運営にはジェイムズ・ブライス氏のような議員や大学教授、
ジャーナリストなど幅広い知的専門職の方々などが集まられ、
ウェストミンスター公爵をはじめとする伝統的支配階級の方々が
パトロンとなられた事で成り立っておりました。
「ナショナル・トラスト」は国家や自治体とは独立した公益法人でありますが、
その活動には公的権力の介入が不可欠でありました。
トラストは評議会の議員の方々と連携し、古記念物保護法の改正や
1907年に「ナショナル・トラスト法」を成立させるなど、
国家による法的援助を受ける事に成功しております
組織が扱った最初の建築物および自然区はそれぞれ
「アフリストン・クラーギー・ハウス」と「ウィッケン・フェン」でありました。
20世紀中頃になると、貴族およびジェントリ層が農村に所有される邸宅
「カントリー・ハウス」が経済的な負担から維持できなくなるケースが増え、
「ナショナル・トラスト」もこれらの保護に力を注ぎました。
・イギリス国内において、入場料を徴収しているナショナル・トラスト施設の中で
著名なのは「ジャイアンツ・コーズウェー」「ストウヘッド庭園」「クリーデン」等で、
他には童話「ピーター・ラビット」の舞台「湖水地方」、
「ピーター・ラビット」の作者ビアトリクス・ポター氏が晩年を過ごされた
2階建ての家「ヒル・トップ」、ボーイスカウト発祥の地「ブラウンシー島」等、
多くの場所がナショナル・トラスト施設となっております。
巨大な動物園施設ジャパリパークとして運用されている場所は、
海底火山の噴火によって出現した島そのものであります。
その島は国定公園に指定されてもおかしくないほど豊かな自然環境を有しており、
その環境をそのまま活用する形でジャパリパークは運営されております。
地球環境に対する意識が高まっている現在において、
「ナショナル・トラスト」のような団体が持つ役割は大きいものでありますが、
地球環境はそのような団体だけで支えられるものではありません。
この地球に暮らしている私達一人一人の日頃の取り組みの積み重ねも、
今後ますます重要となっていくのであります。
本日もお祈りいたします、みんみー。