虫喰いでないフレンズ
10話>> 484
二人は樹林帯に入っていた。
木は深く茂り、木生シダのような高く伸びる植物が陽射しを適度に遮っている。
アフリカとはことなる温暖な地域に生える植物ばかりの森だが、アフリカゾウは植物をドブネズミに紹介しながら歩いていた。
ドブネズミ
「……ふあぁぁぁ」
アフリカゾウ
「大丈夫?昼寝してったほうが良いんじゃない?」
ドブネズミ
「ん……ここはどこだ?」
アフリカゾウ
「大丈夫じゃあなさそうだね。山のふもとの森だよ。リウキウ?ってところと似てるんだって」
ドブネズミ
「山か…全然登ってないみたいに見えるが、たどり着けるのか?」
アフリカゾウ
「大丈夫だよ!おっきな山はこんなもんだから」
ドブネズミ
「そういえば、草原には他のフレンズがいなかったな。まさか昨日倒したアイツ…」
アフリカゾウ
「……」
ドブネズミ
「いや、わたし達で倒したろ?もう怖いことないだろ」
アフリカゾウ
「そうじゃあないの…もう会えなくなってる子がいるかもしれなくて」
ドブネズミ
「…そ、そうか。みんながいるといいなぁ」
アフリカゾウ
「うん、そうだね。
………? ねぇ、誰かこっちに走ってきてない?」
ドブネズミ
「うん…なんか聞こえる」
アフリカゾウ
「あ、ハブちゃん!」
ドブネズミ
「ハブ?」
ハブ
「おーーー!ハムハムできそうなのがいる!
これはもうハムハムするしかない!
おまえ!ハムハムさせろ!」
ドブネズミ
「ハムハム!?」
アフリカゾウ
「ハブちゃん、何があったか知らないけど、咬みたいなら私を咬んで!」
ハブ
「ハムッ!ハムハム……アフリカゾウか?」
ドブネズミ
「…………」
ドブネズミが初めて見るそのフレンズは尻尾を鷲掴みにしながら咬み付いてきた。
ハブが迫ってきたとき、同じフレンズでありながら逃げ出したくなる気迫を感じた。
押さえられながら尻尾を咬まれているのでなかなか逃げられないが、ただただ『咬むだけ』で危害を加えてきているわけではないしアフリカゾウが相手の名前とそれ以上の情報を知っているようなのでラットでの攻撃をしないことにした。
アフリカゾウ
「遅かった…ドブネズミちゃん、その子はハブっていうの。
ヘビのこみたい。
ハムハム〜って何か咬むのが好きなんだけど、前会ったときはこんな感じに咬んでくる子じゃあなかったの……」
ドブネズミ
「なんでまた、そんなことになったんだ?」
アフリカゾウ
「わからないよ…なんでこんなことになってるか教えて、ハブちゃん?」
ドブネズミ
「ああ、そうしてくれるととても助かる」
ハブ
「ハムハム…わかった。
アフリカゾウの友達のようだから教えよう。
ハブは今空腹のどん底にいる。ハムハム。
近頃ボスが現れなくてな。ハムハム。
ずっと探してたんだ。ハム。」
アフリカゾウ
「そうなんだ………」
ドブネズミ
「じゃあ、わたしをこうしているワケは?」
ハブ
「ハブはそれほど食べなくても問題はないがな。ハム。
ちょっとボスが来なさすぎる。ハムハム。
ハムれるものといえば他のフレンズくらい。ハム…ハム。
じゃぱりまんはハムりがいがあるけど、ノドゴシをたんのーすることもセットでできるのがダイゴミなことを思い出して空腹が加速しているんだ。ハムッハムッ」
アフリカゾウ
「そーだよね、ハブちゃんも一回まとめて食べたらずっと食べなくていいんだよね。ダイエットしなくていいんだもんね……」
ドブネズミ
「……ボスが来ない……?なるほど。そろそろ離してくれないかな?
このまま咬まれ続けるわたしはマトモに見動きがとれないんだ」
ハブ
「ふ、もういいだろう。ではハブからも質問するぞ。おまえはドブネズミと言ったな。アフリカゾウと知り合いなのか?」
ドブネズミ
「まあ、そうだな…っ」
アフリカゾウ
「ふふふ、そうなの。ドブネズミちゃんのお友達第一号だからねっ!ドブネズミちゃんは、たぶん照れてるだけだから」
ドブネズミ
「……そ、そうだ…」
ハブ
「ふむ。どうやら本当のようだな」
アフリカゾウ
「えっとさ、詳しいことはこんなとこじゃなくて、落ち着けるところに行ってから話さない?」
ハブ
「それもそうだな。付いてこい。ハブの住処に行くぞ」
ハブを加えた三人でハブの巣穴へ行くことにした。
ハブの巣穴は入り口も通路も狭く、ドブネズミとアフリカゾウが入るときに支えてしまい無理に通った。
ドブネズミは穴が狭いなと思い、アフリカゾウはダイエットしたほうがいいかなと思ったが、ハブがスルスルと通れるのをうらやむ気持ちは同じだった。
奥の方には三人で座れる以上の余裕のある空間が広がっていたため、そこで昼食をとることにした。
アフリカゾウ
「やっぱり暗いね……でもハブちゃんは見えるんだよね。はい、じゃぱりまん」
ハブ
「何!?くれるのか!?」
ドブネズミ
「困ったときはお互いさま、だ。
わたし達もちょうど食べようと思ってたところだし、三人で一つずつ食べよう」
(ずっとあんな調子で咬まれ続けるなんて御免だからな)
ハブ
「おおお!ありがたいな。まずはしっかりハムるぞ」
アフリカゾウ
「ハブちゃん!いただきますしよう!」
ハブ
「ハムハ…?そうだな。いただきます」
ドブネズミ
「いただきます」
アフリカゾウ
「いただきます!」
ハブ
「ハムハムハムハムハムハムハムハムハムハムハムハムハムハムハムハムハムハムハムハムハムハムハムハムハムハムハムハムハム」
ドブネズミ
「アゴの筋肉が疲れそうだな」
アフリカゾウ
「フフフッ、ドブネズミちゃんだって食いつきがすごく速かったよ」
ドブネズミ
「ああ、わたしはそこにある食べものが、自分ろもろになはないかもしへないかはなッ、はぁ」
アフリカゾウ
「噛みながらじゃあわかんないよ〜」
ドブネズミ
「食うものが逃げることだってあるだろってことだ。なあハブ」
ハブ
「?じゃぱりまんが逃げるのか?」
ドブネズミ
「じゃぱりまんのことじゃあないんだけど………」
ハブ
「ハブはもう食べ終わったぞ。ハブは食事の後は歯を磨く。あっちで歯磨きしてくる」
アフリカゾウ
「いってらっしゃ〜い」
ドブネズミ
「歯……そういや、全然伸びてないな」
アフリカゾウ
「伸びてない?」
ドブネズミ
「ハブの歯はどうなのか知らんけど、わたしの歯は結構伸びるものだったんだ」
アフリカゾウ
「へぇ」
ドブネズミ
「伸びた歯を研ぐために木とか硬いものを齧るのはメンドーなもんだよ」
アフリカゾウ
「他のネズミのフレンズたちは木を齧ってるけど、使ってると伸びるのは気にならないって言ってたっけな」
ドブネズミ
「え?……伸びるのか?みんなは……?」
アフリカゾウ
「クマネズミちゃんもテンジクネズミちゃんも、ハツカネズミちゃんもヌートリアちゃんも、ヨーロッパビーバーちゃんもガジガジ〜〜〜ッてやってたから、伸びてると思うよ」
ドブネズミ
「そうなのか……!? アガガッ!?」
アフリカゾウ
「え〜!?スゴい勢いで歯が伸びてる!」
ドブネズミ
「わんで……『わ』が言いぐええ…
(なんで 『な』が言いずれえ)
わえわがながくなってう……
(前歯が長くなってる)
とひあへふ、うぃひあふひえーほ
(取り敢えず 短くしねーと)」
アフリカゾウ
「???
何て言ってるの?」
ドブネズミ
「うぃひあふふうんがお。
(短くするんだよ)
こおかげおいひおかかははごうが?
(この壁の石の硬さはどうだ?)
ガリガリガリガリガリガリガリガリガリ」
ドブネズミは丁度よく突き出た石を見つけた。
姿勢を試行錯誤してバランスよく削ろうとしているようだ。
アフリカゾウは、これが異常なこととは思ったが危険が迫っているワケではないと感じた。
ちょうどこの空洞の奥の方から足音がした。
戻ってきたハブだった。
ハブ
「…………………」
アフリカゾウ
「はぁ………でもなんだか大丈夫そうでよかった。あ、ハブちゃんお帰り。ちょっと早いね。そこのドブネズミちゃんの歯がね、いまさっき急に長く…」
足音の方へ振り向くとハブがこちらに近づいてくるのがなんとか見えた。
そこでアフリカゾウは暗闇にも関わらず一見してわかる異変がハブに起こっていることに気づいた。
『野生開放』しているときと同じように光る目。いつものようにキバを見せていない口。
力なく垂れ下がる腕。
そして頭に白いものを付けているのがアフリカゾウには見えた。
ハブ
「フシュゥーーー………」
アフリカゾウ
「ふしゅーー?なんかおかしいよ…大丈夫?」
ハブ
「ギャァアーーーーーースッ!」
アフリカゾウ
「ひゃあっ!?」
ハブ
「…………アガガッ!?」
ハブはアフリカゾウに咬みつこうと飛びついた。
しかし、牙はアフリカゾウに届かない。
ドブネズミが『ラット』を咬ませたからだ。
咬み付いたら放さないのでこれだけで簡単にハブを拘束できた。
ハブ
「フゴゴ………ガガガ」
ドブネズミ
「さっき…の……わたしと同じ…ようなリアクション……だな。
様子は…さっきのおまえ……とはまるで……違うが。
何……があった?
これが……イタズラなわけが…ない…。
捕食者の……ニオイ…がするからな…。
わたしにまで……敵意が…剥き出しだ」
アフリカゾウ
「ドブネズミちゃん!?苦しそうだけど何で?てか歯は?」
ドブネズミ
「この歯は……元通り……にできた…。
ハブ……がアフリカゾウを……襲おうとしてた……みたいだから『ラット』を…咬ませて防いだ。
だが…首の辺りが丁度…ハブが今咬んでるところらしい……。
スタンドが傷つけば…本体も傷つくってわけだ……」
アフリカゾウ
「何でそんなこと……」
ドブネズミ
「こんくらいは……まあなんとか…。
あまり…長引かれると困るが……。
この状態だと『ラット』も…使いづらいしな」
ハブ
「ハムッ……ハムッ…ガッ!」
アフリカゾウ
「少しはハムハムしてるみたい……。
でもなんだか荒っぽくていつものハブちゃんらしくない……」
ドブネズミ
「ハブは……なぜいきなり…襲いかかったりしたんだ………?」
のののののののののののののののののののの
とある洞穴の中で、常人には捉えられぬ影が暗躍していた。
ほくそ笑むその邪なる者は身を潜め、目的のため観察に徹する。
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???
「イイゾ……効果ガ現レテイルヨウダ…
コノ狭イ空間デ豹変シタ友ヲ救ウコトガデキルカ、見セテモラオウカ……」
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←to be continued…
読んでるよ 更新ガンバッテ👍👍
ありがとうございます!😊😊