本日は1991年に、人工生態系を維持する実験「バイオスフィア2」の
最初のミッションが開始された日であります。
・バイオスフィア2とは、アメリカのアリゾナ州オラクルに建設された、
巨大な密閉空間の中に作られた人工生態系の事であり、
名称は「第2の生物圏」を意味しております。
建設の目的は、人類が宇宙空間に移住する場合に閉鎖された狭い生態系で
果たして生存することができるのか検証する事と、
「バイオスフィア1」すなわち地球の環境問題について研究する事でありました。
アリゾナ州オラクルの砂漠の中にそびえ立つガラス張りの巨大な空間に、
世界各地から持ち込んだ動植物によって熱帯雨林/海/湿地帯/サバンナなどの
環境を再現してしている大規模な施設となっており、
日光によって空気が膨張し気圧が変化するのを防ぐために、
巨大な気圧調整室が設けられているのが特徴となっております。
建物の面積は1.27ha/最高部の高さは約28mあり、
これまでに建設されたこの類いの施設として最大のものであります。
必要なエネルギーの供給は太陽光によって賄う事を目標としておりましたが、
建物の冷却と照明は外界からの電源供給に頼っていたのが実情でありました。
・実験はこの中で農耕や牧畜を行い食料と水分そして酸素を自給自足する事を
最大の目的としておりました。目的の達成のために様々な科学的分析なども
自らの手で行う必要があり、また、廃棄物も全て狭い生態系を循環するため、
通常では考えられない程の高濃度で食料を介して口に入る可能性があります。
したがって、試薬なども安全性に十分な配慮がなされております。
実験のスケジュールは、2年交替で科学者8名が閉鎖空間に滞在し、
100年間継続される予定でありましたが、実際には最初の2年間で途切れ、
第1回は1991年9月26日から1993年9月26日まで、
その後の第2回は1994年に一時的に6か月間行われました。
・実験が継続不可能になった背景には次のような問題が指摘されております。
・土壌中の微生物の働きなどの影響や、
日照が不足して光合成が行われない事などによる「酸素の不足」。
・上記の酸素不足の状態で二酸化炭素の割合が増え、
特に建物のコンクリートに吸収された分が活用できない「二酸化炭素の問題」。
・上記の大気の自律調整の難航や日照不足から、
多くの植物が予想していたほど成長しなかった「食糧不足」。
・外界との交流をいっさい断ち切られた空間では情緒が不安定になり、
食の不満足や安全面での不安がそれを更に強めた「心理学的側面」。
地元の資産家らが150億円を投じて建設された「バイオスフィア2」が
8人の人間を短期間しか生存させる事ができなかった事実は、
生態系というものがどれほど微妙なバランスを保って維持され、
いかにそれを模倣する事が難しいかを物語っているのであります。
・その後、1995年に「バイオスフィア2」の運営はコロンビア大学に委託され、
2003年まで教育施設として利用されました。2003年時点で1200人以上の
大学院生らがこの跡地で生態系に関する研究活動を行っております。
2005年には建物周辺の土地と共に売りに出され、
2006年に宅地開発業者によって購入されました。
2007年からはアリゾナ大学によって利用しております。
有料ではありますが見学者を積極的に受け入れており、
解説付きのツアーでレインフォーレスト/地下の機械類/
西の圧力調節ドーム居住棟を見学する事が可能となっております。
・日本においても類似の実験が行われており、財団法人環境科学技術研究所が
青森県六ヶ所村にて閉鎖空間長期間滞在実験を試みております。
ジャパリパークはご存知の通り、海底噴火によって誕生した島に作られた、
世界中の野生動物が集まる巨大な動物園であり、パークの各区画の
気候環境の差がはっきりしているなど特異な点も存在しております。
アニメ一期においてはサンドスターが気候に直接的に影響しており、
パークそのものが地球環境の縮図であるかのようでもあります。
しかし、その環境そのものは人工的に作られたものではなく、
元々の環境を活用して動物園施設として維持されているのが特徴であります。
もちろん、その事自体も相当に大変なものであると考えられますが。
前述の通り、地球環境は絶妙なバランスの上に成立しており、
もしも模倣するならば地球環境のメカニズムを完全に理解する事が求められます。
もちろん、現代の人類にそれを実現する科学力は備わっておりませんが、
もしそれが備われば、その科学力を地球環境のために活用すべきと考えるのは、
この地球に住まわせてもらっている立場として当然の事なのであります。
本日もお祈りいたします、みんみー。