予めある程度語弊があることを断っておきます。まず初めに共有していただきたいのは、EM理論が、先に述べたように「エネルギー管理をすれば空戦に勝利できる、そのためにはその機体が、ある速度、高度でどこに限界があるか(=どこまでできるか)を把握し、維持旋回や最大旋回も含めたある行動がどれくらいエネルギーを損失するか把握することである」ことです。葉5の言うサンボルの例えも、等しくPs>0(面倒なのでこの状態をE保持と呼ぶことにします)で捉えることができるんですよね。というのも、たとえば、機体AのPs=0といえば、「300kphの時、4G維持旋回できるから〜」と言った点に目が向きがちですが、Ps=0@0Gの値も当然に存在します。それはどこかというと、その高度における最高速です。Ps=0、つまりそれ以上の余剰出力がなく、加速することが不可能なため、その機体ではそれ以上の速度を発揮することができないのです。逆に、その機体の0Gの限界性能はどこかというと、通常はダイブ制限速度になります。その間はつまり、E保持のラインです(0Gだが、最高速に到達するまでに速度は減少していく)。よく言われる、直線時のE保持が良いという話はこの部類ですね(ex:F4U、テンペスト。ちなみに、本来ならばPs=ーxxft/sを示す曲線があり、そこで具体的な減少値をみることができます。)この話を先ほどのサンボル(以下、架空の機体B)の話を非常にシンプルな機体としてみると、あらゆる高度で同じEMダイアグラムを描くBが500kph/3G-300ft/secで2sec間3g降下する場合、そのあと常に0gで元の高度に復帰しようとしても、600ftを失うことになります(この意味でEMダイアグラムにおけるエネルギー損失は、高度損失で把握されます。上の方で述べた、特定G旋回は維持旋回と最大旋回の間に包含される、の意味はここにあります。また、わざわざ速度損失を速度換算損失としているのも、このためです)。このあと3000ft降下して580kphまで加速し、その時点で4g-400ft/secで1秒旋回した場合、この時点で-1000ft、つまり降下後は2000ftになることになります。(速度と高度は等価交換であるとして、その高度にたどり着くのは500kphであると思ってください)。P-47のような機体は、最高速度が高い、すなわち、高速時でもそれなりに余剰出力があるので、EMダイアグラム上、E保持の悪さは小さくなり、その分加速が良くなります。すなわち、そのような機体は、最高速度とダイブ速度限界がほど近く、その分ダイブ時、上昇時の加速と、速度の減りが遅くなるのです。なので、その分元の高度に戻るエネルギーを持ちやすい(同じ高度に戻りやすくなる)ということになります。じゃあ、旋回性能高い方が有利じゃん、とはなりますが、旋回性能が高い機体は揚力係数が大きい分、根本的に抵抗が大きく、高速かつ0G時の抵抗は大きくなりがち、つまり0GのE保持は悪くなりがちなのです。