日研北海道地区 新べらクラブ掲示板

剣が峰 / 1

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管理人 2022/07/16 (土) 22:12:47

2020年 8月14日(金)03時43分42秒

クリック間違いで、中途のまま投稿してしまいました続きであります。

 彼が旅立ったのが平成24年の3月でした・・・。
 すでに年号も変わり、8年の歳月が流れております。
 新べらクラブにはグループLINEがあります、菩提寺の所在地の関係でお参りがしやすい管理人が代表で命日と盆のお参りをしていますので、同チャンネルへその報告を上げています。
 嫁から「そういえば、会員でKさんを知らない人も随分と増えたんでしょう?」と・・・。
 「そんなことはないさ、あいつとあいつと・・・」。
 現在、弊会の所属は13名です、「あいつとあいつと」6名までは空で、「あっ後俺が」
 そうなんであります、かろうじて彼を知る会員は過半数を越えてはいるのですが、半分の会員は彼の没後に入会しており、彼を全く知らないのであります。

 「そうだね、少し暖かくなってきたからそろそろかもねー」「今はタイヤ交換の時期だからねー」
 自動車関係の仕事だった彼との最後の会話は3月の頭、亡くなる数日前の彼の職場に訪問した際の・・・、極々他愛のない会話でありました。
 当時の管理人は今のように2月頭から竿を振ってはおらなかったと記憶しております、「3月に入ってから」、しかも日を選んでのそれであったと・・・。

 「K君が亡くなった」
 「えっ」
 「今朝布団の中で眠ったまま息を引き取っていた」

 会員のIさんからの携帯でそれを知った。
 実はこの日は釣りの約束をしていた、釣り友との約束は鉄より硬い、しかも迎えに行く約束だこれを反故にはできはしない。
 迎えに行った先も彼をよく知る会員だった。
 「K君死んだらしい」
 「でも、彼もへら師、自分が亡くなってそのことで仲間が釣りをしないことは・・・」
 そんな、あり得ない理由を御旗に振りかざして、友人とガトキン前で竿を振った。
 『葬送の釣り』
 その日の釣りは・・・、残念ながら釣れた・・・、竿が曲がる度気持ちは沈んでいくのにだ。
 耐えられない、二人で「竿をたたもうか」と早々に釣り場を後にして、同行の彼を自宅に送り届け、K君の家に向かった。
 眠ったまま起きない彼は、まさに眠るように息を引き取っていた。
 オデコに手を載せると、さきっまでの釣り場の水の方が暖かく感じるほど、深い冷たさを湛えていた。
 その驚くほどの冷たさは、彼の「今にも起きそうな」様とは、あまりに乖離したそれであった。
 彼が、引き返せない、巻き戻せない、橋の向こう側に渡ったことを感じさせる、あまりに残酷な掌からの信号だった。

 葬儀は大変に辛かった、中でも忘れられないのは、Kさんの家族の承諾を得て祭壇の端っこに彼の愛用の釣台をセットする作業だった・・・。
 彼の義理の兄にあたる会員と二人でそれを為したのだが、目を合わせられない・・・。
 切なさに胸をえぐられ、何か大きな手で胸をぎゅっと握られて・・・、手拭きタオルを絞るように・・・、ぎゅーっと。

 あれから8年の歳月が流れた。
 彼のところへ顔を出しそこで彼と一緒に缶コーヒーを一杯飲んでくることをしている。
 もしかすると、かなり無作法な振る舞いなのかもしれない。
 ただ、そうせずにはいられないのだ。
 「最近また新しい会員が増えたよ」
 「M会員がまたこんな面白いことをしでかしたよ」
 笑い上戸の彼の墓前にそんな報告を缶コーヒー片手にしている、生きている人間には作法を咎められるやもしれないが、あの世でまた缶コーヒー片手の彼には、間違いなく大うけのはずだ。

 あれから8年、その涙の釣台には現在会員のKazuさんが乗っており、彼への供養が同氏の釣りの際に毎回事為され続けている。

 もういい加減か・・・、頃合いなのかもしれない。

 自身の詣ではこの釣りを続ける限り終わらないが、会としては終わらせなければならないのだろう。
 半分しか知らないのだから・・・。

 筆を置こうと思っても、なかなか出来得ない、何か書き留めておかなければならない大事なそれを落としているような気がしてならない・・・。
 もういいか、潮時なのだ。
 グループLINEに、お参りの知らせを送るのはやめることにする。

 前を向き、明日を見ている新しい会員には必要はないのだ。
 たとい、新べらクラブを立ち上げた8名の会員のなかの一人だったとしても、今は昔なのだ。

 ただ、管理人には無理だ、いまだに駄文を為しながら涙が溢れる。
 彼と釣りがしたい・・・。

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