宇宙から零れたざらつきを
欠けた湯飲みで受け止めて
飲み干す夕べ
塾名の書かれたシャープペンシルで
書きだしたのは
「ゆうぐれ
わたしのまえは
燃えているか
わたしのうしろは
泣いているか」
問いかけてみる 差し込んだ光に
だけど現実は手取り13万、それでも幸せなほうだと君は言う。
息を吸って、ふくらんだ
雨が降ったから、ここは水中
塩辛い夜
体から聞こえるのはさざなみ
私は魚
「よぞら
わたしの心臓は
泳げているか
わたしの脳に
鰓はあるか」
耳を澄ませてみる 泡立つ静けさに
だけど現実は手取り13万、それでも幸せなほうだときみは言う。
カ、カ、カと枕元で時計がわらう いずれ怒鳴りだす
夢にシャカイとカイシャを足して、朝
置きっぱなしの炭酸飲料を嚥下して
指先で馴染ませる情動
すべて美しいものであるようにねがった
すべて美しいものであるようになづけた
「たいよう
この世界に
影はないか
あなたはすべてを
照らしているか」
指で触れることができたなら 美しさだけ掬い取ることができたなら
だけど現実は手取り13万、それでも幸せなほうだときみは言う。
お久しぶりです。
何度か詩人狼に参加させていただいてた立川です。
詩人狼きっかけにいくつか趣味で詩を書いているので、せっかくだから見てもらおうと思いました。
気になるところは
「だけど現実は手取り13万、それでも幸せなほうだときみは言う。」
→この一文のリズムがちょうどいいかどうか
「現実」を抜かしてみたり、貰える、にしてみたり、「13万」を「13万円」いっそ「財布の中は空っぽ」にしてみたり、
「それでも」を「でも」「まだ」に変えてみたり
「きみ」を「君」「彼女」「あなた」などに変えてみたり
色々した結果この文にしてみましたが、どうでしょうか。
あと、この文をそもそも最後一回だけにした方がよかったか?も気になってます。
他にもアドバイスいただける部分があればよろしくお願いします。
投稿ありがとうございます!
すこしおひさしぶりです◎
結論からいうと、好み込み(共感白的な。笑)ですが、
とても姿の良い詩だとおもいます。
ざっくり3パート、ABCの流れで、
過剰なギミックを入れて欲張らない感じがいいな。
おっしゃっていた「13万」関連のくだりは、
この風景を軸にするならこのままでいいかと。
シャカイやカイシャ、塾というワードがあるので
ここは財布が空っぽよりずっと(当たり前ですが)客観としての持ち重りがします。
その突き放された地点から話者や「君」、両者の距離などを想像する。
リズムの観点でも「だけど現実は~」と「それでも~」がバランスを取れているのでそこは問題ないかな。
ただ、日本でも単純に13万の生きやすさ生きづらさって
そこそこ地域とか世代によってくるので、
それが欄外で匂わされているとより肉感的かなとおもいます。
あるいはだいたいの一般論的なプールに放り投げちゃうか。
このあたりのひらき方は難しいんですよね…。
繰り返される「」内は単体でもとてもよくて、
一種近代詩的な世界とのつきあいかた
(内向的と内省的の違いみたいな話になって長くなるので措きます)としても、
ことばのうつくしさとして際立っている。
「よぞら~」のくだりでアイコニックなものから
一気に収束してゆくのも文脈としていいですね。
ただ、個人的には「わたしの心臓は/泳げているか/わたしの脳に/鰓はあるか」を
もうすこし言い方を変えてもいいかもとおもいました。
具体的には「心臓」←→「泳」ぐ、「脳」←→「鰓」の組み合わせ含めたセレクト。
それから、「炭酸飲料」があえて言うには
ちょっと狙いすぎ(敷衍しすぎ)におもうので、
そこは銘柄を出すなりしていいとおもいます。
「嚥下」も温度感が違うかも。
「情動」へつながる道として綺麗なんだけど、
やはり日常で使う言葉でない分、そこに意図を勝手読みしてしまうので、
「置きっぱなしのサイダー、飲み下して」
(もっとも飲み乾すのか一~数口飲むだけの嚥下なのかでここも重点が変わってきますね)
みたいなのでもいいのかもとおもいました。
もっともこれは多分に好みの問題か…。
構造はいいかんじのオルタナティヴロック的な成立をしているとおもうのですが、
基本的には足し算でポイントを稼ぐタイプの詩なので、
たとえば小手先の技ではありますが、最終連だけ「きみ”が”言う」にすると
突然世界が裏からまくられるかんじになったり、
小さく撞いて大きく鳴らせる手の加えどころはあるようにもおもいます。
追加での疑問質問ご意見等あればどんどんください!
好きな詩ですのでいくらでもつきあいたいです!!
詩人とこの詩をあらためて合評して「格調高い」という感想になってます。
思っていたより数倍丁寧な詩評で泣いてます。
割と迷ったところが指摘されているので、「あ~~やっぱりそこが粗になりますよね…」
と思いつつ、自分だけだと何が問題か?というところに気づいてなかったのでありがたいです。
お言葉に甘えて
いくつか質問します!
>心臓⇔泳ぐ、脳⇔鰓
ここのセレクトについてはもう少しお話聞きたいです。
正直「夜」については元々単独で書き上げようと思っていた下地があったので、
さらっと書いちゃったところはあります。
イメージの座り心地の悪さ、みたいにとらえていいでしょうか?
指摘を受けて考えたんですが、
「脳が泳ぐ、心臓に鰓がある」の方が直感的にイメージしやすいなって思ったので。
>炭酸飲料が狙いすぎ
言われて気づきましたが、これ本当にそうですね!(笑)
朝の描写から情動に向かうまでのひと呼吸にすごく悩み、
嚥下、も国語辞書引っ張り出して悩んで出して言葉なので、
その試行錯誤が見えてしまってるのかも。
最もしっくりする言葉として「飲み込む」があり、
「飲み干す夕べ」とのバランスをとって「嚥下」にしたんですが、
同じ動作の似た漢字の組み合わせを別々の連に、特に強い意味が生じる場所ではないところで使ってしまうのってやっぱりあまりよくないんですかね…?
最後に、13万という額が万人に共感してもらえる低賃金ではない、
というところのフォローは「それでもしあわせなほうだと君はいう」だと不十分でしょうか?
好意に甘え切って三つも質問してしまいましたが、
ゆっくりとお待ちしておりますので、時間があるときにでもお答えいただければと思います!
今>> 3のレスを読みました!
格調高い!もったいない言葉です…。
小躍りしております(^▽^)
たいへんお待たせしてごめんなさい!
・心臓←→泳ぐ/脳←→鰓
ここは好みもあるとはおもうのですが、
「わたしの心臓は/泳げているか」がとても綺麗だな、と感じたので、
その動的なイメージのあとに鰓という静的なことばがくるのが
すこしスピードとしての違和感があったかもしれません。
「鰓」というワードチョイスについて
どれくらい必然性があるのかって話にもなってくるのかなあ。
・炭酸飲料
「同じ動作の似た漢字~」については
ぼく個人としてはなるべく避けたいところです。
そこは作風もあるので一概に言えませんが、
代替案があるならそちらのほうがいいかなと。
「嚥下」自体がどう、というわけではなく、
「炭酸飲料」との合わせ技で、何か固いかんじに、
作者のなかに入り切れていない連なりにおもいました。
・13万
「それでも~」で不十分ということはないのですが、
具体的にどういった仕事をしているという描写がなく
(「塾名」でいちおう想像できますが弱い)3回使ってしまっているので、
キメというよりはリフレインとしての役割が強くなっているので、ここは難しいです。
なにかこう、クリシェ的な(音楽用語としての)
ギミックが入れられると(それが「が」だったりですね)
景色が変わるようにおもいます。
遅くなりました。
レスありがとうございます。実は春に仲間内のみの出し物で朗読しようとおもってます!
言われた点を意識してブラッシュアップします。