きくくち

《透明な注射器》

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痛くも痒くもない 自分で自分に麻酔をかける
傷ついてない 傷なんてつかない よく効く麻酔をかける

旧態依然なオッサン
無神経なオバサン
残酷な女の子
不躾な男の子
あなたたちの呪いの言葉は私には効かない
私が私に打つ注射が一番効くの

もっと苦しんでいる人がいるから
こんなの前にあった慣れてる 
ありがちありがちよくあることよ
こんなんで死ぬわけないし
いつまでも続くわけじゃない でも、
早く終わんないかな~~~~!!

ぶすぶすぶすぶす注射打つ ぶすぶすぶすぶす注射打つ
ぶすぶすぶすぶす焦げついて やけどの傷に痛み止め

ふらふらになった帰り道、警察官が待ち伏せしてる
なんかクスリやってる?やってませんよ
バッグの中身、ポケットの中身、おさいふの中身、出す
警察官は私の左手をとる 肘の内側を、手首の内側を見る
私の麻酔は透明な注射 おまえになにがわかる

あなたになにか見えますか?
あなたになにが見えますか?

白川ユウコ
作成: 2019/11/26 (火) 20:15:50
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1

こんにちは。
口語自由詩を発表する場が欲しかったところにこちらのサイトが。うれしいです。
書き言葉の場合や、朗読の場合など、びしびしいろいろ教えてくださいまし。

2

投稿ありがとうございます。
 
意識的なのか無意識なのか、
七五のリズム感が親戚のように顔を出すのが
興味ぶかく読みました。
 
おもしろいな、とおもったのは
「無神経」「残酷」「不躾」はともかく、
「旧態依然」と接し痛みを負うという部分が
話者(≠作者)がある程度年齢を重ねた
(すくなくとも20代以上)目線と読めることで、
ちょっと牽強付会ですがオッサンオバハンと
女の子男の子の中間地点とも取れます。
それとこの詩全体のまとう、
明るい夜より暗い昼に近いサブカル感を
つなげて読むと孤独の持ち重りがまた変わってくる。
(「前にあった慣れてる」や「帰り道~」の採り方ですね)
 
技術的なところではリフレインのずらし、ぶらしがさすがという印象です。
指運びが自然なのにフックがある。
 
終盤登場する「警察官」は一種アイコニックな存在で
「おまえ」から「あなた」へ敷衍してゆく流れも、
収束の過不足のない言葉際もうつくしいなとおもいます。
 
ただ、第五連からが具体的な描写に
隠喩をかけていくかたちになるので
そこまでのモノローグ的なパートとの
温度差というよりは速度差がすこし気になりました。
もう一、二連挟んでゆるやかにしてあげてもいいかもしれないです。

3

choriさま

丁寧に読んでくださり、ありがとうございます。ご好評いただけてうれしい!
現代詩、口語自由詩の読み、批評の方法、たいへん勉強になります。
(旧態依然、だけ異質だったとか、指摘されるまで無意識だったり!)

言葉の扱いについて、トリミングと圧縮の癖が、特に韻文体では出てしまうみたい。もっとのびのび書いてよいのかしら。

こちらへの投稿、これよりも長いボリュームOKなのですね。またお出しいたします!

4

朗読、めちゃくちゃ合いそうなのでいつか聴いてみたいです。
定型詩、短詩を主戦場としているひとがどういうふうにひらくのかはすごく個人差があっておもしろいです。
またのお越しをお待ちしてます!