それは、多次元に浮かぶ世界の無数ある内の一つの取るに足らない世界。
その世界はひたすら弱かった。
土地も生き物も、なにもかもが脆弱で貧弱で虚弱であった。
ゆえに、その世界は強い異世界の住人達にとっては“良い鴨”となった。
異世界人達は、次々と時空を渡りこの世界へと移ってきた。
そして、彼らは世界へと多大なる影響を及ぼしていった。
魔族の王【魔王】討伐、未知なる技術による文明革命、異空間から転移させた軍隊による領土侵略などなど、異世界人が世界に及ぼした影響は計り知れなかった。
段々と世界は混沌を極めていった。
そして、世界の色はじっくりと彼等の色に染め上げらていった。
が、ある日を境に、彼等の中に変死を遂げる者が急に続出したのである。
異世界人の来訪が後を経つことはないが、後続の彼等も現れてはすぐに死んでいった。
異世界人は知らない。
人知れず世界のバランスを整える役割を持ち自分達を狩ることを専門にした暗殺者達が、その世界に存在することを。
設定は、なかなか
~アインス帝国・帝都ケーニッヒ~
帝都ケーニッヒは首都なだけあって、周辺の街に比べて賑やかである。しかし、今日はいつもに増して喧しかった。
市民「英雄アルトが帰って来たぞー!」
市民「英雄様の凱旋だー!」
市民「アルト様が帰って来たのか!?」
市民「おい!あっちでパレードやってるぞ!」
市民「キャー!アルト様ー!」
街の喧騒はパニックにまで発展していた。それは無理からぬことではない。
何故なら、アインス帝国の英雄アルトは人類をこれまで苦しめてきた魔族のトップである《六大魔王》の内の一体《角の王・クルージーン》の討伐という偉業を成し遂げて帰って来たのである。
話の中心である英雄アルトは、魔王征伐の旅の疲れを感じさせぬ爽やかな笑顔で皇帝が用意した豪華な馬車の窓から自分を仰ぎ手を振ってくる民達に手を振り返していた。
アルト(いやー、実に楽だった)
アルト(この世界の魔王は弱すぎる。あの程度の強さで、なぜ魔王と名乗れるのだろうか甚だ不思議だ)
アルト(おっと、僕が強すぎるだけなのか)
アルト(しかし、あんな雑魚を倒した程度で英雄って呼ばれるとはな。くくく、この世界では僕は敵無しだ)
アルト(富も名誉も美女も思うがまま。ほんとにこの世界に来てよかった……)
アルト「ふっ」
アルトの口許が無意識に緩む。
市民「キャー! アルト様が笑ったわよー!」
???「実に困ったことだ。英雄様が《角の王》を殺してくれたおかげで、アインス帝国とツヴァイ王国との国境に構えていた魔族の居城がなくなってしまった」
???「これまで《角の王》によって保たれていた隣国同士の均衡が壊れてしまったという訳だな。帝国が侵略活動を再開するのも時間の問題だな」
???「しかし、皇帝アルデバランめ。英雄召喚は禁忌であると釘を差したというのに、約定を破りおって」
???「一国の王ごときが……。我らの手から逃れられると慢心したのが運の尽きであると思い知らせる必要があるらしいな。可哀想だが、魔王を殺した英雄様にも責任を取ってもらうことにしよう」
???「そうだな。では、私は《角の魔王》の後釜でも選定しにいくとしよう」シュンッ
???「………………。異世界からの干渉さえなければ、この世界はこの世界のままでいられたというのにな」
支援た
支援
~ケーニッヒ帝城・皇帝の部屋~
アルデバラン「アルトよ。帝都西の森にドラゴンが住み着いたようなのだ」
アルト「なんと!?あの天災に等しいドラゴンが」
アルデバラン「そうだ。《角の王》討伐直後で悪いのだが、即座にソレを追い払ってもらいたい」
アルト「全くだ。人使いの荒い」
アルデバラン「戦を控えているのだ。懸念材料は残しておきたくない。その代わり、お前には富も女も好きなだけくれてやる」
アルト「それなら文句は言えないな。言っておくが、僕はドラゴンだから動いてやっただけだからな」
アルデバラン「勿論だ。雑兵ではドラゴンを倒すのに被る被害が大きいからな。……それで、出来ればでいいのだが、ドラゴンは殺さず北の方に逃げるように追い払ってもらいたい。それもなるべく傷付けて気が立つようにな」
アルト「ツヴァイ王国に傷付いたドラゴンを送りつけ、凶暴なドラゴンの対処で疲弊させるつもりか。なんとも狡猾なお方だ。まぁ、いい。この国が豊かになることは、僕の生活も潤沢になるということ。むしろ僕には良い方に働く」
アルデバラン「実にありがたい」
アルデバラン(まぁ、用が済んだ時点で貴様には死んでもらうのだがな。お前は邪魔だ)
アルト(どうせ、利用し終わったら殺すつもりなのだろう。馬鹿め。僕としては逆。お前は英雄たる僕に傀儡にされる未来しかないんだよ)
やばい、全然コテハン出てない
そろそろ出すけど
最後の分はもしかしたらMHのギルドナイトが元ネタかな?
凄く面白そう、支援
そうそう
ギルドナイトもモデルっていうか意識してる
まあ、普段は何もしないけど、ルール破ったり世の中のバランス崩したりするやつには容赦しない執行人的な感じだな
>> 2のアルトの口調をちょっと変更した
まぁ、使い捨ての噛ませ犬キャラだから特に意味ないけどな
あげ
~帝都西の森~
美女A「アルト様ぁ。ほんとにドラゴンを倒しにいくんですかぁ?」
アルト「ホントだよ」
美少女A「でもドラゴンってとってもお強いんでしょ?私、すっごく不安~!」
アルト「大丈夫さ。僕がドラゴンを倒して君達を守るからね」
美女B「きゃー。アルト様すてきー♡」ガシッムニュッ
アルト「当然のことだよ。何せ僕はあの魔王を倒した男だからね」
美少女B「アルト様の手にかかればドラゴンも形なしね!」
美女C「流石はアルト様だわ!」
美少女C「アルト様に見初められて私達幸せだわ」
アルト「フフフ。ドラゴンを倒して帰ってきたら久しぶりに7人で楽しいことをしようじゃないか」
美女A「楽しみだわ~♡」
あ
???「――オイオイ、こんな危険な森でまで女連れかよ。英雄ってのはほんとに色を好むんだな」
あ
アルト達の目の前には、いつの間にか一人の男が立っていた。
アルト(おかしいな。魔力感知に何も引っ掛からなかったぞ)
今でこそ感知しているが、アルトが気付くまで目の前の男からは一切の気配を感じなかった。
しかし、ボロ布の外套と服とボロボロの革鎧を身にまとっただけの見るからにみすぼらしい服装をしている上に、猫背に曲がった姿勢とやる気なさげな目に生えっぱなしの無精髭が男を頼りなさげにしていた。
革鎧を付けてるということは傭兵かなにかなのだろうが、その覇気を感じさせぬ雰囲気が彼を一般人以下の存在たらしめていた。
アルトは、警戒に値するどころか興味を持つ必要すらないと断じる。
アルト「いきなり話しかけられたからびっくりしたね。じゃ、行こうか、皆?」
美女・美少女「「「はーい!」」」
美女A「それにしても、こんな汚ならしい人にアルト様が話しかけるなんて、なんて罪深きお人」
美少女A「平民風情が話しかけるな!」
美女B「このお方をどういうお方か知っておいて、なんて身の程知らずなの!?」
美少女B「気持ち悪い。死ね」
美女C「二度と目の前に現れるな、下郎」
美少女C「わかったら早く道をどけなさい」
???「酷い言われようだな。……それにしても、どいつもこいつも帝国の貴族の令嬢か。なるほど、なかなかの粒揃いだな。ヒッヒッヒ」
アルト「おい、クズめ。これ以上、その汚ない目で僕の女達を見るんじゃない」
美女・美少女「「「アルト様……ステキ♡」」」
???「へいへい。俺みたいなやつには器量の良い女なんて一生縁がないなんてわかりきってるっつーの」
アルト「なんだ。弁えてるじゃないか」
???「まぁそんなことはどうでもいい。今日も早く仕事を終わらせないとな」
そう言って、男は剣を抜いた。
あげ
美女A「死ね」
――ドゴオオォォン
美女Aが手を掲げた瞬間、男の周囲の土が盛り上がり、男を押し潰した。
今のは美女Aが発動した土属性の魔法である。
美女A「平民の分際でありながら、アルト様の御前で許可なしに剣を抜くとは。その不敬、万死に値する罪である。それにもかかわらず、その汚らわしい相貌からアルト様の視界を守るためとはいえ、瞬死で留めてやったのだ。ありがたく思え」
彼女は冷たく言い放った。他の美女達も同じく冷たい目で男を潰した土塊を見ていた。
アルト(ククッ、物騒な女の子達だ……)
アルト様のに伴う彼女達は皆絶世の美こそ宿すが、何も容姿だけで選別された訳ではない。
皇帝アルデバランは、アルトが魔王討伐に行く際の餞別として、アルトの求めるものを出来る限り叶えることにした。そのときにアルトが要求したものの一つが、魔王討伐の旅に際しての伴侶である。
当然、アルトはその旅の伴侶が美しい女であることを条件とした。しかし、ただ美しいだけでは、旅の御供、ましてや魔王討伐の旅になど付いていけるはずがない。強さもまた必要であった。
幸運にも、帝国貴族のほとんどの家は建国期のときに、帝国の元となった戦士団の隊長格だった者が立ち上げた武家ばかりである。伝統的に戦闘訓練は今代まで義務とされていた。そして、それは女に生まれた者も例外ではなかった。
故に、美女でありながら強者でもある貴族令嬢が、帝国には腐るほどいた。その中でも特にトップレベルの美しさ、そして、戦闘力を持つ美女Aを含めた彼女達は、十分に一騎当千と呼んでも差し支えないほどに強かった。
有象無象が何百人束になって襲いかかろうが、英雄の手を煩わせる前に彼女達が終わらせてしまうのである。
アルト(ま、元の世界には君達より強い戦士なんて腐るほどいたけどね)
アルト「すまないね。僕の代わりにこんなことさせちゃって」
美女A「いえ、そのようなこと。滅相も――」
アルト「ん?」
美女B「?どうしたの?いきなり止まって」
美女A「……………………」
――ズルリ
それは唐突なことであった。急に、美女Aの頭が地面へと落下したのだ。
それから一拍を置いて、美女Aの首元から鮮血が噴出し、辺りを濡らす。
???「いきなりひでぇよぉ……。めんこいツラして人をいきなり殺そうとしやがって。流石の俺も怒っちまうぜぇ~」
どのようにしてなのかはわからないが、美女Aからの攻撃から逃れた男は、土塊の上でしゃがみながら飄々と空を仰いでいた。
先程と変わらない覇気を感じさせぬ様相が、今では逆に異様であった。いや、男には一つ変化したことがあった。それは、剣から垂れる真っ赤な血液である。彼が剣を抜いたときには、そのようなもの付着していなかった。
美少女C「……一応、警戒した方がいいわね」
美女B「そのようね」
一流の戦士である彼女達は、仲間が死んだにも関わらず、状況を冷静に判断していた。
???「そんな暢気でいいのかぁ~?」
美少女Cの真横から、そんな間延びした口調で問う男の声が聞こえた。
美少女Cは動揺することなく、神速の体捌きで剣を抜き放ち、男の声が聞こえた方へとそれを叩きつけた。
――ガキィィン
金属と金属がぶつかりあう音が辺りに響き渡る。
???「嬢ちゃん、良い太刀筋してるなぁ。いやぁ、将来が楽しみだぜぇ」
美少女C「黙って死ね」
???「ま、そんなものねぇけどな」
男がそう言うと、美少女Cの剣は上へと弾かれる。男が、つばぜり合った状態から美少女Cの剣に自分の剣を絡めるようにひっかけて下から押し上げたのである。
美少女C(なっ!このような男に私がこんなにも簡単に……)
――スパーンッ
美少女Cの首が宙に舞う。
次の瞬間、男と美少女Cがいる場所が爆ぜる。周囲からの魔法による集中砲火である。
しかし、美少女Cを斬った直後だというのに、男はそれを難なく回避し、包囲陣から抜けるように着地する。
美女・美少女一同「「…………っ」」
アルト「中々やるねぇ、君。見た目はゴミに等しいけど、なぜか強いね」
???「ハハッ。そりゃどーも。英雄様に誉められちまったよ、俺」
アルト「皆、下がっててくれ。僕が彼の相手をしてあげよう」
ファンタジー系はかなり好き
支援
支援やで
???「ようやく英雄様の御出番って訳かね。それにしても美女二人殺されないと出てこれないって、アンタも薄情だなぁ。……防ごうと思ったら防げたってのに」
アルト「いや、初太刀は見抜けなかったよ。人の意識の隙を縫って動くのが余程得意と見た」
???「いやいやいや、そんな高尚なもんでもねぇよ、俺のは」
アルト「ほぅ、だったら何だい?」
???「知りたいなら身体で知れよ」
そう言うやいなや、男はアルトとの距離を一瞬でほぼゼロ距離にまで詰める。
???「ま、理解する前に逝ったら無理だけどよ」
一閃。男の剣がアルトを捉えた。かに見えたが、その寸前でアルトが右手で男の剣の刃先を掴んだことで、その斬撃は途中で止められる。
???「っ!!!」
アルト「話にならないな。ドラゴンの前座くらいには楽しませてくれると思ったのに」
直後、男は凄まじい力で後方に弾かれる。軌道上にあった木に背中を強かに打ち付け、幹にもたれながらズルズルと崩れ落ちる。
???「くっ……」
アルト「今の技は僕の故郷で基本とされていた合気体術の一種でね。名前は忘れたが、確か向かってくる力をそのまま跳ね返す技だったな。原理はよく知らんがね」
アルト「……ああ、君の剣技を見切れたのは、単に僕の格闘センスと動体視力が優れていたからなだけで、特に深い理由はないよ」
???「……いやぁ、強いねぇ」
アルト「おいおい、そんなくらいで強いなんて言ってくれるなよ。僕の期待を裏切らないでくれよ、頼むから」
???「ごめんな。俺、そんなに強くねぇんだ。他 の 奴 ら みてぇによ」
アルト「他の……?組織的な襲撃か」
???「だから、いっつもギリギリなんだ。ほんと、ウンザリだぜ。いつも死にかけるのに何故か負けられない」
???「勝利の女神に愛された弱者ってのは、不幸だぜ」
アルト「その口振りだと、まるで僕に勝つことが当然みたいじゃないだな」
???「いや、侮ってる訳じゃねぇんだ。ただ、俺が何故か強いだけだよ」
アルト「わかってないな。それが侮ってるっていってんだよ。もういい。君にはほとほと失望したよ。その程度の実力で英雄に挑むとは、阿呆が過ぎたみたいだね。見てて可哀想だから、トドメを刺してあげよう」
???「……あのさ、名前、名乗ってやるよ。そっちを知っておきながら、こっちは知らせないってのも行儀が悪ぃからな」
アルト「興味ない」
???「俺の名はアポかどだ」
アポかど「冥土の土産に覚えとけや」
――スガアアアアアアァァァァァン
男のいる場所が地響きをおこしながら弾け飛ぶ。それによって、森に大きな切れ目を入れるかのように木々がゴッソリと吹き飛ばされた。
砂煙がやむと、そこには巨大な三日月状の更地となっていた。
アルト「身の程知らずが」
アルトはいつの間にか剣を抜き、斬心の姿勢を取っていた。今のは彼が剣を薙いだことで発生した剣圧による衝撃である。
彼の剣技はもはや人智にとどまらず、一撃による地形破壊など草を刈ることよりも容易く行えた。
今の攻撃に巻き込まれてるのなら、矮小な人間に過ぎないアポかどは死んだはずである。
アルトは、後方に気配が生じるのを察した。
アポかど「だから身の程くらいわかってるっつーの!」
――カァーン
独楽のように瞬時に身を翻したアルトの剣がアポかどの剣をとらえる。森を吹き飛ばすほどの一撃がアポかどの剣をうち据えた。
だが、アポかどは派手に吹き飛ばされる事もなく空中で一回転すると、何事もなかったかのように着地した。
遅れて、アルトの斬撃によって生まれた突風が辺りに吹き荒れる。
アルト「どういうことだ?なぜ、その剣は折れない。なぜ、君は無事なんだ」
アポかど「なぜって、そりゃ、俺がお前の斬撃を華麗に受け流したからだよ」
アルト「それはわかる。なぜ、受け流せたのかが聞きたいんだ。その、よくて二流止まりの剣術で」
アポかど「長年の経験だな!おっさん、これでも傭兵歴20年のベテランだかんね」
アルト「そんなので説明が付くと思ってるのか!」
アポかど「そうカッカすんなよ。綺麗なお顔が台無しだろ?って、こりゃ女に言うセリフか」
アルト「舐めやがって……!ぶっ殺してやる!!!」
アポかど「おーこわい」