美女A「死ね」
――ドゴオオォォン
美女Aが手を掲げた瞬間、男の周囲の土が盛り上がり、男を押し潰した。
今のは美女Aが発動した土属性の魔法である。
美女A「平民の分際でありながら、アルト様の御前で許可なしに剣を抜くとは。その不敬、万死に値する罪である。それにもかかわらず、その汚らわしい相貌からアルト様の視界を守るためとはいえ、瞬死で留めてやったのだ。ありがたく思え」
彼女は冷たく言い放った。他の美女達も同じく冷たい目で男を潰した土塊を見ていた。
アルト(ククッ、物騒な女の子達だ……)
アルト様のに伴う彼女達は皆絶世の美こそ宿すが、何も容姿だけで選別された訳ではない。
皇帝アルデバランは、アルトが魔王討伐に行く際の餞別として、アルトの求めるものを出来る限り叶えることにした。そのときにアルトが要求したものの一つが、魔王討伐の旅に際しての伴侶である。
当然、アルトはその旅の伴侶が美しい女であることを条件とした。しかし、ただ美しいだけでは、旅の御供、ましてや魔王討伐の旅になど付いていけるはずがない。強さもまた必要であった。
幸運にも、帝国貴族のほとんどの家は建国期のときに、帝国の元となった戦士団の隊長格だった者が立ち上げた武家ばかりである。伝統的に戦闘訓練は今代まで義務とされていた。そして、それは女に生まれた者も例外ではなかった。
故に、美女でありながら強者でもある貴族令嬢が、帝国には腐るほどいた。その中でも特にトップレベルの美しさ、そして、戦闘力を持つ美女Aを含めた彼女達は、十分に一騎当千と呼んでも差し支えないほどに強かった。
有象無象が何百人束になって襲いかかろうが、英雄の手を煩わせる前に彼女達が終わらせてしまうのである。
アルト(ま、元の世界には君達より強い戦士なんて腐るほどいたけどね)
アルト「すまないね。僕の代わりにこんなことさせちゃって」
美女A「いえ、そのようなこと。滅相も――」
アルト「ん?」
美女B「?どうしたの?いきなり止まって」
美女A「……………………」
――ズルリ
それは唐突なことであった。急に、美女Aの頭が地面へと落下したのだ。
それから一拍を置いて、美女Aの首元から鮮血が噴出し、辺りを濡らす。