アルト「わかってないな。それが侮ってるっていってんだよ。もういい。君にはほとほと失望したよ。その程度の実力で英雄に挑むとは、阿呆が過ぎたみたいだね。見てて可哀想だから、トドメを刺してあげよう」
???「……あのさ、名前、名乗ってやるよ。そっちを知っておきながら、こっちは知らせないってのも行儀が悪ぃからな」
アルト「興味ない」
???「俺の名はアポかどだ」
アポかど「冥土の土産に覚えとけや」
――スガアアアアアアァァァァァン
男のいる場所が地響きをおこしながら弾け飛ぶ。それによって、森に大きな切れ目を入れるかのように木々がゴッソリと吹き飛ばされた。
砂煙がやむと、そこには巨大な三日月状の更地となっていた。
アルト「身の程知らずが」
アルトはいつの間にか剣を抜き、斬心の姿勢を取っていた。今のは彼が剣を薙いだことで発生した剣圧による衝撃である。
彼の剣技はもはや人智にとどまらず、一撃による地形破壊など草を刈ることよりも容易く行えた。
今の攻撃に巻き込まれてるのなら、矮小な人間に過ぎないアポかどは死んだはずである。
アルトは、後方に気配が生じるのを察した。
アポかど「だから身の程くらいわかってるっつーの!」
――カァーン
独楽のように瞬時に身を翻したアルトの剣がアポかどの剣をとらえる。森を吹き飛ばすほどの一撃がアポかどの剣をうち据えた。
だが、アポかどは派手に吹き飛ばされる事もなく空中で一回転すると、何事もなかったかのように着地した。
遅れて、アルトの斬撃によって生まれた突風が辺りに吹き荒れる。
アルト「どういうことだ?なぜ、その剣は折れない。なぜ、君は無事なんだ」
アポかど「なぜって、そりゃ、俺がお前の斬撃を華麗に受け流したからだよ」
アルト「それはわかる。なぜ、受け流せたのかが聞きたいんだ。その、よくて二流止まりの剣術で」
アポかど「長年の経験だな!おっさん、これでも傭兵歴20年のベテランだかんね」
アルト「そんなので説明が付くと思ってるのか!」
アポかど「そうカッカすんなよ。綺麗なお顔が台無しだろ?って、こりゃ女に言うセリフか」
アルト「舐めやがって……!ぶっ殺してやる!!!」
アポかど「おーこわい」