~アインス帝国・帝都ケーニッヒ~
帝都ケーニッヒは首都なだけあって、周辺の街に比べて賑やかである。しかし、今日はいつもに増して喧しかった。
市民「英雄アルトが帰って来たぞー!」
市民「英雄様の凱旋だー!」
市民「アルト様が帰って来たのか!?」
市民「おい!あっちでパレードやってるぞ!」
市民「キャー!アルト様ー!」
街の喧騒はパニックにまで発展していた。それは無理からぬことではない。
何故なら、アインス帝国の英雄アルトは人類をこれまで苦しめてきた魔族のトップである《六大魔王》の内の一体《角の王・クルージーン》の討伐という偉業を成し遂げて帰って来たのである。
話の中心である英雄アルトは、魔王征伐の旅の疲れを感じさせぬ爽やかな笑顔で皇帝が用意した豪華な馬車の窓から自分を仰ぎ手を振ってくる民達に手を振り返していた。
アルト(いやー、実に楽だった)
アルト(この世界の魔王は弱すぎる。あの程度の強さで、なぜ魔王と名乗れるのだろうか甚だ不思議だ)
アルト(おっと、僕が強すぎるだけなのか)
アルト(しかし、あんな雑魚を倒した程度で英雄って呼ばれるとはな。くくく、この世界では僕は敵無しだ)
アルト(富も名誉も美女も思うがまま。ほんとにこの世界に来てよかった……)
アルト「ふっ」
アルトの口許が無意識に緩む。
市民「キャー! アルト様が笑ったわよー!」
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