私はレオパレスのアパート・マンションローンを基に組成された証券化商品の格付けについては少なくない疑問を持っています。理由はポートフォリオの分散効果が薄く、事実上レオパレスの営業策に大きく影響される為、分散によるリスク軽減効果を大きくは期待できない為です。
多くの方が何を言っているのか理解できないと思いますから、簡単に説明を書いておきます。
過去に証券化商品が原債権)よりも高い格付けを取得できた(シングルBがAAAに化ける)のは、SPCの関与によるポートフォリオの分散効果と優先劣後の分配ルールが定められているからです。
1つの先への融資が焦げ付いても「全く関連性の無い」他の融資先への融資が同時に焦げ付く事は通常は起きないからです。多数の債権をまとめてSPCで管理すれば、ひとつのデフォルトは「他の多数の正常先からの返済」でカバーできるからです。
つまり全体で1000億円の債権があり、その内から10億円の焦げ付きが出ても残りの990億の正常債権からの返済でカバーできますから、1000億の債権からの返済金から優先的に50%を受取る事のできる証券(シニア)の安全性は、極めて高い事になります。
しかし、それは個別の債権のデフォルトの原因にまったく相関性がなく、独立して発生する場合に限られます。レオパレスのアパート・マンション向けの融資を原債権とした証券化商品の格付けへの疑問はそこにあります。
極論すれば、ひとつでもアパート・マンション向け融資が焦げ付く状況になれば、他の融資も関連して焦げ付きになる可能性が高いという事です。
レオパレスのアパート・マンション経営は、全く同じ「ビジネスモデル」であり、事実上、レオパレスの事業運営に返済の確実性は依存しています。住宅ローンと決定的に異なるのは、返済原資が同じビジネスモデルに依存しているという事です。住宅ローンの返済原資は個人の収入で、個々の債務者の収入に関連性や連動制は通常は全くありません。
しかし、レオパレスの証券化商品の原債権は、いくら融資先が分散されていたとしても、デフォルトの発生が分散されたり、低い状況で維持される事は期待できません。レピュテーション・リスクもあります。
それはレオパレスに依存し、大きく影響されるからです。つまりレオパレスの経営と強い相関関係がある事になります。
結局、証券化とSPCによる分散効果は限定的で、ブランドの棄損や営業政策でデフォルト率が大きく左右される事になります。
極端なたとえ話をすれば、レオパレスがコケタたら客が無くなり、延滞・デフォルトが多発する事になりかねない要素があるという事です。
※こんなパチもの証券が高い格付けで取引されているから、金融庁が銀行の証券化商品の取得を規制する方向で仕向けるのは当然でしょうね。