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(b)利他
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①転法輪
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経:また、善く諸の根性欲を知り、
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訳:また、人々の教えを受ける能力、性格、欲望をよく知っており、善をすすめ悪を止める力と人々を説得する力を持っていましたので、諸仏の教えに従って、その教えを人々に伝えることができました。
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②利他徳
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経:
智慧の日月・方便の時節・大乗の事業を
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訳:渇いてほこりの多いところに水のしずくをたらせば、そこだけが塵をおさえることが出来るように、まずは、小さな教えから入って欲望を抑え、涅槃への門を開き、解脱へと導く縁となりました。人々が、苦悩から離れられるように教えを説き、教えを実践することによる喜びを体験させました。それは、暑苦しいところに冷たい風を吹かせて、涼しくて清々しい状態に導くことに似ていました。
次には、非常に深い「十二因縁の法門」を説いて、真理を知らないために人生が苦悩であることを伝えました。そして、苦悩から離れる方法を説き明かしました。その教えを聴いた人々は、照りつける灼熱の太陽の光から救ってくれる夕立のような恵みを感じました。その後、この上もなく尊い大乗の教えを説き示し、誰もが持っている良心に潤いを与え、善の心を芽生えさせ、水田の一面に稲が実るように、心を功徳で満たし、ひろく人々に菩提心を起こさせました。
菩薩の智慧は、闇を消す太陽と月の光となり、方便として必要な時によく人々を照らします。そのことは、人々が大乗の道を進むことを援助し、人々がまっすぐに最上の悟りの境地へとたどりつき、常にある安らぎ、深い真理と限りない大きな慈悲の心で、苦悩する人々を救うようになります。
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利他
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菩薩による教化
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ここには、菩薩の教化の仕方が書かれています。まず、菩薩は人々の根性欲を知って、それに合わせて教えを説きます。根性欲とは、機根・性質・欲望の略で、機根とは、教えを理解し実践する能力のことです。対機説法の「機」とは、機根のことをいいます。しっかりと記憶している教えを何の妨げも作らず、巧みに話して聞かせます。諸仏に倣って、教えを説くのです。
まず、ほこりだらけの場所に水滴を垂らして、塵をおさえるように、小さな教えから入って、欲望を抑え、涅槃への門を開き、解脱へと導く縁となりました。そうして、苦悩を除き、教えを学ぶことの喜びを与えました。次に十二因縁の法門を説き、苦の原因が無明(無智)であり、無智による意志によって、苦悩することを伝え、照り付ける太陽の熱から救う夕立のような恵みを与えました。
このように初期仏教の教えを説いた後は、大乗の教えを説いて善の心を芽生えさせ、実践させ、功徳を感じさせました。そうして人々に菩提心を起さしめました。菩提心は、成仏を求める心のことで、菩薩にとっては必要不可欠です。
菩薩の智慧は、人々の煩悩を滅す縁となり、方便として、よく人々を導きます。そのことで、人々の仏道修行を援助し、人々が素早く無上の覚りを得られるようにし、慈悲の心で苦悩する民衆を救済できるように関わりました。
このように、人々を成仏へと導くためには、低い教えから徐々に高い教えを説くようにします。教団の中には、法華経以前の教えは必要ない、と言うところもありますが、学校教育がそうであるように、相手のことを思えば順々に高い教えを説くようにしたほうがいいでしょう。
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菩薩による教化
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