スルガのアパート・マンション融資のトリック
(シェアハウス以外の不動産向け融資の延滞は1%未満のマジックとトリック)
日本経済新聞で報道された記事でシェアハウス以外の不動産向け融資の延滞は1%未満というものがあったが、その報道が錯誤と誤解を招きかねない報道であるとの認識から、延滞と不良債権の違いについて分かりやすく解説したものをここに投稿しておきます。
※この投稿は掲示板に投稿したものに修正・加筆したものです。内容が重要なので、こちらにも掲載しておきます。
巷で噂されているスルガ銀行の投資用不動産向け融資の定型的な返済条件は概ね以下のようなものです。
建後15年~25年程度の中古の木造・RC物件について個人を対象に返済期間35年で金利4.0%程度で融資するというものです。
この単純な融資条件の中に延滞1%未満と主張する不動産融資の問題とトリックとマジックがあります。それは、返済期間が長いので、金利が高くとも毎月の返済額が少なくなる為、延滞にはなりにくいというものです。
仮に1億円を金利4.0%で借りて35年で元利均等返済すると毎月の返済額は
およそ443,000円になります。
しかし建築後15年とか25年の中古物件ですから、経済的な耐用年数内で返済を
終えることが求められる通常の融資なら、返済期間は建後15年程度が限度になります。
そうすると1億円を金利1.0%で15年で返済すると毎月の返済額は
およそ598,000円になります。
つまりスルガの融資は金利が高くとも、最初から毎月の返済額を相当に少なく抑えている為、延滞にはなりにくい融資という事になります。
賃貸物件の家賃収入が少なくとも、最初から返済を少なくしていますから、金利1%の融資よりも返済は楽です。しかし、毎月の返済額を少なくしていますから、当然、その分のしわ寄せが債務者と銀行を襲ってきます。
それは担保価値の減少による将来の損失激増の形でのものです。
毎月の元本返済が少ない訳ですから、物件(上物)の価値の減少や老巧化による賃料収入の減少スピードの方が融資の返済スピードを大きく上回る事になります。
場合によっては融資元本の数倍以上の速さで物件の担保価値が減少しますから、支払いが滞った時に担保から回収できる額は激減する事になります。
これは債務者にとっては借金が何時までたっても減らない。物件を売り飛ばしても借金が無くならないという事態を招く事になります。
つまり結果的に見れば「損失先送り」。
今だけ良ければ何でもありのイケイケ融資という事になります。
ちなみにバブル経済の時代に不動産融資に入れ込んでいた銀行もやはり延滞率は1%以下でした・・・
更に言えば、金利が4.0%と非常に高い訳ですから、他行との競争を理由に債務者との合意の上で金利を1.0%に引下げればさらに延滞にはなりにくい事になります。
延滞率だけを見ても実体はまるで分からない事になります。金利下げ分のしわ寄せは収益性と担保価値に来る事になります。
これは「金融検査マニュアル」の盲点を突いたトリックです。検査では他行との競争により金利を引下げた場合は「条件緩和債権」(マイルド不良債権)には該当しないとしている為です。
企業向けの事業資金なら耐用年数をオーバーする貸付は「テール・ヘビー」と呼ばれ、不良債権として扱われますが・・・個人の賃貸経営が住宅ローンとして取扱われる事が認められるのなら、不良債権にはカウントされない事になります。
1億円を超える融資を伴った賃貸住宅経営を「事業」でなく「住宅ローン」と見做すのはどう考えても変です。更に言えば複数のアパート・マンションを保有する為の融資を住宅ローンと判断する事はできません。
中小企業、個人事業者向けの小口融資で1億円以下の先は珍しくありませんが、事業性融資で「テール・ヘビー」はすべて不良債権として扱われます・・・金融検査マニュアルに盲点がある為にいいまでスルガの問題が表面化しなかったと言えます。
「隠れ不良債権」を含めた実態と「1%延滞」とは全く関係が無い事は、ここに集まっている皆さんは、良くご存じの事と思いますが・・・
分かりやすくする為に内容をかみ砕いた解説を残しておきます。
上記の投稿については余りにも突飛な内容なので、内容をいぶかる方もいるかもしれません。そこでスルガの融資の特徴について紹介している不動産投資関連のHPのアドレスを紹介しておきます。
融資期間の長さや金利の高さ、担保評価の高さなどについて記載されています。私の投稿が荒唐無稽なものでない事を理解して頂ければ幸いです。
出典「大家の味方」
http://ooya-mikata.com/beginner/suruga.html