空売り族の株仲間(優良銘柄はBuy&Hold)の掲示板

売り方常連さんの「まとめ」ページ / 4

13 コメント
views
9 フォロー
4
SAS999C6248(デーモンコア withクレア) 2018/10/17 (水) 15:20:01

《株式投資中級者のためのメモ3 格付けについて》…8/31の拙稿を再掲させていただきます。

ムーディーズ、スルガ銀行を「A3」から「Baa1」に格下げ=さらに格下げ方向で見直し(時事通信)

 今回は、30日夜に報道された上記のニュースをもとに、解説する。まず代表的な格付け機関としては、ムーディーズ(以下Mdysと略す)、スタンダード&プアーズ(一般にS&Pと表記)、フィッチ・レーティングなどが有名(他に、日本国内の機関もある)。格付け機関は主にA~Dのアルファベットを用いて、国債や会社の長期の安全性を評価する。
  
Mdys  S&P  安全性の評価                         具体例(格付け機関による)
Aaa  AAA  最上位の格付け。債務履行の確実性が最も高い。         ドイツ国債
Aa   AA  債務履行の確実性は極めて高い。                イギリス国債(+) 中国国債(-)
A     A   債務履行の確実性は高い。                   日本国債
Baa  BBB  現段階で債務履行の確実性は高いが、将来まで確実とはいえない。
Ba   BB  債務履行は当面問題ないが、将来的に確実とはいえない。
これより上位は「投資適格」とされこれより下は「投資不適格」とされる。
B    B  債務履行の確実性に問題があり、将来債務不履行(デフォルト)となる可能性がある。(以下省略)
備考:それぞれには、1,2,3の数字、あるいは+,ーの符号がつくことがある。A3はA1,A2より下の評価。

 今回のスルガ格付け引き下げは、オリコンチャートのような単なる1ランクダウンではない。短期格付けもPrime1(長期A以上)からPrime2(長期A3以下Baa2まで)に、明らかにワンランク下がる。「さらに格下げ方向で見直し」とは、今回の場合は、2Qまたはその前に発表される貸倒引当金積み増しの結果次第で行う、という意味である。Mdysの資料によると、ほとんどの格付見直しは45から180日の間に完了し、格下げ(格上げ)方向で見直しとなっている格付は、これまで半分以上が格下げ(格上げ)を行うことで見直しを終了している、という。
 一般に、国債格付けと銀行の信用力は相関度が高い。2014年12月1日、ムーディーズ(以下、Mdys)が日本国債の格下げを発表。「Aa3(AAー相当)」から「A1(A+相当)」へ1段階引き下げたため、債務不履行リスクが極めて低いとされるAA格を失った。
 さらに12月9日、米英格付け会社のフィッチも、「A+」としている国債の格付けを引き下げる方向で見直すと発表した。このときは、消費税率引き上げが実現するのかどうか、つまり日本の財政再建への疑問から引き下げられた(現在の日本国債の評価は中国以下である)。続いて各メガバンクも、格付けを引き下げられた(この場合は国に道連れにされたといえよう)。
 他には、1997年に山一證券が、Mdysによって「引き下げを検討」からわずか2週間で3段階下げられて投資不適格となり、翌日には自主廃業に追い込まれたこと(社長の号泣会見)は有名である。これは、むろんバブル崩壊後とはいえ、明白に山一に問題があったからで、今回のスルガの行く末を危惧する向きもあろう。

 次に、東芝の格付けが2017年2月15日、格付投資情報センター(R&I。日本)により3段階引き下げられた例を見る。 この時は「BB-」から「B-」へ、段階的には+・ーも含めて3つ下がった。R&I社は次の理由を挙げた。
1 内部統制に関する調査の遅れによる第3四半期決算の見送り
2 原子力建設会社の「のれん」による減損7000億円の通期決算に与える影響が大きいこと
3 2016年12月時点における自己資本がマイナスになったこと
(一方で、半導体メモリー事業の分社化に関しては、その実現性に不確実性はあるにせよ、実現すれば財務基盤にプラスに働くことにも言及している。 )
 では、この評価はどの程度の危険度なのか、R&Iの格付け(2017年1月31日時点)で他の有名企業と比べよう。
トヨタ自動車 AA++
日本たばこ産業(JT) AA
富士フイルム AA
三菱東京UFJ銀行 AA-
ソニー A-
三菱自動車工業  BBB-
シャープ B+
 このように、大手有名企業は大半がA以上の格付けを維持しており、BBB(MdysでのBaa)はあってもBの企業はほとんど存在しない。ここからも、東芝の状況は相当深刻だ(った)とわかる。

 もちろん、海外の機関であるムーディーズ(以下、Mdys)などが日本企業の財務や風土を理解しているのか、批判もある。そもそも財務基盤の安定度を表す目安だったはずが、いつのまにか企業全体の評価のようになってしまったせいかもしれない。かつて、格付けを引き下げられた積水ハウスでは「わが社の土地は最初から販売目的。銀行の不良債権とは違う」と強い不満を示した。また、トヨタは「終身雇用がリスクになる」と格付けを引き下げられたとき、逆に「日本的慣行は私たちの強みだ」と批判した。
 もっといえば、2008年の金融危機直前に格付けで不正を行ったとして、米司法省はMdysを調査した。とはいえ、デフォルトしたMdys 格付け対象の企業がいくつもあることも、また事実である。この25年間でみると、有名な日本企業だけでも、アイフル、ダイエー、日本航空、武富士、マイカル、雪印乳業などがある。要は、格付けは万能ではないが、無視することもおかしい。
 もう一つ、今回のMdysの発表はどこまでが「織り込み済み」なのか。シェアハウス等の不良債権危機、ジャパニーズマフィアとの黒い噂(←筆者注:麻生財務相・金融相ではない(笑) )、代表取締役3名の辞任……重要なのは、引下げの危険がある間は、外資がスルガ銀行の株を買わないだろう、という点だ。もはや「値頃感」(←筆者注:根拠不明)からくる個人の買いと、信用売りの返済がいくらか入るだけで、出来高は細る。急落はせずともズルズル下げやすく、まして今後もし3ランクも下がればどうなるか……
 その場合は、①バブル後の最安値(2002年12月につけた428円)、②上場来安値(300円割れ)、最悪の場合は③山一のように上場廃止、少なくともこの3つのシナリオは考えておくべきだろう。なお、今回のレーティング引き下げを「織り込み済み」と言える投資家は、誰もいないはずである。少なくとも、この掲示板では、昨日の午後3時までに触れた人は、だれもいなかったはずだ。何しろ、会社法351条の件も、明確な話になってきたのは昨日の段階だ。「上場廃止」の可能性を考えていた売り方はいるが、その人(たち)とて、この格付け問題も会社法351条の話も、昨日より前には話題にしていなかったのだから。 (完)

通報 ...