kagemiya@なりきり

泥モザイク市 / 96

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>> 83
>> 87
……男性の方は去ったが、女性の方が残った。未だにアズキは泥酔から覚めず、それを背負ったアカネもまたその場から早急に離れるのは難しかろう。
す、と、少女の手が懐へ伸びる。その先にあるものは、冷たく、鋭い、鋼の───。

>> 86
───しかし、それに少女が触れることはなかった。
のっぺらぼうの影。その異質さに、それまで全く崩れなかった無表情に罅が入る。それは、恐怖と形容すべきもの。顔面が引きつり、喉の奥で空気を飲むようなかすれた音がする。
何を感じ取ったのか。それは、少女自身にしかわからない。しかし、とにかく彼女にとって、その影は恐ろしかった。

>> 91
>> 95
だからこそ、踵を返した男性が、女性を引きずっていった時、少女は心の底から安堵の表情を浮かべた。
何故かはわからないが、これで、何かが起こることはないだろうと。そんな予感が、心に到来した。
そして、アカネがアズキを背負って帰るその姿を見て、思い出したように再び無表情になる。
「……お帰りですか? それでは、お気をつけて」

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