kagemiya@なりきり

泥モザイク市 / 87

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87

>> 71
……何処かで見た気はしたが、どうやら初対面だったようだ。
この記憶の滞りも酒のせいではなかったのだと、静かに胸を撫で下ろした。

「ぇ……わたし……そんなに、危なそうに見える……?」

酔っているという自覚がないのか、或いは自覚したくないだけなのか。
彼女の気遣いを知れば……自分はそんなにも、見ず知らずだろうと声をかけざるを得ないほどに酩酊して見えるのか、と考えてしまう。

>> 77
「そう……そうですか……そうだよね……こんな、いっぱい……のめるわけない……」

彼女の言葉をそのまま受け入れてしまうのは、やはり酒が回っている影響なのか。
いつものアズキであれば、彼女の真意を察した上でそれを汲み取り、同じ言葉を返すのだろうが……
今はその言葉を、言葉通りに受け取って、安心した様子で言葉を返した。

「…………わかってますよ……でも……きょうは、特別だから……」

「……だって……ハイボールいっぱいで、酔うなんて……いや……うそ、酔ってない……」

もはや支離滅裂だ。複数人に「酔っぱらい」と認識される中で、尚自分は大丈夫だと主張する。
だが彼女の言葉を聞く中で、その心境に変化が生じたか。しばし沈黙を続けると

「……ごめん、アカネ……迷惑かけちゃって……」

しおらしい言葉が漏れる。
普段のアズキからは考えにくい、素直で純粋な気持ちから漏れた謝罪だ。

>> 74>> 83
「……ぇ、と……なに……」

現れた二人に対しても、アズキは歯切れの悪い返事を向ける。
いつもならばバッサリと切り捨てる所なのだが……今の彼女からは微塵の敵意も感じられない。

「くすり……あぶないくすりは……だめ……」

薬、という言葉だけを聞いて反射的に言葉を返した。
一見すると要領を得ない返しだが……一周回って、その言葉は牽制にもなるかも知れない。

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