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2019/12/31 (火) 22:34:39
>> 83
『__________おやおや、少々強引な方だ』
何処からか、声が届いた。……いや、それは本当に声だったか?
何故我々は、それを声と思ったのか。そう疑問に思う程に、それは酷く雑音塗れで聞き取りづらいものだった。
『年明けまでもう少し、やり残しが無いよう欲望を奔らせる気持ちは理解できなくもない。
が、この舞台の主役は君たちでは無いのだ。端役は担った役以上の事はせず、さっさと退場するが吉』
それは、いつから……いつの間に其処に立っていたのか。
アズキに肩を貸すアカネと両石たちの間に、彼女の嫌らしい視線を遮るように、それは其処に在った。
居た、ではない。それの姿は声と一緒で、ノイズ雑じりの不気味な形をしていた。
しかし本当に奇妙なのは其処からだ。瞬きをしていない筈なのに、それはいつの間にか人の形を取っていた。
だが、今は誰も気づいていないが、それは見る者によって異なる姿で映っていた。
霧六岡からは、かつて挨拶に赴いた時と同じ、シャツまで黒い燕尾服にシルクハットを被った老紳士の姿に。
両石からは、少々早いが鮮やかな白黒の振袖を、胸元を晒すよう扇情的に着崩した20代前半の美少女の姿に。
意識が朦朧としているアズキと面識のないミオからは、長い髪と深い影で顔がはっきりと見えないのっぺらぼうの姿に。
そして__________この中で唯一、それと深い縁を持つアカネからは。
白いローブに腰まで届く白い髪、そして一転深淵のような黒い肌をした、不気味な青年の姿に。
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