仏教のお話

Rの会:譬諭品第三 / 21

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ダルマ太郎 2024/05/11 (土) 14:18:31 修正

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廻向(えこう)とは
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太郎論:廻向とは、パリナーマナー pariṇāmanā の訳です。意味は、「転回・変化・変換」です。仏教では、自分の善根・功徳を自他の成仏へと振り向けることをいいます。化城諭品第七にある「願わくはこの功徳をもって 普く一切に及ぼし 我らと衆生と 皆共に仏道を成ぜん」という廻向文は有名です。日本では、廻向供養といって、読経供養の功徳を死者に廻向しますが、本来の廻向は、生きている者になされます。

廻向の思想は、初期仏教にはなく、大乗仏教において広まりました。初期仏教では、業報輪廻の思想が主に説かれており、自分の業報は自分が受け取るといわれていました。自業自得です。廻向思想では、自分の善業を他者に振り向けますので、業報思想にはなかった考え方です。この考え方によって、他者を救済するという根拠になっていますから、大乗仏教では重要な思想です。

「業報によって輪廻する」というのが業報輪廻です。輪廻するのは、地獄・餓鬼・畜生・修羅・人・天という苦の世界です。修行によって成仏しなければ輪廻からは解脱できませんので、ほとんどの生物は、非常に長い間、苦の世界を漂うことになります。この思想は、実に残酷です。日本にも業報輪廻の思想が入ってきて、最近は、ドラマや映画でもテーマになっているため、若い人たちにも輪廻という言葉が一般的になりました。しかし、インドのように悲観的なイメージではなく、死に変わり生まれ変わっても苦の世界にいる、という考えはないようです。よって、輪廻からの解脱という考えもありません。成仏を願って修行しようという人は少ないようです。

よって、日本人には業報輪廻の恐怖が分かりませんが、インド人にとっては、すぐ近くにある恐怖です。この恐怖による苦しみを解決するのが仏教の一つのテーマでした。大乗仏教では、事物・現象は、仮だといいます。事実としてあるのではなく、概念として有るだけです。よって実体は有りません。輪廻もまた概念であり、幻のようなものですから、そのことに気づけば、一瞬で救われます。廻向思想は、そういう幻への執着から離れさせるための、有効な思想だったわけです。
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廻向とは
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