五仏性の内容は、こちらで紹介しました通り以下に示す五項目です。
「正因仏性」--- 衆生が本来そなえている本有の仏性
「了因仏性」--- 本有の仏性を照らしあらわす智慧のこと
「縁因仏性」--- 智慧を起こす縁となる行法のこと
「果性」 ------ 菩提の果
「果果性」------ 涅槃の果のこと
三つの「因」と二つの「果」で合わせると「因果」です。
仏の悟りを得るということは、仏の法に対する因(修行)を積んでその報いとして悟りとしての果を得るということです。仏法修行者が、仏の悟りを修得するまでの全ての修行のことを万行といいます。菩薩の「五十二位」の悟りや、菩薩が行ずる六つの修行過程「六即」の行位がこれにあたります。これらを因位の万行といいます。そしてその修行の因の報いとして受ける仏に備わる全ての功徳相を果位の万徳といいます。
日蓮大聖人は、『観心本尊抄』で次のような事を申されております。
「釈尊の因行果徳の二法は妙法蓮華経の五字に具足す 我等此の五字を受持すれば自然(じねん)に彼(か)の因果の功徳を譲り与え給(たも)う」
ここで仰せの「因行果徳の二法」とは、今説明しました「因位の万行」と「果位の万徳」のことを言います。
歴劫修行が根幹となっている釈迦仏法では、三祇百大劫という気が遠くなる程遥かに長い年月の間に転生し、修行を行わなければ成仏することは出来ません。
仏に成る因を積んでその結果として成仏という果報を得るといった因と果に長い時間差が生じる「因果異時」の立ち場で説かれた厭離断九の仏だからです。因と果に隔たりがあるため個別に説かれた空仮中の三諦も隔たった隔歴(きゃくりゃく)の三諦(別相三観①~③)となります。
それに対して因果倶時(いんがぐじ)の法門を説く円経の『法華経』の通相三観④では、因と果が同時に備わります。妙法を唱うる一念に、「釈尊の因行果徳の二法は妙法蓮華経の五字に具足す」とありますように三世十方の諸仏のあらゆる因位の修行も果位の万徳も妙法蓮華経の五字に同時にそなわっているのです。
※ ①~④はこちらでご確認下さい