イシュメールの『白鯨』でもっとも有名なフレーズである"Call me Ishmael"に、非常に響きが似た印象的なフレーズが『嵐が丘』にも存在する。
"I am Heathcliff."
この科白、ヒースじゃなくキャサリンのもの。「私はヒースクリフなのよ」。
キャサリンが(ヒースと違う)相応しい身分の男性から求婚を受け、家政婦のネリーにヒースクリフへの愛を語る場面での言葉であり、「私のヒースクリフへの愛は地の底の岩のように不変のもの、同じ魂を持つ私たちを裂くことなど何人にも許されない」(超要約)というキャサリンの激した告白の核となるフレーズ。
「ヒースクリフがきれいだからでなく、ヒースクリフこそは、ねえネリー、あたし以上にほんとうのあたしなのだから愛しているのだってこともね。魂ってものがなんでできてるものか知らないけど、あの子とあたしは同じ魂を持ってるんだわ」(訳:田中西二郎)
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ヒースクリフは上記の場面を盗み聞きしていたのだが、正にヒースへの愛を語るその直前の、「ヒースクリフとの結婚は落ちぶれるだけ」というキャサリンの言葉を聞いてヒースは屋敷を飛び出してしまった。
銛使いヒースの人格ストーリーにある『自分の心を痛めつけた、愛する人のある言葉』は十中八九これ。
『嵐が丘』9章の出奔後のヒースがLCBに流れ着いたのだろう。ヒースはこの後で財を成して嵐が丘に戻ってくるが…
小鎚ストーリーにもあるよ
キャサリンのこの告白は荒地 のど真ん中、嵐が丘のてっぺんに放り出したの。そして私は嬉し泣きしながら目を醒ました――」(拙訳)
「天国は私の居る場所ではなさそうなのよ。地上に帰りたいと心が裂けそうなほど嘆き悲しんでいたら、天使たちはとても怒って私を
というプロムンプレイヤーからすると大変心躍るも不穏極まる響きを感じる始まり方をする。
嵐が丘の最初の転機となる場面、ヒース出奔の最終的な引き金となった場面が人格ストーリーでピックされるのだから、6章でもやはりフォーカスされるのではなかろうか?