ににんがし

【向坂くじら&故永しほる】 / 203

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203

ざらついた
指先をこぼして
あなたに
なにか
あげたい
という
それだけのことが
ここで 立ち止まっている

ひとつの鼓動が
続いていく波うちぎわで
あなたと
椅子を 分け合って
座れなかった
わたしの半身と
近いままではぐれる

畏れをともなった
おまじないのように
つま先からくるぶしまでを
面影で濡らすと
誘われているような
身体すら
些細なことであるような

波は
私たちの隔たりを
何度もさらって
また
頼りない線を
引き直すまで

どうしようもなく
遠く 遠く結われて
見えるすべては
横顔であると
沈黙だけが
私の
小舟になる

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