《尾羽毛》
深海魚みたいな顔だったら
今でも普通に食べてると思うんだよね
天然イクラの隣、小さな小さなパック
矢ガモを覚えている人はどれ位いるだろう
一九九三年 ヤクルトスワローズが優勝し
ダイエーホークスはパリーグ最下位
野球選手を差し置いてTVに寵愛され
お茶の間の主人公になった一羽の野鳥
手術で矢を摘出され野生に還された
ドブネズミだったら良くて安楽死だね
と言って
鮮魚売り場で不潔な話をするなと怒られる
「おばけ」と書かれた赤いラベル
一社会人の良識として
可愛げを持てとは言わないが
もう少し愛想良くしろ
耳に残るは総務課長のご指導
丁寧に包帯を巻かれる鳥かごの中の鴨
深海魚の顔をした私
小さな小さなパックに
アルバイトらしい若者が
三割引きシールを貼って行く
詩評リクエストはありませんが、
しいて言うなら矢ガモの説明が説明に過ぎるので
その辺りの是非や改善方法などあればお聞きしたく。
投稿ありがとう。
「尾羽毛」=鯨の尾の身、というのが
すっと落ちないとなんのことやらではあるけど、
少し歪んで動く意味付けの多重構造が綺麗。
こういう視点のずらし方を
ばっちり確信犯的態度でもって
遂行できるのはさすが、とおもいます。
個人的には「鮮魚売り場」と
哺乳類(鯨と「私」二重)のズレでもって
力押ししてもよさそうな気が。
矢ガモは世相含めたアイコンとしてかなり強いので
そこで回り道させると力点が持っていかれてしまって
もったいないようにも感じること。
鴨が介在することで「私」の立ち位置が
よくいえば複眼的になるかわり、
それなら鯨の話いらんくない?という節もあり。
(なにしろ燕、鷹、鴨と小面憎いまでに固めてくるのでそっちが目立ってしまう)
あとドブネズミのくだりはちょっと局面を複雑化させすぎかなともおもいました。
私、深海魚、鯨、鮮魚売り場、鳥類、哺乳類という
モチーフの総量とバランスが過剰といえば過剰で、
このあたりは好みがわかれる気がします。
とはいえ着地等、全体を貫く平熱の気持ち悪いテンションは鍛えが入ってるし、
なんていうんだろ、色気三割引きで書いてもいいんじゃないかな、などと
最終的におもったりしました。
批評ありがとうございます。
鳥類周りはお題消化で私にとっては必須だったのですが、作品として見た時に生物モチーフ群が多すぎる感はありますね。
矢ガモと鯨は私のなかでセットですがドブネズミは蛇足だったかもしれません。
(蛇足、でさらに生き物を増やす)
ちょっとリライトしてみます。
《尾羽毛》
深海魚みたいな顔だったら
今でも普通に食べてると思うんだよね
天然イクラの隣、小さな小さなパック
平台を挟んだ飲料売り場に
ホークス優勝記念の売れ残り
一九九三年、ダイエーはパリーグ最下位
ヤクルトスワローズが優勝したその年
お茶の間の主役は燕ではなく一羽の傷ついた鴨
突き刺さった矢は手術で摘出された
あの矢ガモ、可愛くなかったら安楽死だったね
「おばけ」と書かれた赤いラベル
一社会人の良識として
可愛げを持てとは言わないが
もう少し愛想良くしろ
耳に残るは総務課長のご指導
丁寧に包帯を巻かれる鳥かごの中の鴨
深海魚の顔をした私
小さな小さなパックに
アルバイトらしい若者が
三割引きシールを貼って行く
リライトしたら今度は話者の視点が複眼になってしまった。
真っ直ぐ書けない病です。
ああ、お題消化か…。なるほど。
ドブネズミは中世とかブルーハーツとか
これまたいろんなイメージと紐つくからなあ。
馬馬虎虎!
リライト、収束は段違いに綺麗になった気がする。
それでも「ヤクルト」「お茶(の間)」とか
もはや意識か無意識かわからない部分でかぶせてくる病だよね。
なんかこう、両手で武器を3つ以上持てないから常に1つ以上は空中にあるんだけど
それをこそどう見せるか、みたいなところが肝なのかな、とおもったりした。