僕らがまだ、平気なフリをして生きていられる頃は良かった
僕らの今、平気なフリをして死に合っていっている様な時代はどうだ
通過点に一人立ち止まって
その実そこに留まるのは一人ではないのに
これまであまりにも別れ合って来たから
信号拳銃も撃ち上がらない
返し合うはずの弾は装填されないまま、開かれた掌に温みを追想させるだけ
恨むこともやめた若者は、一人深夜の駐車場で衣服を干している
呼気が昇る、厳冬の白さに、紛れて
そして君は世界の誰よりも早く起きるだろう
髪にひかり
手に持つ参考書にもひかり
頬に笑み、やや自虐めいた 恥ずかしそうに
恥の無い、夢のひかり
飛び交う怒号
俺も俺も俺も
即発の心
俺が俺が俺が
上を数えればキリがなく
上から数えればキリがなく
下から数えれば少なくとも順位が
下を数えればお前がお前たちが
俺は、俺は、俺は、
それなのに
お前は、お前は、お前らは、
困窮、過労、抑鬱
辛いねって言いたい
辛いよって言いたい
辛いねって言い合いたい
辛いよって言い合いたい
当たり前って言わないでね?信号拳銃ってさ、夜の暗い暗い方が遠くまで届くんだって
そうなんだ、どれくらい?
一万二千メートルくらい
(ご無沙汰しております。詩を投稿させていただきます。よろしくお願い致します。)
投稿ありがとう。ご無沙汰です!
勢いがあって、要所のセンスのいい畳みかけも含め、個人的に好きな詩です。
気になる点をいくつか。
まず、冒頭二行のように
熱量の裏返しかすこし言い回しがごちゃついて
文意が奥に行っちゃっている部分。
たとえば「死に合っていっている様な時代」は
「死に合う様な時代」や「死に合ってゆく時代」
などとすると切れ味が増すのではないかしら。
これは第二連にも近いことが言えるけど、
こちらは言い回しというより書き方かなあ。
説明的な要素をシュッとさせるとよいかもです。
第三連はこの詩の白眉。
いちばんうつくしいところだなとおもう。
ただ「恨むこともやめた若者」が
話者が語りかける対象としてやや薄味な描かれ方で、
欲を言えば「衣服」を具体的にとか、「参考書」以外には何かなかったかななどと。
「辛いねって~」「辛いよって~」は初読時には違和感があって
(逆のほうが吐露→共感という流れとして綺麗)、
特に「言い合いたい」部分があるので引っかかるんだけど、好みかな…という気もします。
鬱屈や焦燥をセカイ系的に放出する詩はいっぱいあるけど
こういうプロレタリアな匂いのあるものは今の若手が書くものとして希少だし
これくらいの尺で全体の疾走感を雑にせず着地させるのも簡単なことじゃなく、
さすがやなとおもいました。
朗読でも聴いてみたい。
choriさん
感想や批評文を書いてくださりありがとうございます。投稿させてもらっていながら変な言い方かも知れませんが、そもそも詩をご覧いただけたことがとても嬉しいです。ありがとうございます!
ご指摘いただいた箇所、とても勉強になりました。おっしゃる通りです。
個人的には、時勢にこの詩を間に合わせたいという感覚が強く、それにより文意が奥にいっているところもあると思います。まだまだ詩をより良くすることが出来ると知らせていただけて嬉しいです。
三連についても、具体化したり他の材料を探せる余地があると学ばせてもらいました。
「辛いねって〜」「辛いよって〜」の箇所はこちらもおっしゃる通りで、のちに続く「〜し合いたい」という双方向性や対話的要素の大切さを強く伝えるためにはご指摘の順番の方がより良いと感じました。
批評だけではなく、お気持ちとしての好意や肯定的な言葉までかけてくださってありがとうございます。
choriさんのご活躍ぶりはいつも拝見しています。浮かむ瀬さんの「静脈」と「1219」が特に好きで何回も何回も聴かせていただいています。過去のポエトリースラムジャパンの時のパフォーマンスも素晴らしく、とても勉強させていただいています。余談が多くすみません。
いつもありがとうございます。
はじめまして。
きくくち、今日拝見して、こちらの「必ず線になる」、ああ、同じ時代を生きている方だ、という感覚を一番強く持ちました。
私もぽつぽつ書いてみたくおもいます。
ご挨拶にかえて。