「がいこくごと にほんごの おはなし会」に参加させてもらいました。
この会は、TIFA(取手市国際交流協会)と取手市及び取手市立図書館(藤代図書館)の協働事業として開催されています。参加して思ったことは、国際的な広がりのある文化交流を進める事業として位置付けることができるということです。「世界の絵本」を紹介するコーナーを充実させて、日ごろから「読み聞かせ」の事業も計画してきた藤代図書館は、将来の社会を担う子供たちの身近に、世界の窓を用意してきました。世界の絵本の日を糸口にして、紡いできた行事です。TIFAには生活者としての外国人材が各国から集まってきています。日本語を学び、日本語を使って日本の地域社会に参加し、ボランティアや文化活動に貢献している存在です。地域社会の中で直接各国文化を紹介できる存在です。外国人居住者のエンパワーメントの一助になります。そこで、実際に外国語で絵本を読み聞かせる場を実現しました。
子供たちにとって絵本は、一つの言語です。手話が一つの言語であるように、絵本は一つの言語と言って過言ではありません。しかも、異文化の壁を越えて理解し合える共通言語なのです。言語は世界の扉を開く力があります。子供たちが外国語と日本語の二言語の読み聞かせの体験を通して見い出す世界は大人の想像する領域を、はるかに超えるものがあります。
大人たちは時に勝手に、読み聞かせの成果を期待しているでしょう。往々にして、そこには大きな誤解があります。おそらく多くの大人たちは「情操豊かな、将来の大人になるための習慣や考え方が身につく本」と期待しているのではないでしょうか。
現代社会には、多くの子供向けの本があふれています。ノンフィクションと呼ばれる知識の本や期待される人間像を示した本がずらりと並んでいます。キャサリン・シンクレアは世の親たちに向けて次のように書いています。「子供たちのために今書かれている本は、・・・、心に訴えかけるものもなければ、空想を掻き立てるものもない無味乾燥は事実の寄せ集めがほとんど」で、それを選ぶ親や教師には喜ばれるだろう。子供たちは「野を駆ける野生の馬のように、多くの失敗を繰り返し、突拍子もないことを次々としでかしながら、なお、個性や感覚の独自性を失わない」でいる世界が絵本の世界なのです。人間主義の世界は、人間の叡智や想像力によって創造されたもの、最終的な形を得た作品、それが与える独自の満足感の故に知られ、鑑賞され、記憶されるものを持つ作品を生み出します。そうした絵本が読み聞かせで選ばれる絵本です。読書の価値への信頼は、「ここに存在するもの・・・ここで出会うもの、ここで理解されるもの、ここで反応できるもの、ここで楽しむことができるもの」に向かうものなのです。
絵本が、子供だけが楽しむもの、子供だけが読むもの、子供のために読むものではありません。人間を発見し、世界とつながる世界がそこには存在するのです。子供たちは世界の窓をのぞいているのです。
こどもたちの体験する「楽しい」がここにはあります。
皆さん、如何でしょうか。
宮本敏弥(地域日本語教育コーディネーター:文化庁H29研修修了)
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