『ジャズ』は、切り紙絵を原画とする20点の挿絵と自筆のテキストを収めたマティスの挿絵本の集大成です。挿絵のテーマはサーカスと劇場に関わるもの、珊瑚礁、またハート型や単純化されたトルソといった抽象的な題材に分けられます。出版者テリアードに依頼された当初、マティスはサーカスを主題にした版画集を構想しましたが、完成までのあいだにタイトルはジャズに変更されました。版の制作についても、まず木版が試されましたが、最終的に切り紙絵のシャープな輪郭線を再現できる紙製のステンシル版が用いられ、あらゆる面で理想の書物が追究されました。
この本のなかで、マティスは次のように記しています。
「ジャズ―生き生きとして激しい色調のこれらのイメージは、サーカス、民話、そして旅の記憶が結晶化したものから派生している。私はこのページを、私の色彩とリズムの即興によって同時におこる効果を和らげるために書いている。それぞれのページは、音が鳴り響く場を形成し、それらの個性にあわせて支え、包み込み、守っている」。
(ポーラ美術館「紙片の宇宙」より)
通報 ...