日本では空海が真言密教として東密を弘め、最澄が天台密教として台密を弘めましたが、東密はこの金剛乗の教えが中心となっております。天台密教から密教を取り除けば『法華経』が残りますが、真言密教から密教を取り除くと何も残らないと言われる程、東密の内容はヒンドゥー教的な教えだと言われております。両者の違いが明確に顕われているのが大日法身の解釈の相違です。
東密では大日法身、即ち大日如来は「宇宙を具現化したお姿」として崇められ「宇宙そのもの」を象徴する森羅万象そのものであるとされていますが、この考えは、ヒンドゥー教で説かれる「ブラフマン」そのものです。(ブラフマン=宇宙の根理)
対して台密では、顕教を説く釈迦を応身とし、密教を説く釈迦を法身と見ます。ですから大日法身は釈迦の化身と考えます。
胎蔵系、大日経系の密教のルーツはインド東部で、金剛界系・金剛頂系の密教のルーツはそれよりもよりペルシャ寄りのインド北西部、カシミールあたりだと思われている事から、金剛界系・金剛頂系の密教の方がよりヒンドゥー教の影響を強く受けていたものと考えられます。そういった所にこの東密と台密の大日如来の解釈の相違も端を発しているのかもしれません。
『法華経』の解釈も東密では『大日経』、『金剛頂経』、『蘇悉地経』の密教系の経典の方が勝れていると説きますが、台密では、『法華経』を「一乗教」と呼び、小乗・大乗の諸経典よりも勝れた経典であると位置付けております。しかし『大日経』、『金剛頂経』等は真言や印相の「事密」が説かれているので実践面において勝れていると考えます。
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