5月の快進撃から交流戦に入って少し低速運転になった阪神電車。
この先、速達列車としてペイスを取り戻すかどうか?
何度も、シーズン終盤に失速して他球団に油揚げを攫われる苦渋をなめたタイガースファンとしては、前半にどれだけ引き離しても安心できないだろう。どうしてこんなことが繰り返し起こるのか?
その答えは残念ながら、球団の体質にある。といっても、巷間よく言われる、社会的な原因ではない。簡単に数字を見れば、編成がいかに仕事をしていないか、球団がどうやってティームメンバーを集めるかを理解していないことが瞭然・・・
昔から個人的にティーム打力の指標として、先発メンバー(マイナス投手)の、SLG=長打率を足し合わせる(数学的には、総和=Σという記号を学校で習ったはずだ)という簡単な「スタッツ」を使っている。
2010年代のタイガースは、リーグで、常に5番目か6番目だった。
いちいちそんな計算をしなくても、ティーム全体のSLG(この数字は、NPBの公式HPに行けば最も信頼できる形で掲載されている。個人サイトは流石にこんな簡単な数字は間違えないが、それ以外ではかなりバイアスがあったり信頼性が低いものも多い)平均値を見れば簡単だろうという指摘もあるが、先発メンバーとそれ以外との間に格差がある場合、ティーム全体の平均値では見落としが出て狂う。
交流戦が始まった時点で、簡単にそれをやってみた。
対象は、パ・リーグ球団(セの他の球団の比較は、SLGの球団平均値が現在中日の少し上ということから明らかだろう)。
タイガースのΣは3100ほど(一人一人のSLGは、小数点以下の3桁数字と扱っている)。因みにこの数字は、2010年代など、万年2位時代に何度も見た数字だ。
多くのファンが、スウィープを期待した西武は、3250。つまり得点力から見ると向こうが上。苦戦は偶然ではない。
事前の苦戦が予想されたが勝ち越したロッテは、3100台。タイガースとどっこいどっこいの貧打線。
だが、ここからは強敵揃いだ。
Orixは、3500かなり打線な強力だ。怖い相手。
監督の不思議行動?故か、結果が付いてこない日本ハムも、3400台。
往年の「横綱」感は後退したSoftbankも3400近い。
楽天が唯一、タイガースより下で、各球団の草刈り場となっている。
この数字ではセ・リーグではDeNAと読売が頭一つ抜けている。
タイガースにとって唯一の他の見どころは投手力であり、投手陣が少しでも調子を崩すと勝てなくなる。
まあ昔からそうだ。
SLG以上に得点力と統計的相関が高いのがOPSで、だから取りざたされる。ただ、タイガースは常にOBP=出塁率は高い。それなので、敢えて打力の指標であるSLGを見て、毎年のティーム状況を見るのだが、今年は完全に投手におんぶ抱っこ。
夏場に先発陣ないし、救援陣が綻びればズルズルいく。先発は、青柳の復調と、西純や高橋の復調があればなんとかいけそうだが、救援陣は不安も残る。
SLGやOPSは、もっと基本的なスタッツの合成である。
SLG=BA(打率)+ Iso P(長打力指標)
OBA(出塁率)=BA+Iso D(選球眼指標)
OPSは、BAx2+Iso D+Iso Pという3つの基本スタッツの線形連結である。
現在のタイガース打線を梃上げするのに、打者の総合指標であるOPSが「並み」より100上回る「並みはずれた」選手を探すとしよう。200上げても良いがそうするとハードルが高くなって、より難しくなる。
3つの要素それぞれで、100上げることを考えよう(タイガースの現況を得点力スタッツ(勝手に命名)で見ると3100少し、これをパの強豪と戦えるために、最低3250は欲しいから、100~150のかさ上げは必須ということ)。
BA=打率
全選手平均は250~60ぐらいだから、そこから100かさ上げすると360となる。こんな数字、イチローとか、バースとか、落合でもなければ達成できない。歴史上、10年に一人出てくる選手だ。こんなのは無理に近い。
まあ、BAは、OPSに「x2」で貢献するから、数値を50上げる、BA 320の選手を獲得すればいいが、これだってそう簡単じゃない。毎年にそれぞれのティームに1人いるかいないか。現在のタイガースなら近本が既に居る。同種の選手をもう一人は難しい。中野、木浪、もっと研鑽しろ。一人が、0.025上げて、2人で0.05(=50)あげればゴールは近くなる。
Iso Dはどうか。歴代タイガースで最高の選球眼を誇った鳥谷が、0.120ほど。並みの選手は、0.05ほどだから、最強選手をとっても50程度のかさ上げが、ようやっと。ちなみに現在打線で最高の近本大山は、0.100を満たしているから合格。この数字を0.100上げる(高い選手を獲得する)のはほぼ不可能。この数字には、生まれつきの能力た大きく関わっている。そもそも、全体の振幅が、100ぐらいしかない数字だ。
Iso Pはどうか?これは「並み」のプロ野球選手なら、0.130ぐらいのもの。大山は0.15に過ぎず、全く長距離打者ではない(本塁打数というのは必ずしも長打の指標でもない。安定して2塁打以上を打てる能力が必要)。本来中核に据えるべき打者ではないのだ。
近本は、0.18とものあの体格ではものすごく頑張っている。が、通算成績に比べて今年が異常に高いだけで、本来の彼の姿は0.130~150ぐらい。給料をもう2倍あげてやって欲しいくらいだ。
期待に反して活躍成長が止まっている印象の佐藤は、今年ですら0.22と、流石に群を抜いた長打生産能力を持つ。
実はIso Pこそ、「並みの選手+100」の数字を達成するのが最も簡単なスタッツなのだ。並みを抜いた数字を出せる打者(つまり平均集団からの乖離)が、かなり大きい選手がぱらぱらと存在するスタッツなのである。
それを生かすために各球団に与えられているのが、「非日本人助っ人」枠(外国人という呼称が嫌いなのでこういう煩わしい言い方をする、ご容赦)なのだ。
佐藤クラス、あるいはそれを上回るパワーヒッターがもう一人いないと、どうにもならないのが現状だ。
現在の2人、ノイジは、Iso P=0.09では日本人並み以下。問題外。ミヱセスは、0.23と佐藤並みだが、BAがひどすぎる。バットに当たらない。他球団をみれば、Iso Pで0.25クラスの選手が、2人いて当然。常勝を目指すなら、3人そろえるぐらいの気構えは必要(一人はBAも高い万能選手、もう一人は長打に特化した選手・・・というと、ミヱセスがもう少し日本野球に順応すればありかもしれない)。
「広い甲子園だから」という言い訳は聞かない。どの球団も半分の試合は、他球場にいるのだから。相対的なもの。
タイガースがやるべきことはただ一つ。他球団の「外国人」スカウトを高額の給料で「移籍」させることだ。投手に比べて、国外からの打者スカウティングが貧弱すぎる。
選手の移籍や高額でロートルの元長距離打者をFAさせるよりよっぽど効果がある。