| 1 | + | 科学…
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| 2 | + | それは人類の叡智であり、従来ならば人類の役に立つべき存在である。
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| 3 | + | 生活を豊かにしたい、好奇心を満たしたい、人の命を救いたい…などその目的は枚挙に暇がない。
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| 4 | + | その反面科学は副作用、実験の失敗、悪用などによって人類に様々な災厄をもたらした。
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| 5 | + | これまでに科学が人類にもたらした惨劇もまた、枚挙に暇がないのだ。
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| 6 | + | もし今より更に発展した科学の情報があるとするならば、人類に更なる発展の可能性を与えると同時に
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| 7 | + | 更なる災厄も与えるパンドラの箱とも言えるかもしれない。
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| 8 | + | これは偶然その「パンドラの箱」が開けられてしまい、開けた者が箱から出て来た不幸を何とか排しよう行動を起こした結果勃発した戦いの物語である。
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| 9 | + |
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| 10 | + | 時は2023年7月1日の土曜日、舞台は東京。
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| 11 | + | 日本の首都にしてヤクザ、半グレ(ヤクザではない反社)、殺し屋、不良、詐欺師等様々な悪党が跋扈する魔境である。
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| 12 | + |
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| 13 | + | 「テメーどこ中じゃあ!!」
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| 14 | + | 「この学校の番長出てこい!!」
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| 15 | + | 「金返せやワレ!!」
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| 16 | + | 「コラよそ者!!ウチの縄張りで客引きしてんじゃねー!!」
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| 17 | + | 「あんたに恨みはないが仕事なんでね…死んで貰うよ」
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| 18 | + | 「ハン!」「チョウ!」「ハン!」「チョウ!」
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| 19 | + |
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| 20 | + | 凶暴で狡猾な彼等は時として己の欲望の為に力無き弱者に牙を剥く。
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| 21 | + | 中でも大物となると「鬼」「悪魔」「死神」「怪物」などと謳われる者も。
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| 22 | + | こうした悪党は一般人にとっては脅威そのものと言えよう。
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| 23 | + | しかし彼等を遥かに上回る脅威がそこに迫ってきているのを誰も予期していなかった。
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| 24 | + |
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| 25 | + | 脅威の前兆は東京都上空に立て続けに現れた2つのUFOと思しき物体である。
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| 26 | + | 「UFO」の映像は瞬く間に拡散し巷では暫しその話題で持ちきりになった。
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| 27 | + | そして…それから程なくして都内のホストクラブが何者かに荒らされる事件が連続発生した。
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| 28 | + | 荒らされたクラブ内は地震発生や大型のダンプが突っ込んできたかのような惨憺たる有様だった。
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| 29 | + | 犯人の特定は難航し、この一連のホストクラブ襲撃事件も巷で話題になった。
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| 30 | + |
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| 31 | + | 翌々日の7月3日月曜日。
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| 32 | + | 都内の高校の1つである都立稲舟(いなふね)高等学校の2年の教室内で、2人の男子生徒が前述の事件の事を話題に挙げていた。
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| 33 | + | 一方は大柄な体格で、もう一方は比較的背が高く端正な顔立ちである。
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| 34 | + | 「昨日のテレビ見た?やっぱりあのUFOの映像、フェイクじゃないってさ」
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| 35 | + | http://ssdrexzzx.starfree.jp/gai3.png
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| 36 | + |
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| 37 | + | 「ああ、自衛隊の証言の奴だよな。全く、氷藤(ひょうどう)の嘘の方がまだ現実味があるぜ」
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| 38 | + | http://ssdrexzzx.starfree.jp/tsurugi3.png
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| 39 | + |
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| 40 | + | 大柄な生徒、桜井劾(さくらいがい)が不安気に言い、端正な顔の方の生徒、神崎剣(かんざきつるぎ)がそれに応じる。
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| 41 | + | ちなみに氷藤とは2人と同じクラスの男子生徒である。
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| 42 | + |
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| 43 | + | 「その氷藤は今日もズル休み…みたいだね…」
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| 44 | + | 「何やらひい爺さんの妹さんの息子さんの奥さんのお兄さんが亡くなった…らしいぜ」
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| 45 | + | 呆れ気味な表情を浮かべて言う劾に剣も呆れ気味な表情で返す。
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| 46 | + | この氷藤は嘘つきで有名であり今回の欠席理由も真っ赤な嘘である。
|
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| 47 | + | 余談だが氷藤が亡くなった事にしている人物は一応いるが存命であり、氷藤とは互いに面識もない。
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| 48 | + | 「ズル休みの言い訳で人を亡くなった事にするのは良くないな…
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| 49 | + | 話を戻すけど、都内の連続ホストクラブ襲撃事件も、もしかしたらUFOが関係あるんじゃ…」
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| 50 | + | 劾は若干の悲しみと怒りを含んだ表情で今はここにいない氷藤を批判し、
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| 51 | + | 直後その表情を不安気な様子に戻しUFOと連続ホストクラブ襲撃事件の関連性を言及する。
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| 52 | + | 「時期的に合ってるかも知れないがそれは流石に勘ぐり過ぎじゃないか?
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| 53 | + | 大方例の悪質ホストの所為でホストクラブそのものを恨んだ奴の差し金だろ」
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| 54 | + | 軽く笑い飛ばす剣。
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| 55 | + | というのもここ最近客の女性を洗脳して多額の金を貢がせて借金をさせ、
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| 56 | + | その返済の為に夜の店で働かせる悪質ホストが逮捕されたというニュースがあったのだ。
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| 57 | + | 故にホストに騙された女性客が全てのホストを憎み半グレを雇って報復しても何ら不思議ではないのだ。
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| 58 | + | 「…だとしても今までみたいなヤクザや半グレの大きい抗争が起こるって事だよね…!?
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| 59 | + | どっちにしても怖い…」
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| 60 | + | 身を震わせる劾。
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| 61 | + | 彼が言うように近年都内ではヤクザ同士、またはヤクザ対半グレの大規模な抗争が立て続けに勃発してきたのだ。
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| 62 | + | 「ヤクザとかホストとか、高校生の俺達には関係ないじゃないか」
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| 63 | + | 剣が半ば呆れ気味に言う。
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| 64 | + | 「そうでも、ないよ…」「…ああ…」
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| 65 | + | それを否定した劾に暫くして剣は頷く。
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| 66 | + | 稲舟高校は不良校でこそないものの不良や派手な女子生徒は少なからずいる。
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| 67 | + | 彼等は時として問題を起こしては学校の評判を下げている。
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| 68 | + | その為ヤクザやホストとは無関係とは断言できない。
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| 69 | + | ちなみに氷藤も不良に分類される生徒である。
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| 70 | + |
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| 71 | + | 「ヤクザや半グレ…その程度の問題で済めばいいんだけどな…」
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| 72 | + | 「どういう意味だよ!?怖い事言わないでよ…!」
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| 73 | + | 意味深に呟く剣の言葉に思わず身を震わせる劾。
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| 74 | + | 「いや、何でもない。それよりそろそろ授業始まるぞ」
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| 75 | + | 剣の言葉を受け、劾は自分の席に戻る。
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| 76 | + | その後も劾は不安を抱きつつも大した事は起こらない、と自分に言い聞かせ続けた。
|
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| 77 | + |
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| 78 | + | そんな彼の願いも虚しく、数日後新たな不可解な事態が発生し始める。
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| 79 | + | 「神崎くん、渡したいものが…」
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| 80 | + | 放課後、一人の女子生徒が紙に包まれた手紙を赤面しながら剣に渡そうとするが…
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| 81 | + | 「すまん、急いでいるんだ、後にしてくれ」
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| 82 | + | 剣はそそくさと帰ってしまった。
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| 83 | + | 別の日の放課後も…
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| 84 | + | 「神崎、ノートのここ写させてくんね?」
|
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| 85 | + | 1人の男子生徒がノートを写させるよう剣に願い出る。
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| 86 | + | 「俺には用事があるんだ、他を当たってくれ」
|
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| 87 | + | またしてもそそくさと帰る剣。
|
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| 88 | + | また別の日も…
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| 89 | + | 「神崎、この後カラオケ行かね?」
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| 90 | + | 「今日は無理だ、また今度な」
|
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| 91 | + | 複数の男子生徒からカラオケに誘われるも剣はやはりそそくさと帰っていく。
|
---|
| 92 | + |
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| 93 | + |
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| 94 | + | 「何か最近、神崎付き合い悪くね?」
|
---|
| 95 | + | 「いつも一緒にいるお前達も何も知らないのか?」
|
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| 96 | + | 複数の男子生徒から問いかけを受けるのは劾と同じクラスで隣の席の女子生徒、沖藍玲(おきあいれい)の2人である。
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| 97 | + | http://ssdrexzzx.starfree.jp/rei4.png
|
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| 98 | + |
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| 99 | + |
|
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| 100 | + | 「実は僕達も知らないんだ、ごめんよ」
|
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| 101 | + | 「親に聞いても知らないって」
|
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| 102 | + | 劾と玲は困惑気に答える。
|
---|
| 103 | + |
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| 104 | + | 急に単独行動が増えた剣。依然止まぬ連続ホストクラブ襲撃事件。
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| 105 | + | 生徒達の中にはこれら2つの要素に加えUFOを関連付けて考える者が現れ出した。
|
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| 106 | + |
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| 107 | + | 「もしかして神崎は連続ホストクラブ襲撃事件の実行犯の半グレなんじゃ…!?」
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| 108 | + | 「ワルな神崎くんもカッコいい…」
|
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| 109 | + | 「いや、ホストクラブを襲った宇宙人を匿ってるんじゃね?」
|
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| 110 | + | 「彼は誰にでも優しいからそれもあるかも…」
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| 111 | + | 「もしかしたらもしかしたら…神崎自身が宇宙人なんじゃ…!?」
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| 112 | + | 「それでもいいわ、近頃少し地球の男に飽きた所よ」
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| 113 | + | 好き放題剣の正体について議論する生徒達。
|
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| 114 | + | 女子生徒の中には剣の正体が何であれ好意的に捉える者もいたのだが、
|
---|
| 115 | + | 「「………」」
|
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| 116 | + | これを見ていた劾と玲は内心不快感を抱いていた。
|
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| 117 | + | 友人の正体についてあらぬ疑いがかけられているのは正直面白くないからだ。
|
---|
| 118 | + | だがしかし剣が潔白である確証が得られないのもまた事実。
|
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| 119 | + |
|
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| 120 | + | そうこうしている内にもホストクラブは襲撃され、剣は放課後足早に帰っていく。
|
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| 121 | + | 用事を本人に聞いてものらりくらりと躱される。
|
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| 122 | + | それによって劾と玲の両者は「剣が潔白である事を確かめたい」「潔白じゃなかったら止めたい」
|
---|
| 123 | + | 「何か困っている事があったとしたら1人で抱え込むのは水臭い」「純粋な好奇心から真相を知りたい」
|
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| 124 | + | という感情が混ぜこぜになっていきそれらの感情は日に日に強くなっていった。
|
---|
| 125 | + |
|
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| 126 | + | 7月14日の放課後、劾と玲の誘いを剣は断って足早に去っていく。
|
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| 127 | + | その直後、劾と玲は互いに向かい合った後、目と目を合わせ、頷いた。
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| 128 | + | 「「(神崎を、尾行(つけ)よう…!!)」」
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| 129 | + |
|
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| 130 | + | 剣、そして劾と玲が向かった先は新宿だった。
|
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| 131 | + | 街中には連続ホストクラブ襲撃事件の実行犯を探すべく至る所に大勢のヤクザが鬼の形相でうろついていた。
|
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| 132 | + | 通行人達は戦々恐々としながら彼等から目を逸らす。
|
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| 133 | + | 「どこにいやがる!ウチのシマを荒らしたクソ共が!!」
|
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| 134 | + | 「姫(ホストクラブの女性客)に寄り添う良質ホストクラブまで手にかけやがって…許せねぇ!!」
|
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| 135 | + | 彼等の組の名は赤灯会(せきとうかい)。
|
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| 136 | + | 新宿区を拠点に置く極めて強大な武闘派ヤクザであり、渋谷区の武闘派ヤクザ「汰威超組(たいちょうぐみ)」に惜敗した抗争、
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| 137 | + | 千代田区から侵攻してきた巨大半グレ「蛙陰減瑠弥流(アインヘルヤル)」を返り討ちにした抗争、
|
---|
| 138 | + | 東北地方から侵攻してきた巨大半グレ「李蔑里怨(リベリオン)」を返り討ちにした抗争は
|
---|
| 139 | + | 裏社会では伝説である。
|
---|
| 140 | + |
|
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| 141 | + | 「さすが赤灯会…オーラが半端ないぜ…」
|
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| 142 | + | 道行く赤灯会の構成員達を見ながら一般人達は呟く。
|
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| 143 | + |
|
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| 144 | + | 「何か…思ったよりヤバい問題に首を突っ込んじゃったんじゃ…」
|
---|
| 145 | + | 「大丈夫、何かあったら伯父さんに連絡するから…」
|
---|
| 146 | + | 劾も戦々恐々としていたが、玲は冷や汗をかきながらも不敵な表情で諭す。
|
---|
| 147 | + |
|
---|
| 148 | + | 「にしても本当に赤灯会のオーラは別格だ…空間が…歪んで見える…」
|
---|
| 149 | + | 通行人の1人が呟く。
|
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| 150 | + | 赤灯会のあまりの迫力にオーラが目に見えると感じたのだ。
|
---|
| 151 | + | だがその直後…
|
---|
| 152 | + | 「いや、本当に空間が歪んでいるぞ!!!!!!!!!」
|
---|
| 153 | + | 別の通行人が叫ぶ。
|
---|
| 154 | + | 「本当だ!!何だこれ!!」
|
---|
| 155 | + | 更に別の通行人も続いて叫ぶ。
|
---|
| 156 | + |
|
---|
| 157 | + | そもそもヤクザの放つオーラとは、飽くまで物の喩えであり実際に映像で記録出来たり
|
---|
| 158 | + | 特殊な物質がヤクザから放たれるなんてことは有り得ない。
|
---|
| 159 | + | しかし今彼等が目にしているのは映像にも記録できる空間の歪みである。
|
---|
| 160 | + |
|
---|
| 161 | + | ヴ…ヴ…ヴ…
|
---|
| 162 | + | 空間の歪みは1つの巨大な球形を中心にいくつかの小さい球形を成していき、同時にノイズ音が響き渡る。
|
---|
| 163 | + |
|
---|
| 164 | + | 「な、何じゃあ!!」
|
---|
| 165 | + | 歴戦の猛者の赤灯会の構成員達もこの事態に狼狽える。
|
---|
| 166 | + | 「………」
|
---|
| 167 | + | しかしこの場にいる者の中で只一人状況を冷静に見守る者が。
|
---|
| 168 | + | 剣である。
|
---|
| 169 | + |
|
---|
| 170 | + | カッ!
|
---|
| 171 | + |
|
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| 172 | + | 次の瞬間、全ての空間の歪みが強烈な光を放ち、光が収まると空間の歪みが発生した地点にロボット達が佇んでいた。
|
---|
| 173 | + | 小さな歪みから出現したのは丸い胴体から2本の脚を生やし、両肩が砲門になっているタイプ、
|
---|
| 174 | + | 6本脚でサソリに似ているタイプ、足が無く背中に翼を生やしている事を除き人型に近いフォルムで
|
---|
| 175 | + | 空中を浮遊するタイプの3タイプのロボットでいずれも2m程の大きさで1タイプにつき複数体存在する。
|
---|
| 176 | + | 大きい歪みから出現したのは全高約5mで白く鋭角的な頭部、薄紫色で円筒形の胸部、黒く下に行くほど太くなる四角柱型の腹部、丸みのある箱形の腰部、薄紫色の円筒形で先端がペンチのような形状の両腕、同じく薄紫色の円筒形で胴体に対し短い脚部が特徴のロボットで
|
---|
| 177 | + | こちらは1体しかいない。
|
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| 178 | + | http://ssdrexzzx.starfree.jp/ds1.png
|
---|
| 179 | + |
|
---|
| 180 | + |
|
---|
| 181 | + | ロボット達は薄紫色のロボットを筆頭に近場のホストクラブに向かっていく。
|
---|
| 182 | + |
|
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| 183 | + | ドガッ!!バキッ!!
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| 184 | + | 「「「「「「「ワーーーーーー!!!!!!!!!!」」」」」」
|
---|
| 185 | + |
|
---|
| 186 | + | これらのロボット達は進行先の障害物を破壊しながら進んでいくので当然その場はパニックになる。
|
---|
| 187 | + | 「カタギを守りつつクラブも守るぞ!!」
|
---|
| 188 | + | 「シマのモン守らんで何が極道じゃい!!」
|
---|
| 189 | + | 赤灯会の構成員達は一部はロボット達を追い、残りは一般人の避難誘導に取り掛かる。
|
---|
| 190 | + |
|
---|
| 191 | + | ズドン!ガキン!
|
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| 192 | + | ロボット達に拳銃や刀で攻撃する赤灯会の構成員達だったが、薄紫色のロボット…
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---|
| 193 | + | 後にギガプライアーという名前が判明する機体はもちろんの事、3タイプの小型のロボットにも全く通用しない。
|
---|
| 194 | + | 遂にはロボット達はホストクラブ「ルージュ」の前に到達し、クラブを滅茶苦茶に破壊し始める。
|
---|
| 195 | + | 特に車を軽々と放り投げるギガプライアーのパワーが凄まじく、クラブはみるみるうちに瓦礫と化していく。
|
---|
| 196 | + | 「うおおおおお!!!やめろおおお!!!!やめやがれえええええええ!!!!!!」
|
---|
| 197 | + | 「増援を!!増援を呼ぶんだ!!」
|
---|
| 198 | + | 怒りと屈辱による怒号を響かせながらロボット達を攻撃する赤灯会の構成員達。
|
---|
| 199 | + | しかし彼等の奮闘も虚しく彼等の手にする武器が奪われては破壊されていく。
|
---|
| 200 | + |
|
---|
| 201 | + | 「…どうしよう…ここは逃げようかな…?」
|
---|
| 202 | + | 「あいつらの目的はホストクラブ…こっちには来ないと思う。それより神崎を見張ろうよ」
|
---|
| 203 | + | 劾は逃げようと考え始めるが玲は当初の目的を優先しようとする。
|
---|
| 204 | + | その剣だが、人目につかない場所を見つけたかと思うとそこに消えていく。
|
---|
| 205 | + |
|
---|
| 206 | + | 一方でクラブのあった場所には黒塗りの高級車が次々と到着していく。
|
---|
| 207 | + | 「何なんだあのロボット共は…ロ〇アか北の国が攻めて来やがったのか…!?」
|
---|
| 208 | + | 「いや、『巣蹴縷沌』(スケルトン)の連中かもしれんぞ…奴等ならあれぐらいのメカぐらい…」
|
---|
| 209 | + | 「あの『メカに強い半グレ』っちゅう奴等か?だがあんなヘッポコ共にこんな大それた真似が出来るとはとても思えんぞ」
|
---|
| 210 | + | 「確かに、あの落ちこぼれ共の線は無いな…だったら何者が…」
|
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| 211 | + | 増援に来た赤灯会の構成員達の言葉を、一人のヤクザが遮る。
|
---|
| 212 | + |
|
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| 213 | + | 「何者だろうと関係ない…目の前に敵が現れたのなら…叩き切るのみ!!」
|
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| 214 | + | 言葉の主は劾より遥かに背が高く筋骨隆々の体型で髪型はソフトモヒカン、顔はゴリラそのもの、
|
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| 215 | + | 右手に石の盾を装備し左手に石の剣を所持しているという一目で危険だと分かる男だった。
|
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| 216 | + | http://ssdrexzzx.starfree.jp/goriishi.png
|
---|
| 217 | + |
|
---|
| 218 | + | 「「「「五里石の兄貴!!」」」」
|
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| 219 | + | 五里石と呼ばれた男は脚を力強く踏み鳴らし車を降りる。
|
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| 220 | + | 彼の名は五里石磊(ごりいしらい)。
|
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| 221 | + | 赤灯会の幹部の1人であり常人では持つ事さえ出来ない石の大剣を軽々と振るう狂人である。
|
---|
| 222 | + | これまで無数のヤクザや半グレがこの大剣の餌食になってきた。
|
---|
| 223 | + |
|
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| 224 | + | 五里石はギガプライアーの前に立ちはだかる。
|
---|
| 225 | + | 「敵を『見上げる』というのは初めての経験だな…」
|
---|
| 226 | + | 非常に大柄ではあるが車には乗れる五里石に対し、ギガプライアーは車より大きい。
|
---|
| 227 | + | しかし五里石は決して臆してはいなかった。
|
---|
| 228 | + | 「戦いは図体ではなく魂でする物!!こんな鉄クズに負けはせん!!いざ!!」
|
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| 229 | + | 五里石は勢いよくギガプライアーに斬りかかる。
|
---|
| 230 | + |
|
---|
| 231 | + | 「(五里石さんなら、もしかして…)」
|
---|
| 232 | + | 遠くからそれを眺める群衆は、そう思った。
|
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| 233 | + | しかし…
|
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| 234 | + |
|
---|
| 235 | + | ガキィィィィィィィィン!!!!!!!!
|
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| 236 | + | 鈍い金属音がその場に響き渡るがギガプライアーは微動だにせず、そのボディにはかすり傷一つついていない。
|
---|
| 237 | + | 「な…!?」
|
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| 238 | + | 一瞬たじろぐ五里石目がけてギガプライアーは剛腕を振るう。
|
---|
| 239 | + | バチッ!!
|
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| 240 | + | 「ぐううううう!!!!!!!!!」
|
---|
| 241 | + | 五里石は咄嗟に盾を前面に出し、衝突の瞬間バックステップをする事で衝撃を軽減するが
|
---|
| 242 | + | 勢いよく吹っ飛び壁に激突する。
|
---|
| 243 | + | その衝撃で壁が砕ける程である。
|
---|
| 244 | + | 「まだ…まだだ…これしきの傷で…我は折れぬ…ゴフッ!!」
|
---|
| 245 | + | 血反吐を吐きながら五里石は立ち上がり再度ギガプライアーに挑みかかるもあっさり返り討ちに遭う。
|
---|
| 246 | + | 周辺では赤灯会の一般構成員が小型のロボット1体につき数名で取り囲んで銃と剣で攻撃するも
|
---|
| 247 | + | 瞬く間に彼等の武器が破壊されていき、彼ら自身もまともに立っていられない程のダメージを受けて地に倒れ伏していく。
|
---|
| 248 | + | そんな中…
|
---|
| 249 | + | ガラガラガラ…
|
---|
| 250 | + | 五里石の前方の瓦礫が崩れ始め、その落下先には逃げ遅れた高齢者がいた。
|
---|
| 251 | + | 「おおおおおお!!!!!」
|
---|
| 252 | + | 五里石は迷うことなく高齢者に覆いかぶさる。
|
---|
| 253 | + |
|
---|
| 254 | + | 「(これが…我の最期…か…戦いの中で…カタギ守って死ねるなら…本望だ…)」
|
---|
| 255 | + | 死を覚悟する五里石。
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| 256 | + |
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| 257 | + | 「「「「兄貴ぃーっ!!!!!!!!!」」」」
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| 258 | + | 倒れた姿勢のまま、五里石のいる方向に手を伸ばして泣き叫ぶ赤灯会の構成員達。
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| 259 | + | その時だった。
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| 260 | + |
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| 261 | + | カッ!!
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| 262 | + |
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| 263 | + | どこからか一瞬光が放たれ次の瞬間光の発生源から白いカラーリングのロボットと思しき存在が飛び出してきた。
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| 264 | + | その存在は身をかがめた姿勢でタックルのように高速移動し瞬時に五里石達の元に到達し
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| 265 | + | 二人を抱えて落ちてくる瓦礫を避ける。
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| 266 | + | 結果瓦礫は誰もいない地点に落下した。
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| 267 | + |
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| 268 | + | 「我は…今際の際に夢でも…見ているのか…!?」
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| 269 | + | 一瞬の出来事に理解が追いつかない五里石に謎の存在は言う。
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| 270 | + | 「ここは俺に任せて…」
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| 271 | + |
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| 272 | + | そして謎の存在はロボット達に向かっていく。
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| 273 | + | その存在の外見的な特徴は二の腕、腹部、太もも、関節が黒い他は全体的に白いカラーリングで
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| 274 | + | 頭部はヘルメットのような形状で中から人の顔が覗く。
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| 275 | + | よく見ると後頭部からは髪の毛がはみ出しており、顔、体型、声は男性を思わせるものである。
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| 276 | + | どうやらその存在はロボットではなく装甲服を着た人間のようである。
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| 277 | + | 「白装甲の男」はロボット達の元に到達するや否や手元に光を出現させ、光からはメカニカルなパーツで出来た刀剣状の武器が出現した。
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| 278 | + | http://ssdrexzzx.starfree.jp/rmt.png
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| 279 | + | 「行くぞ!!」
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| 280 | + | 白装甲の男は先程五里石達を救出した時と同じ高速移動「ダッシュ」で動き回りながら
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| 281 | + | 手にした刀剣で小型のロボット達を両断していく。
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| 282 | + | ダッシュの移動距離は一度に付き人間の身長の数倍であり、
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| 283 | + | この為白装甲の男は上から見ると折れ線を描くような動きでロボット達を斬って回る。
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| 284 | + | この光景を目にした観衆はこれまで混乱状態だった中に希望を見出し始める。
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| 285 | + |
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| 286 | + | 「もしかしてあれいけるんじゃないか!?」
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| 287 | + | 「頑張れ!!!頑張れ!!!」
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| 288 | + |
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| 289 | + | 一方で劾と玲は…
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| 290 | + | 「あれって…神崎でしょ…!?」
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| 291 | + | 「どういう事だよ…神崎…」
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| 292 | + | 白装甲の男が出現した方向や背格好、顔、声から2人は白装甲の男が剣だと見抜く。
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| 293 | + | 彼等の考えの通り、白装甲の男は剣だったのだ。
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| 294 | + |
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| 295 | + |
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| 296 | + |
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| 297 | + | 「残るはお前だけだな…」
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| 298 | + | ギガプライアーと対峙する剣。
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| 299 | + | 「ギガガ!!」
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| 300 | + | 機械的な音声を響かせギガプライアーは剣に殴り掛かる。
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| 301 | + | 「甘い!」
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| 302 | + | ギガプライアーの剛腕が振り降ろされる瞬間、剣はサイドステップでこれを回避した直後返しの刃を見舞う。
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| 303 | + |
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| 304 | + | ガキィィィィィィン!!!!!!!
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| 305 | + |
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| 306 | + | ギガプライアーは攻撃を受けた方向にのけぞり、そのボディには切り傷が走る。
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| 307 | + | その後もギガプライアーは掌の砲門から光弾を放つも射線を読まれて躱される。
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| 308 | + | 車を放り投げるもダッシュで懐に潜り込まれて反撃を喰らう。
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| 309 | + | この間剣はギガプライアーを人のいない方向に誘導すると同時に着実にダメージを与えていく。
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| 310 | + |
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| 311 | + | しかしある時ギガプライアーが豪腕を振り下ろそうとして剣がサイドステップで回避しようとした時だった。
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| 312 | + | ジャキッ!ズドン!!
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| 313 | + | ギガプライアーは振り下ろす腕を途中で止め、もう片方の腕から砲撃を放ったのだ。
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| 314 | + | 「何!?」
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| 315 | + | 剣は咄嗟に刀剣を構えてこれを防ぐ。
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| 316 | + | それ以降もギガプライアーは攻撃にフェイントを入れたりより狙いが正確になるなど
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| 317 | + | これまでの力任せな戦闘と打って変わって「巧みさ」が出てきたのだ。
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| 318 | + | それでも剣が果敢に応戦しているとギガプライアーの内部から声がする。
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| 319 | + | 「中々やるじゃないか、博士の…シェリー博士からの回し者かい?」
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| 320 | + | その声はこれまでの機械音声とは異なる人間の男性のような声だった。
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| 321 | + |
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| 322 | + | それに剣が応じる。
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| 323 | + | 「まあそういう呼び方もあるな。それよりお前、『デルタ』だな?何故こんな事をする?」
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| 324 | + | ギガプライアー、否、「デルタ」と呼ばれたその内部の通信機からの声の主は嘲笑うように言う。
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| 325 | + | 「愚問だね、『ホストクラブ』などという女性の心を騙し金銭をむしり取るだけの商売、
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| 326 | + | 潰してやるのが世の為さ」
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| 327 | + | 剣は顔をしかめて返す。
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| 328 | + | 「ホストクラブ自体は女性の心に一時の安らぎと夢を与える商売だ。
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| 329 | + | それにな、集団の一部が悪い事をしたからと言ってその集団を悪と見なすなんて
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| 330 | + | 人間の中でも馬鹿な奴のする事だぞ。
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| 331 | + | 通常のロボットより進んだ『レプリロイド』が聞いて呆れるぜ」
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| 332 | + |
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| 333 | + | 「何とでも言うがいい…お喋りはここまでだ…これならどうかな…!?」
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| 334 | + | ドガドガドガドガドガッ!!!
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| 335 | + | デルタが言い終わるとギガプライアーは両腕で地面を滅多打ちにした。
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| 336 | + | それに伴い大地は震動し地割れも発生し空中には粉塵が舞う。
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| 337 | + | これには地形を変えて足場を不安定にする効果と震動の影響で相手の体勢を崩す効果、
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| 338 | + | そして粉塵による目くらましの効果がある
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| 339 | + | しかも徐々に移動しながらこれを行うのだ。
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| 340 | + | 「さあさあ…いつかは当たるぞ?」
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| 341 | + | 地面を叩きながら徐々に距離を詰めていくギガプライアー。
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| 342 | + |
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| 343 | + | だが暫くした時だった。
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| 344 | + | 粉塵の中から剣が勢いよく飛び出し、更に空を蹴ってもう一度跳ね上がったのだ。
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| 345 | + | ギュイイイイイイイイ…
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| 346 | + | 剣が手にした刀剣の内部からはチャージ音のような音が響く。
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| 347 | + | そして…
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| 348 | + | 「喰らえ!!!!」
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| 349 | + | ガキィィィィィィン!!!!!!!
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| 350 | + | 剣は空中で光に包まれた刀剣でギガプライアーに勢いよく斬りかかった。
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| 351 | + | ギガプライアーがこの攻撃で受けたダメージはこれまでで最大であり、
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| 352 | + | 切り口からは内部メカが露出し、煙を噴き、火花を散らす。
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| 353 | + | するとギガプライアーから再度デルタの声がする。
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| 354 | + | 「今回の所はこれで引くが、その前に博士に伝えてくれないか。
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| 355 | + | 『次はこうは行かない』、それから『ボクを止めようとしても無駄だ』とね」
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| 356 | + | そう言い残すとギガプライアー並びにロボットの残骸は光に包まれてその場から姿を消した。
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| 357 | + |
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| 358 | + | 「ワアアアアアアアアアア!!!!!!!」
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| 359 | + | その場は歓声に包まれる。
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| 360 | + | 一方で剣は物陰にダッシュで向かっていき、陰に隠れると光に包まれて姿を消した。
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| 361 | + | 暫くすると救急車がやってきて怪我人の搬送を始めた。
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| 362 | + | 怪我人の大半は赤灯会の構成員達でありいずれも命に別状は無かった。
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| 363 | + |
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| 364 | + | 「兄貴…良かった…本当に良かった…!」「ああ、あの人は我々の恩人だな」
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| 365 | + | 救急車の中で舎弟の言葉に応じる五里石。
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| 366 | + |
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| 367 | + | 暫くして劾と玲は剣が消えた地点に足を運んだがそこに剣の姿は無かった。
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| 368 | + | いくら探しても見当たらなかった為、その日は解散となった。
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| 369 | + |
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| 370 | + | 翌日の7月15日。
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| 371 | + | 「「あの、神崎…」」
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| 372 | + | 終業式が終わり3人きりになったタイミングで劾と玲は剣に声をかけた。両者の表情は真剣そのものである。
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| 373 | + | これから昨日の事について聞こうとしたら剣はきっとしらばっくれるだろうと両者は考えていたのだが…
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| 374 | + | 剣の反応は意外な物だった。
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| 375 | + | 「お前達の言いたい事は分かる。というか結構前から気付いていたからな、お前達がつけて来ている事を」
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| 376 | + | 「え…?」
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| 377 | + | きょとんとする劾を尻目に剣は続ける。
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| 378 | + | 「他の奴等だったら撒いていた。お前達だから敢えて気付かない振りをしていた訳だ。
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| 379 | + | お前達にはバレても構わないという気持ちと、他の奴等ならともかくお前達に誤解されたままなのは気持ち悪いという気持ちがあったからな」
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| 380 | + | 「何でそんな回りくどいことするの!?普通に言ってくれてもいいじゃない!!」
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| 381 | + | 玲が詰め寄る。
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| 382 | + | 「言っても信じて貰えないだろうからな…」
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| 383 | + | 申し訳無さそうに応える剣。
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| 384 | + | 「取り敢えず、神崎には聞きたいことが山ほどあるんだ…何から聞けば…」
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| 385 | + | 落ち着かない様子の劾。
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| 386 | + | それに対し剣は冷静に返す。
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| 387 | + | 「ここじゃ何だから場所を変えるぞ。時間と場所は今送るからもし知りたかったら来てくれ。
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| 388 | + | 氷藤の嘘よりも嘘みたいな現実が待ってるぜ」
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| 389 | + | 剣はスマホを操作し待ち合わせ場所と時間を記したメッセージを劾と玲のスマホに送る。
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| 390 | + |
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| 391 | + | 「僕は行くよ…」「私も行く…!」
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| 392 | + | 両者共に覚悟を決める。
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| 393 | + |
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| 394 | + | そして彼等は向かった先で想像を遥かに超えた光景を目にする事になる…
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| 395 | + |
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| 396 | + | 続く
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| 397 | + |
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