朝なんかこなけりゃいいんです
のぼる太陽に向けた指先
ぐんと、伸ばして、
伸ばして、伸ばして、伸ばして、伸ばしても、、
伸ばしても伸ばしても 、 2台並んだコンベアの遠い方、わずか10cmのドレンパンとコンベアの隙間
ローラーゴムに届かない。垂れる機械油を受ける鉄板に山積した白い粉。摩耗して細くなっていても噛み付くペンチを押
し返す弾力。
海辺の羊は元気です
パッキンつきの鉄の塊で行ったり来たり
本日の計画は50箇所/2h。1000本単位で並ぶコンベアの部品。毎日組まれた交換作業。
髪をまとめながら納期の伸縮を祈祷して
伸びたり、縮んだり、ある日ぱちんとちぎれたり
180cm 60kg の痩せ方も通れない隙間に向かって、ラジオペンチを握った腕をめいっぱ(いや無理やろ)。体勢だけで諦
めないまま時間は過ぎる。夏のコンベア通路は屋根裏効果。つま先立ち、後ろに出した片足で上体を押し出して。汗が伝
って何分が経った(たぶんまだ2分も経ってへん)?
老若男女のご無体なお問い合わせに
ひきつる表情筋は年季が入ってベタついてきた気配
2分が積み重なり17時へ否応ない。今日も成果は無い。
斜陽!
先輩の、同僚の、社員さんの、上司の、視線。淡々々々と回り続けるこのコンベアのゴムローラーの白さのほうがまだ灰
色で、優しい、のかもしれない。すくなくとも目ではない。人間の表皮はソフビでない。隣にいても隔てられ。脳をうね
るパイプ、つなぐパッキンは思考漏れ。言葉、排出量が少なすぎる。視線とタスクの拘束で息もままならず。割り箸のよ
うなメンタルは、銃を作ろうにも工作中に折れます。
無数の機械の鶴を窓辺に見ながら
気を失っているうちに日が沈み
前後にした両のつま先、手前のコンベアにねじ込んだ頭、奥へ伸ばした右腕鉄板を掴んでキープする左腕。その他節々の
関節をピンで留めてもういっそ。標本にしてほしい。
見上げればでかでかまぶしくオリオン座
と俺を取り替えて(誰に言ってんねん)
(いや、ちゃうな、あれなに座?)
隠れるように「お先に失礼します」して、自転車にまたがる。18時までならまだ私に笑顔をくれる人と出会える。肉声の
コミュニケーション(客という立場を借りた)。それでも求めて立ち仕事に次ぎ立ちこぎ。空気を蓄えて張る環状の層が
身を支え、目的地へと。でも、アスファルトと同じ色をした摩耗はヘンゼルのパン屑ほどには瞭然でない。なくなる溝。
代わりに入るガラスの傷。工場から、歩ける場所にオアシスはない。
クレーンさえも眠るらしいけど ガムを噛み噛み戦の準備
どうせだったらあの子とケンカしたい(うわのそら)、
引き出しに眠らせていたグミが 色とりどりに肌を拒んではじけ飛ぶ
それでも束の間のためにペダルをこぎ、行きつけのコーヒー屋。本日はブラジルの深入り。ブラックですすりながらの談
笑。
そうだ、こうしてまた話したい人が、たくさんいる。