五
お互いの息の音が聞こえそうなくらい静かな教室で、黒髪の少女たちは深いキスをしていた
「ほんとに、いいの?」
「だいじょうぶだよ」
花音の優しい微笑みも今となってみると恐ろしくなる
でも、後戻りはできなかった
わたしたちは、名残惜しい教室を後にして、暗い廊下を進んで、階段をのぼった先にある、白く光った窓から屋上に出た
そこからは、自分たちの育った町がよく見えた
病院のビル、お父さんのいる家、お母さんの職場……
わたしたちは屋上のフェンスが壊れていることを知っていた
しっかり手をつないで、小さくつぶやいた────
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