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更に酔いが回ってきたか。自身を取り巻く環境を上手く把握できない。
確かに感じられるのは街を抜ける風の冷たさ。そして……自分の体を支える、彼女の体温。
「ぅ……ふたり……あのふたりは……?」
早々に立ち去った二人の背をぼんやりと眺めながら、やや呂律の回らぬ声を零す。
……多くの修羅場を越えたアズキにとって、彼らのような「異常」を汲み取ることは容易のはずだったのだが
今ではもう見る影もなく、追いかけることも出来ぬままに、ただ行方を眺めるのみ。
「……そう……もう、かえる……ばいばーい……おねえちゃん……」
そして朱音に身体を……半ば引きずられるように背負われながら、自身を気にかけてくれた少女に手を振ってみせる。
年上かどうかも定かでない。だが恐らく……今のアズキは、自分がまだ子供だと思いこんでいるらしく
ふにゃり、と。締まりのない笑顔を浮かべてみせると、機械式の手甲で覆われた手をひらひらと振った。
「ありがと……アカネ……あとね……それと……」
彼女につられ立ち去る間際。自身を背負う少女に、気にかけてくれた少女に、そして今は立ち去ってしまった二人に向けて言葉を漏らした。
それは誰に聞こえるでもない、蚊の飛ぶような甘い声だが……思いの籠もった声で
「来年も……よろしく、ねぇ……」
……そのままアズキは静かに目を閉じ、すぅ、と小さな寝息を立て始めた。
酔いのピークを通り過ぎたのだろうか。先程までとは打って変わって、柔らかな笑顔を残したまま……年明けを迎える前に、眠りに落ちてしまったようだ。
それはまるで、年を迎えるまで起きていると宣言しながら、眠気に耐えられず眠りこけてしまう子供のよう。
酒は飲んでも飲まれるな。目覚めたアズキに深く突き刺さる金言を、今ここに残しておこう。