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スターダンス作業所 / 51

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katka_yg 2024/05/07 (火) 23:16:52 修正

女子供たち

もうずっと前になったが、『シーメル』のオグマがコンラを殺せないとか、葛藤して自死するくだりを「この女は戦士でない」といった。戦場で敵を敵と割り切れないせい。女々しい。

カンフー(カサンドラ)がスターダンスを刺す場面も、剣をまじえて戦いというより、スターダンスがあえて刺されてやった。かえって刺したカンフーが自失して「どうして…」となる。このときのカンフーもやはりただの少女だった。

カンフーはスターダンスのことを皮肉を込めて「兄さん」と呼んでいるのだが、そのカンフーがなんでタナティアまでスターダンスに悪辣な罠を仕掛けにきたのか、語った理由はとうてい軍人の台詞ではなく、私情いっぱいで、父を憎みながらその父を追ってきた気持ちがスターダンスとそっくりだった……というか性根の優しいスターダンスにはたぶん、妹であろうがなかろうが、そんな子を放っておけなかっただけだろうが……その場で兄として受け止めてやったことで、カンフーにとっては、兄妹の関係に戻った、のだった。もともと血は繋がってない。

思うにたぶんスターダンスの場合、相手がとくに妹でなくても、トラックに轢かれそうな子猫を見ても代わりに轢かれてしまう性格だ。それが、できるのにそのチャンスがなかなか来ないので始終イライラしている。

強い目的意識を得たときに自分の死生も超克できる性格――戦士――は、訓練より生まれつき才能によるようだ。ロマンシアはどうもそれがないのでスターダンスを恐れている。剣の腕ならロマンシアのほうが先輩だ。ロマンシアの場合、目的を見失って腑抜けたあとは復讐心にかられて迷走しただけに終わった。キレムサ以後に復活しても根性なしは治らない。

タキオンはカサンドラに「姉」を求めて拒まれ、それが兄スターダンスの仇と知った怒りと憎悪で剣を向ける。だが時はもはやそんな場合ではなく、王と軍司令が心中してもウェスタ国はむちゃくちゃだ。「タキオン王は血迷った」というのが正しい。カンフーもタキオンが向かってきたらこのときは狼狽するばかりになった。タキオンにとっても本当はきっと必要だった彼女を刺してしまい、王の威厳もなにも投げ出したあとは母を求める幼児の悲痛な叫びでしかない。

愁嘆場。哀れを誘うものだが、そのあとを思うと見苦しいものだ。お母様!お母様!と泣き叫んでいる子供を引きずり出して廃王として公開処刑する気になるか…

なるだろう、と思うが、民衆はむしろ。でも、おそらくそのときにはもうタキオンは泣きも喚きもせず、呆然とされるがままに絞首台なりギロチンに引かれていくのだろう。さて一行になるのか……。

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