虚空絵の説法を始めるにあたってお釈迦さまは三世諸仏の仏菩薩が集まって来れるように国土を整えます。
「見宝塔品第十一」で説かれる、「三変土田」です。
娑婆世界を仏国土へと変える訳ですが、なぜ三変かはもうお解りですよね。
声聞の智慧で「娑婆世界」を「方便余土」に変え、縁覚の智慧で「実報土」に変え、最後に菩薩の智慧で「常寂光土」へと三度に渡って国土を浄化します。
①凡聖同居土:人・天などの凡夫も声聞・縁覚・菩薩・仏の聖者もともに住む国土
②方便有余土:見思惑を断じまだ塵沙・無明惑を残す二乗や菩薩が住む国土
③実報無障礙土:別教の初地以上、円教の初住以上の菩薩が住む国土
④常寂光土:法身・般若・解脱の三徳をそなえ涅槃にいたっている仏が住む国土
お釈迦さまがこの「三変土田」を行う前に、巨大な宝塔が大地より突如として出現し、空中に浮かんで静止します。まるで『宇宙戦艦ヤマト』のオープニングの大地からヤマトが浮き上がってくるシーンみたいです。そして宝塔の中から、
「素晴らしい、素晴らしい、よくぞ法華経を大衆のために説いてくださった。その通りです、その通りです、あなたが説かれたことは、すべて真実です」
と、大音声が響き渡ります。その賛嘆の声を聞いてその場に居合わせた者達は大いに戸惑い騒ぎ出します。
「こんなことは、今までなかった。いったい、どういうわけで宝塔が大地から現れ、その中から声が発せられたのだろう」
お釈迦さまは答えます。
「この宝塔の中には、多宝如来という名の仏様がおられる。この仏様は、かつて誓ったのです。『法華経が説かれるところがあれば、私の塔はその前に現れ、証明役となって素晴らしい、素晴らしいと賛嘆しよう』と。だから今、法華経が説かれるこの場所に多宝如来の塔が出現して賛嘆したのです」
そこにある菩薩が「それなら、その仏様に会わせてください!」と、申し上げた。
しかし、それには条件があった。
多宝如来が姿を見せるには、釈尊の分身として十方世界で説法している仏たちを、すべて呼びもどさなくてはならないのです。ですからお釈迦さまは、仏たちが集まってこられるように今いる娑婆世界を三回にわたって浄化し、空間を広げて一つの仏国土にしました。