「長者窮子の譬」は心の変化で起こる相依性縁起のお話ですが、『薬草喩品』では此縁性縁起が三草二木の譬として説かれております。
同じお釈迦さまの説法を聞いても声聞・縁覚・菩薩といった境涯の違いから理解もそれぞれに異なり、四悉檀による教説の理解の違いから覚る真理の内容も各々に異なってきます。覚りの内容が異なるので立ち上がる世界観も各々に異なった世界が立ち上がります。それが天台が説く四土説です。
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- 凡聖同居土:人・天などの凡夫も声聞・縁覚・菩薩・仏の聖者もともに住む国土
- 方便有余土:見思惑を断じまだ塵沙・無明惑を残す二乗や菩薩が住む国土
- 実報無障礙土:別教の初地以上、円教の初住以上の菩薩が住む国土
- 常寂光土:法身・般若・解脱の三徳をそなえ涅槃にいたっている仏が住む国土
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『薬草喩品』では、小草が人間や天上の神々、中草が声聞・縁覚の二乗、上草が二乗の教えを通過した菩薩として時間の流れの中で茂っていく三草に譬えられ、小乗から大乗へと仏教が広まっていく経緯も小樹と大樹の二木に譬えられて「三草二木の譬」が語られております。こういった時間の経緯の中で起こる縁起を此縁性縁起と言います。
このように「法」が備える相(資成軌)・性(観照軌)・体(真性軌)の三軌を、
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法の譬え =三車火宅の譬 ---(体)真性軌
智慧の譬え=長者窮子の譬 ---(性)観照軌
実相の譬え=三草二木の譬 ---(相)資成軌
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として説いたのが譬喩周です。
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