今、四諦の「三転法輪」についてお話をしておりますが、これは最初に紹介しましたように『解深密経』で説かれている内容です。この『解深密経』は弥勒が説いた事になっておりますが、仏教の真髄を分かっていない学者さんなどは、弥勒菩薩と同じ名の人物が実在していたのだろうなどと主張されたりしておりますが、解脱を習得した阿羅漢が色界禅定で禅天に入ってそこで弥勒菩薩の説法を聞いて来たものだと考えられます。
その『解深密経』の記述から考えると、第一時の小乗の教えはアビダルマ、特に説一切有部の思想(有)、第二時の大乗の教えは般若思想(空)、そして第三時の一切乗の教えは唯識思想(中)となります。二辺を廃して中道を立てるという三教(有・空・中)の構造を玄奘三蔵の弟子である慈恩大師は『法華玄賛』において、それぞれに具体的な経典を当てはめております。第一時教は「阿含経等」、第二時教は「大般若等」、第三時教は「華厳経等」であると。三教の「有・空・中」の有は仮の事ですので次のようになります。
<四諦の三転法輪>
第一時 仮=「阿含経等」
第二時 空=「大般若等」
第三時 中=「華厳経等」
慈恩大師は、この三時を『義林章』では『解深密経』のみならず『金光明経』や『涅槃経』にも説
かれているといい、『法華玄賛』では、『菩薩善戒経』や『法華経』にも説かれていると述べております。『法華経』のそれは三時が直接示されている訳でなく、「開三顕一」や「三周の説法」といった法理において施されているところです。
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