平木先生
ご質問ありがとうございます。
それぞれについて回答させていただきます。
①前者の質問について
因子ごとに両群の比較は行っていません。今回使用した尺度のマニュアル(日本パーソナリティ心理学会)に,「統計的な検討を行う際には因子レベルよりも2つの下位尺度レベル(資質的要因/獲得的要因)で用いるのが望ましい」と記されていたためです。
そのようななかにおいて,運動習慣が資質的レジリエンスの「どの因子」に影響を与えるのかについて考えました。様々な文献を見ていくなかで,運動で不安は軽減されること(青木,2002),不安を抑制する効果をもつ因子として「統御力」と「行動力」が挙げられること(平野,2010)に着目しました。これらのことから,運動習慣が不安を抑制する過程において,資質的レジリエンスを構成する「統御力」と「行動力」が高まっている可能性を考え,それを図3のように「見える化」することを試みました。
②後者の質問について
課題はいくつも挙げられます。例えば,本研究の実験参加者は大学生のみである点です。つまり,小学生や高齢者等といった他の世代の方に当てはまるのかどうかはわかりません。また,本研究の運動習慣は,3か月以上(水野ほか,2004)と定義づけていますが,それよりも短い期間における習慣的な運動の実施が資質的レジリエンスを向上させるかどうかはわかりません。これらのことについて,今後,調査・検討する必要があると考えています。
本研究を発展させるために必要なことは,運動習慣がない人が3か月以上の運動習慣を形成した場合に,資質的レジリエンスが高まるかどうかを実証することだと考えています。「資質的レジリエンスは後天的に変化しないわけではない」(平野・梅原,2018)と指摘されています。本研究でいう運動習慣未形成群のような人たちに運動を習慣化させ,資質的レジリエンスに変化があるのか検討することにより,「運動の習慣化」の重要性をよりいっそう社会に広めていきたいと考えています。
馬淵皓大