ロボットの定義と歴史
ロボットという言葉は1920年にカレル・チャペックが自身の戯曲R.U.Rで強制労働を意味する「robota」を元にした造語として使われたのが始まりで、作中では労働する人間型の機械として登場しました。
しかし、私んとこのプロフェッサーによると「ロボット」の定義は専門家によりけりで、特にコレ!というものはないそうです。
そこでプロフェッサーは大まかに2つの考え方を提示しました。
A.仕事を自動的に行う人工物(Automatic)
B.生物の機能を模範した動的な人工物(Biomimetics)
広義ではどちらか一方に当てはまればよいが、狭義ではこの両方を満たしているものとされているそうです。
例えば、産業用アームロボットは「自動的に仕事を行う(A)」「腕という生物の機能模範(B)」を併せ持ち、狭義のロボットと言えます。
宇宙探査機や偵察機で言えばAの性質を有していえるのは産業用ロボットと同じですが、生物の機能を模範したと言えるようなものはないため、これらをロボットと呼びたい場合は広義の意味にしか当てはめることができません。
また、操縦型ロボットは人間や動物の身体機能(移動、視覚、物体操作)を拡張したものがあり、そういったものは文字通りBの性質は有していますが、操縦をしなければ動作しないためAの性質は有していません。無論こちらも広義的なロボットです。
このことが確認できる根拠として以下の表をご覧ください。
No | ロボット(産業用ロボット) | 関係 |
---|---|---|
① | Wikipedia/robot/A robot is a mechanical or virtual artificial agent, usually an electro-mechanical machine that is guided by a computer program or electronic circuitry....There is no one definition of robot that satisfies everyone and many people have their own. | A∩B |
② | Wikipedia/ロボット/ロボット(robot)は、人の代わりに何等かの作業を行う装置、もしくは、「人や動物のような」機械。...ロボットが何を指すのか、という明確な定義は事実上存在しない。 | A∪B |
③ | ISO(1987)/産業用ロボット/自動制御によるマニピュレーション機能や移動機能を持ち、いろいろな作業がプログラムされて実行できる機械。 | A∪b |
④ | 日本工業規格(JIS)「JIS B 0134」(1998)/産業用ロボット/自動制御によるマニピュレーション機能または移動機能を持ち、各種の作業をプログラムにより実行でき、産業に使用される機械。 | A∪b |
⑤ | ロボット政策研究会中間報告書 ~ロボットで拓くビジネスフロンティア~ ロボット研究会(2005)/ロボットの定義/「センサ」、「知能・制御系」及び「駆動系」の3つの要素技術があるもの。 | a∪b |
⑥ | ロボット白書(2014)NEDO/1.1ロボットの定義/...むしろ未来のための定義を創っていくことの方が社会にとって有益なものになるであろう。...製造業分野はもとよりサービス業分野さらにはロボット化することで価値創造が可能となるあらゆる分野での利用に関わる中心技術をロボット及びロボット技術と定義する。 | A |
⑦ | 森政弘・合田周平(1967)第1回ロボットシンポジウム/移動性、個体性、知能性、汎用性、半機械反人間性、自動性、奴隷性の七つの特性をもつ柔らかい機会。 | A∪B |
⑧ | 加藤一郎/ロボットの定義/①脳と手と足の3要素をもつ個体、②遠隔受容、接触受容器をもつ、③平衡覚、固有覚をもつ、これらの3条件を備える機械。 | a∪B |
⑨ | 広瀬茂男(2000)日本ロボット学会ミレニアム討論会/ロボットの定義/生理的な機能を有する未来機械。 | a∪B |
⑩ | 油田信一(2000)/日本ロボット学会ミレニアム討論会/ロボットとは何か?/人間(動物)のような形態 and/or 人間(動物)のような機能を持つ機械。 | a∪B |
⑪ | 佐藤知正(2008)RSJ2008開催にあたって/ロボットの役割/(1)人の役に立つ役割、(2)ロボットを作ることによって、生物や人間ひいては社会を知るという役割、(3)人を動機づける役割。 | (1)≒A,(2)≒B |
⑫ | 南部朋子(2005)法律上の定義、弁護士法人リバーシティ法律事務所https://www.rclo.jp/general/report/cat03/21/ Q.ロボットの定義を教えてください。 A.ロボットの定義は、決まっていません。 | - |
2015年(のいつかは不明)時点でプロフェッサーが纏めた、提案されたロボットの定義の一例です。
①、②はWikipediaからの引用で、それぞれ英語版と日本語版になりますが、内容が異なります。明確な定義はないという文末の文言は一致しているものの、英語版は「機械的またはバーチャルなエージェント」なのに対して、日本語版は「装置または機械」となっています。
英語版に書かれてあるのは「機械的またはバーチャルなアーティフィシャルエージェント」が正解なのだが、プロフェッサーの文献にはそう書いてあるのだから仕方がない。
それよりも気になるのは内容の差異についてだ。
ぶっちゃけ意味変わらなくないか?
・バーチャル(実際の、事実上の)
・アーティフィシャル(人工の)
・エージェント(代わり)
と訳すなら、日本語版の「人の代わりに何らかの作業を行う装置」と何も変わらない。
では全く差がないのかと言うと、そういうわけでもないと思う。
この表を見る限り、日本語版では「人や動物のような」というBの要素について書かれているが、英語版にはない。その代わり英語版には「通常、コンピュータプログラムまたは電子回路によって導かれる電気機械機械」とある。
Google翻訳のため、最後「機械機械」という奇怪な訳になったが、日本語版の説明としてこの部分にあたる文言が表にはない。
そこで実際にWikipediaのページを確認した(2022年末現在)のだが、2015年の時と内容がいくらか変わったのか、表にある文章が両方とも確認できなかった。
しかしニュアンスとしては同じだと考えてもよさそう...?
これを踏まえた上で、正しくは日本語版は「A∪B」で、海外版は「A」とすべきではないかと提案したい。
③、④は完全に一致した定義になっていますね。