鴈鉄アズキ
2019/12/31 (火) 21:31:38
>> 56
「ふぇ」
思いがけない声が背後より投げかけられ、素っ頓狂な声を上げてしまう。
振り返るとそこに立っていたのは、白い髪の美しい青い瞳の少女―――――。
「え、っと……あなたは……ぅ、っ」
見覚えのある顔の筈なのに、肝心の名前を思い出せないのは、今体を巡っているアルコールのせいなのだろうか?
思考を巡らせるも言葉は出ない。アズキは眉間にシワを寄せながら……こみ上げる吐き気をこらえながら、俯きつつ沈黙を引き伸ばす。
>> 57
そんな時、またも見知った声が投げかけられた。
がちゃがちゃ、がさがさと、膨らんだビニール袋に缶を詰め込んでいるその少女は
「ぇ……アカネ……アカネぇ……?」
難波都市軍に所属する「剣士」、逆神朱音その人。
自我を失う寸前にあっても、見知った彼女の名は思い出せた。
ここ難波でも何度顔を合わせたことのある相手で……こんな姿を見られたくなかった相手。
「だ……大丈夫ですよ……この程度で、私が酔っ払うわけ……うぇ……」
情けない姿は見せられないと、精一杯の虚勢を張ってはみるが……言い終えるよりも前に崩れかける。
そんなアズキの姿を見かねてか、倒れる寸前で腕を差し伸べ、抵抗することも出来ぬまま彼女に体を預ける形となってしまった。
「…………それ……それ、アカネが全部飲んだの……?」
そんな中で、彼女が手にしていたビニール袋――の中に詰め込まれていた、空き瓶や空き缶の数々が目に入った。
アズキからしてみれば到底信じられない量の酒。これを、彼女が一人で飲み干したというのだろうか……?
口に出すつもりはなかった。だが朧気な思考回路ではその声を心のうちに留めることは出来ず、驚愕と畏れが混じった声色で言葉を零してしまった。
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