>> 55
「……大丈夫ですか?」
そんなアズキに、声をかけるものがいた。寒空の下、更に寒さを感じさせるような冷めた色のパーカーに、丈の長いスカートを身につけた少女。
顔を見てみれば、それを何処かで見たことがあるのにも気がつくだろう。しかし、それを何処で見たのだったか。中々思い出せない。そんな、地味な顔立ちであった。
それが、無表情なまま、いつの間にか立っている。声をかける割りには、その声音に心配の色はない。青い瞳が、透明な輝きを湛えているばかり。
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