>> 163
「あー、はいはい。そういうことね。うん」
へらへらと笑いながらノイマンはボッティチェリに対して生返事をする。
今の2,3言ほどで大体計算は出来た。なるほど目の前の男は、"そういう"人間か、と。
自分も大概ではあるがそんなものはほっぽり出して、目の前の人間をつまびらかにしていく。
まぁ変質者なんぞロスアラモス研究所で何人も相手してきた故、あしらいなどすぐにできる。
と考えていた所────
>> 164
「やーどうも、さっき連れて行ったKBECのお知り合いさん? 初めまして。
僕ノイマンって言います。いつもお疲れ様ですね」
へらへらとしながらも、その目にはおよそ人間の者とは思えないナニカを宿しながらノイマンは刃矢へ笑いかける。
そして、御幣島に対するその強い語気に少々違和感を覚えていた。
「あら、この人ひょっとして危険人物だったりするんですか? …まぁ、僕にはとてもそうとは思えませんが」
と、御幣島の方を向く。すると自分に対して彼が話題を振っているのが聞き取れた。
>> 165
「んー? 彼…ボッティチェリさんの周囲に与える影響? まぁそうですね」
ふんふん、と2,3度頷いてから周囲を見渡す。
そして空中に何度かメモを書くような挙動を指で描いた後に、一度だけ大きく頷いて回答を述べる。
「人って言うのはまず羞恥心があるもんです。その羞恥心の行動に与える影響って言うのは大きいものです。
宝具でざっと計算しましたが、人類史14000年のデータを軽く洗い出しましたが…少なく見積もっても23.6837%は行動に影響を与えています。
まぁ人間、存外に恥ずかしがり屋なんですよね。そんであともう一つ、奇怪な挙動に目を惹かれる。さっきの貴方の挙動みたいなのを例にすると、
通行人の実に67.9482%の人が眼を引かれていました。はい。此れだけの大衆の視線を集めているとなるともう立派な不審者と言えますね。
そして最後に、そんな人に注目されているとなったらどう感じますか? ざっと推測ですが87.982%の確率で高い羞恥心を覚えるとゲーム理論では弾き出せます。
うん。まぁ、そういう事ですよ。分かりやすく言うと、"あんなやばい人に注目されているようじゃ迂闊に愛し合えない"ってやつです。面白いですね人間って。
やりたい事を優先するよりも、衆目を気にして無難な行動に映るものなんですよ。これ合理性だけで人間を計算しようとすると結構なノイズになるんですよね」
はっきり言って、意味不明。どういう途中計算をしたのかさえも悟らせない超高速計算。未来予測の魔眼すらも超える演算能力を持って、はっきりとボッティチェリに告げる。
曰く『あなたのやっていることは恥ずかしいし、恋人たちにとって邪魔』。それは悪魔の頭脳を用いずとも、此処にいる全ての人々が分かり切っている周知の事実だった。
「……あれ? どしたんですみなさん黙っちゃって」