「────────……あ、え……っと、」
一瞬、ほんの一瞬だけ、違和感をローレンツは感じた。
例えるなら、一瞬にして何日もの時間が過ぎたような違和感。
眠っていたのか? そう考えてしまうようなタイムラグがそこにあった。
>> 5
「えっと、初めまして。僕はローレンツ・クレンゲルと申します」
不思議な女性だった。纏う雰囲気からして、正義に生きているというような、そんな空気を纏っている。
きっと名高い聖天翼種なのだろうか、しかし浅黒い肌の聖天翼種はあまり聞いたことが無い。
そもそも自分は、そういった善と悪の闘争から外れ、それを終わらせる為に生きている背信徒だと思いだす。
だからこそ、挨拶を返してくれた女性に対してどう言葉を返すべきか迷っていた。
「列車……列となって連なる車ですか。はい、初めてです。ですが……」
「居心地は、良いものですね」
そう言いながら、空いている座席に少年は座した。
それと同時に、複数人の少女たちのグループに眼が行く。
>> 6
あまり見たことが無い服装のグループだった。
こじゃれた洋服は、ローレンツのいる喪失帯ではあまり見慣れないもの。
だからこそ、彼女たちの奇麗な服装、そして整った容姿は、ローレンツの眼を引いた。
「(…………あまり、見ちゃ失礼だよな)」
少し頬を染めながら、ローレンツはその視線を下へ移す。
彼女らに共通している事は、服装以外にも1つ。みんなが笑顔であることだ。
常に善と悪が闘争を続けるローレンツの喪失帯には、そんな光景は滅多に存在しない。
だからこそ、彼女たちの在り方は、とても眩しく見えた。
「(なんて言えばいいのかな……"仲が良いのですね"……? いや…失礼かな……)」
そうしどろもどろにしていると、少女たちの1人がローレンツと天羽々斬のほうへ視線を向けていた。