丁 (ちょう) とは吉原の俗称で、関係者は気取って「ちょう」「さと」「なか」とも呼んだ。 同じく堀とは山谷堀のことで、大川(隅田川)から西に入る入堀、狭義では今戸橋下から 日本 にほん 堤下までをいう。
「それにしても、コツで遊んでいるようではお互い、たいしたこたぁねぇなぁ」 「八ッ八ッ八ッ、違えねえ」 「堀なら、帰りは日本堤だな。 どうでぇ、いっしょに話しをしながら帰ろうや」
こうして、コツの女郎屋を出たふたりは連れ立って、三ノ輪から日本堤にはいった。
話しの中で、何気なく忠八がいった。 「俺は舟を漕げるから、店ではけっこう重宝がられてるよ。 船頭がいないとき、俺が樽や油を荷舟で運ぶんさね」 「ん!? 忠八、てめえ舟が漕げるんか」
兄貴分と敬う孫兵衛の問いかけに驚きつつも 「俺あ深川の漁師のせがれだからなあ、当たり前と言えば当たり前さね。 幼い頃から櫓を漕がされtらもんだ」 「…そうだったのか…」
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「さあ、チンチンの上に座ろか」 「……」 「素直にせんかったらまた痛い目に遭うで。ええんか?」
九左衛門はムクリと起き上がると胡坐に座り、ありさの下肢を強引に割り広げていく。
「ぬぐっ!んんぐっ!」
白い太腿を押さえつけ、赤黒い肉棒を濡れそぼった陰裂になじませようと、上下に滑らせる。 泣いて首を振るありさを無視して、感情にまかせて怒張したイチブツを突きこんだ。 さきほど散々舐められて濡れそぼった花弁に、限界まで張りつめた亀頭がズブズブと沈みこむ。
「よっしゃよっしゃ、ええ具合やで」 「んぐんぐっ!んんんぐっ!」
ありさは不自由な上半身をひねり、絶望的な抵抗で腰をくねらせ、肉棒を外そうとする。 九左衛門は対面座位で結合を果たすと、すぐさま騎乗位に移行した。
「ぐふふ……さあ、わしの腹の上でしっかりと腰振ってもらおか。たっぷりとわしのチンポを味わうんや」
孫兵衛は吉原妓楼 海老屋の若い者をやっているため、なかなか吉原の外に出る時間はなかった。
そのため忠八が海老屋にやって来たが、妓楼で内密の話しは出来ない。
ふたりは、吉原の西南隅にある九朗助稲荷の境内などで相談を重ねた。
孫兵衛から仕掛けの概要をきかされたときの、忠八の最初の反応は、 「面白いな。 しかしよ、 そんなにうまくいくだろうか」 と、半信半疑だった。 苦笑いさえ浮かべていた。
孫兵衛はふところから四両を取り出した。 「これが俺の有り金全部だ。 客人や花魁から頂いた祝儀を貯め、ようやくこれだけ作った。 今度やる仕掛けの準備に、全て注ぎ込むつもりだ。
それを見てようやく、忠八が真剣な顔つきになった。 「兄ぃ、本気なんだな」 「あたりまえだ。 うまくいくかどうかは、ふたつにかかっている。 ひとつは、昼遊びしかしない新次郎を、どうにかして海老屋に泊まらせること。 こいつは俺の方でなんとかする。 女郎並みに手練手管を尽くすつもりさ。 もうひとつは、速やかに移動すること。 これは、おめえのその手腕にかかっている」
「碁盤に手ぇついて、おいど上げ」
ありさは命じられたとおり、碁盤に両手をついて、尻を上げた。 たくし上げて帯に挟んでいた着物の裾がいつの間にかだらりと垂れている。 先程の九左衛門とのまぐわいで裾が乱れてしまったのだろう。 九左衛門はもう一度着物の裾をまくり上げ帯に挟み込み、ありさを昆布巻きにしてしまった。 着物の女性と脱がさずに背後からいたす場合は、着物の裾をたくし上げて帯に挟みこむ昆布巻きが最適なのだ。 たとえ情交を結んだ相手ではあっても、無理やり着物の裾をまくられるのは女性にとって屈辱的な行為といえる。
「もっとおいどを高う上げて」
九左衛門はピシャリと尻たぶを打った。 顔を顰めるありさ。猿轡の奥から小さなうめきが漏れる。
九左衛門は後方から肉棒を太腿の間に滑り込ませ、割れ目にぴったり沿わせた。 陰裂をなぞるように前後に腰を振るが、焦らしているのかまだ挿入はしない。
「うぐぐっ……ふんぐっ……」
松葉のように交差させてグングンと押し入ってくる剛棒に、ありさは猿轡の隙間からうめき声をあげた。
「ありさ、この格好はどうや?気持ちええやろ?松葉くずし言うんやで」
九左衛門はニタニタとに淫靡な笑みを浮かべながら、剛棒でありさをいたぶった。
「うんぐっ……ぐぐぐっ……」
ありさは身体の奥底から沸き起こってきた奇妙な感覚にくぐもった悲鳴をあげる。 股を交差させ次第にせわしくなっていく九左衛門の腰の動きに、髪を振り乱し泣き喚いた。
「ごっつうええ具合やないか。わしのもんに吸いついて自分から奥に吸い込んでいきよるわ。まるでタコ壺みたいや。ほれ、ほれ。子宮の中にわしの精子をたんとぶちまけたるからな~」 「ぐぐぐぐぐっ!うぐぐぐぐっ!」
冗談じゃない。昨夜土蔵で縛り上げて処女を強奪し、そのうえ体内に精子まで放出したではないか。 何が何でも体内への放出だけは避けたくて懸命に抵抗を試みたありさであったが、がっちりと絡められてなかなか脱げだすことができない。
吉原の遊女は四ツ (午前十時頃) に起床し、入浴や食事をしたあと、昼見世の準備にとりかかる。
昼見世が始まる前、孫兵衛は二階にある小春の部屋を訪ねた。
小春は上級遊女の部屋持ちで、八畳ほどの個室を与えられていた。 この個室に平常起居し、客も迎える。
部屋の隅には箪笥が置かれ、たたまれた三つ布団の上に枕がふたつ、並んでおかれていた。
壁には三味線がかかっている。
ちょうど、小春は鏡台に向かって化粧をしているところだった。 孫兵衛はそばにすわった。
「どうしたのでおざんすえ、 まごどん、 まじめくさった顔をしいして」
「花魁、昼遊びしかしない新次郎さんのことですがね。 どうです、新さんをどうにかして泊めてみませんか」 「材木屋の若旦那の新さんでおざんすか」 小春はあまり気乗りしないようだった。
新次郎が小春に夢中になっているのは傍から見ても明らかだったが、小春にとっては単なる客のひとりに過ぎない。
遊女として常套手段を用いなければならないのは、時々昼見世に来させる。 そのため惚れているように見せかける。 いまはそれでじゅうぶんのようだった。
その顔はうっすらと紅潮している。
いよいよ泊るという興奮はもとより、初めて経験する夜見世の賑わいに圧倒されたようだ。
昼見世の時間帯の吉原は閑散としているが、夜見世ともなると漢どもの女を抱きたくはやる熱気に満ち満ちていた。
大門をくぐると左手に面番所がある。 そこを過ぎると遊女が格子の内側に居並んだ張見世があり、大行灯がともされている。
一階の奥に居る楼主は夜見世の時刻が近づくと神棚に商売繁盛を願って拍子木を打ち、神棚の鈴をシャンシャンと鳴らす。
張見世の正面に座るのは上級女郎。 左右の脇の席に若い見習い女郎、新造たちが座り、楼主の拍子木を合図に清掻という三味線などによるお囃子が弾き鳴らされる。
若い衆である孫兵衛たちは清掻に合わせて紐でつるした木の下足札の束をリズムよくカランカランと鳴らし合いの手を入れる。
それが鳴り響いている間に、二階で化粧や着替えを済ませた花魁がすうっと障子を開いて部屋から出て来る。
上草履をぱたぁんぱたぁんと鳴らしながら、ゆったり階段を下りてくる。
張見世の前に多くの漢たちが群がり、熱心に格子の内側の遊女の品定めが始まっていた。
梨沙の噂は聞き及んでいた。 美人なのになぜか独り身、しこたま儲けいてるはずなのにアパート暮らし。 普段の生活はそれこそ、そこいらの人妻と何ら変わらない楚々としたものだった。
その梨沙が時々遊び歩いているところを見たというものがいる。 しかも猟奇じみたアレが始まると豹変してしまうようなのだ。
徹の脳裏に不快な情景が浮かんだ。 それは梨沙が辱められてるシーンだった。
両手首を紐状のもので縛られた梨沙は全裸で床に這わされ、ふたりの漢に嬲られていた。 彼女の前に立った漢はフェラチオを要求している。
後ろに回った漢は梨沙を背後から貫き、荒々しく腰を躍らせていた。
単なる妄想に過ぎないが、楚々とした独り身の女を手に入れでもすれば、日ごろたまったうっぷんを晴らしたくなるのも無理はない。
妄想しすぎて下腹部に鈍痛さえ覚え始めた徹が、分身をだましだまし徘徊し、並木梨沙が住むというアパートを探し当てたのは、もうそろそろ出勤準備を始めているであろう時刻だった。 続きを読む
恐る恐るインターホンを鳴らした。 古いとはいえカメラ付きのようだったので、顔が映らないようインターホンに背を向けて立った。 ややあって応答があった。
「どちら様でしょうか? 訪問販売ならお断りよ」 「ご家族のことで、ちょいとお話しをうかがいたくて……」 徹は小声でつげた。 ドア越しに狼狽の気配が伝わってきた。
「お手間は取らせません。 ご協力をお願いします」 「……わかりました」 インターホンが沈黙し、しばらく待つと玄関ドアが外に向かっておずおずと開いた。 徹はすかさず右足をドアの隙間に差し入れた。
すっぴん。 顔立ちは整ってはいるが、店で見た時と違いどこかしら生活の疲れが滲み出ていた。
「入って! 早く入ってください! アパートの人たちにこんなところを見られたくないの」 「わかりました。 それでは失礼します」 徹は三和土に入り、後ろ手にドアを閉めた。 梨沙が不安そうな表情で玄関マットに正座し、徹のために来客用と思えるスリッパをそろえ差出した。 続きを読む
尼子家の情勢を探るべく忍び込む素っ破(すっぱ)・素っ破(らっぱ)の類を見分けるためだ。
したがって集落のはずれ、峠の入り口には麓の布部村の人口と比べ、おおよそ似つかわしくない堅牢な番所があった。
隣国との戦に明け暮れる富田尼子は、防衛上の観点からそれまで旅のものであろうが民百姓であろうが、大川に沿って城下に向わせるべく道を拓け、或いは筏で川を下るべく川床の石をどけるなどして利便を図っていたものを一切取りやめ、川奉行をあえて置き行き交う川舟を脅し、山越えの方面に向かわせるよう仕向けた。
敵方とみれば道中切り捨てるべく道の要所要所に密かに兵を配し、また、通行に難儀するような獣道状のものを街道と偽り、徹物は誰であろうと渓谷から更なる渓谷へと追い込んだのである。
その中山峠への登り口を、いま独りの漢が付近の樵にしては不釣り合いな質素極まりないいでたちで登っていく。 関所役人の問いに漢は「下薬研へ郷帰り中の上阿井村の佐吉と申します」と、蓑と菅笠で風体を隠すようにし名乗った。 続きを読む
拐かし (かどわかし) 第八話
「兄ぃじゃねえか。 久しぶりやなぁ」 「おぅ、 てめえか、 元気そうでなによりだ」 「いま、 どうしてるんです」 「俺は丁 (ちょう) の若い者よ。 そういうてめえは、なにやらかしてるんだ」 「兄ぃ、なにやらかしてるはないでしょう。 堀の油問屋 笹屋の手代をやらしてもらってます」丁 (ちょう) とは吉原の俗称で、関係者は気取って「ちょう」「さと」「なか」とも呼んだ。 同じく堀とは山谷堀のことで、大川(隅田川)から西に入る入堀、狭義では今戸橋下から 日本 にほん 堤下までをいう。
「それにしても、コツで遊んでいるようではお互い、たいしたこたぁねぇなぁ」
「八ッ八ッ八ッ、違えねえ」
「堀なら、帰りは日本堤だな。 どうでぇ、いっしょに話しをしながら帰ろうや」
こうして、コツの女郎屋を出たふたりは連れ立って、三ノ輪から日本堤にはいった。
話しの中で、何気なく忠八がいった。
「俺は舟を漕げるから、店ではけっこう重宝がられてるよ。 船頭がいないとき、俺が樽や油を荷舟で運ぶんさね」
「ん!? 忠八、てめえ舟が漕げるんか」
兄貴分と敬う孫兵衛の問いかけに驚きつつも
「俺あ深川の漁師のせがれだからなあ、当たり前と言えば当たり前さね。 幼い頃から櫓を漕がされtらもんだ」
「…そうだったのか…」
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ありさ 土蔵の濡れ人形 (改) 第十六話 「騎乗のありさ」 Shyrock作
次に騎乗位でのまぐわいを目論む九左衛門は、顔面にまたがっているありさを腹部まで下がるよう命じた。 緊縛されて不自由な身のありさは、膝歩きでゆっくりと後ずさりする。 腹部には年齢不相応と言えるほど元気にそそり立つ剛棒が待ち構えている。 そのおぞましさに一瞬たじろいだありさに九左衛門は低い声でささやいた。「さあ、チンチンの上に座ろか」
「……」
「素直にせんかったらまた痛い目に遭うで。ええんか?」
九左衛門はムクリと起き上がると胡坐に座り、ありさの下肢を強引に割り広げていく。
「ぬぐっ!んんぐっ!」
白い太腿を押さえつけ、赤黒い肉棒を濡れそぼった陰裂になじませようと、上下に滑らせる。
泣いて首を振るありさを無視して、感情にまかせて怒張したイチブツを突きこんだ。
さきほど散々舐められて濡れそぼった花弁に、限界まで張りつめた亀頭がズブズブと沈みこむ。
「よっしゃよっしゃ、ええ具合やで」
「んぐんぐっ!んんんぐっ!」
ありさは不自由な上半身をひねり、絶望的な抵抗で腰をくねらせ、肉棒を外そうとする。
九左衛門は対面座位で結合を果たすと、すぐさま騎乗位に移行した。
「ぐふふ……さあ、わしの腹の上でしっかりと腰振ってもらおか。たっぷりとわしのチンポを味わうんや」
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拐かし (かどわかし) 第九話
衣紋坂 (えもんさか) から大門 (おおもん) は直接望めない。 日本堤の土手道 (通称五十間道 - ごじっけんみち) も、曲がりくねらせてあり大門 (おおもん) は望めない。孫兵衛は吉原妓楼 海老屋の若い者をやっているため、なかなか吉原の外に出る時間はなかった。
そのため忠八が海老屋にやって来たが、妓楼で内密の話しは出来ない。
ふたりは、吉原の西南隅にある九朗助稲荷の境内などで相談を重ねた。
孫兵衛から仕掛けの概要をきかされたときの、忠八の最初の反応は、
「面白いな。 しかしよ、 そんなにうまくいくだろうか」
と、半信半疑だった。
苦笑いさえ浮かべていた。
孫兵衛はふところから四両を取り出した。
「これが俺の有り金全部だ。 客人や花魁から頂いた祝儀を貯め、ようやくこれだけ作った。 今度やる仕掛けの準備に、全て注ぎ込むつもりだ。
それを見てようやく、忠八が真剣な顔つきになった。
「兄ぃ、本気なんだな」
「あたりまえだ。 うまくいくかどうかは、ふたつにかかっている。 ひとつは、昼遊びしかしない新次郎を、どうにかして海老屋に泊まらせること。 こいつは俺の方でなんとかする。 女郎並みに手練手管を尽くすつもりさ。 もうひとつは、速やかに移動すること。 これは、おめえのその手腕にかかっている」
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ありさ 土蔵の濡れ人形 (改) 第十七話 「碁盤攻め」 Shyrock作
まもなく両手を拘束していた縄が解かれた。 しかし手拭いはまだ噛まされたままで、口の中が唾液だらけになって不快感が募る。 ありさは碁盤の前に立つよう命じられた。 碁盤は縦が一尺五寸、横が一尺四寸、高さが四寸あり、本榧でできた高級品だ。 渋い飴色の光沢がかなり使い込まれていることを物語っている。「碁盤に手ぇついて、おいど上げ」
ありさは命じられたとおり、碁盤に両手をついて、尻を上げた。
たくし上げて帯に挟んでいた着物の裾がいつの間にかだらりと垂れている。
先程の九左衛門とのまぐわいで裾が乱れてしまったのだろう。
九左衛門はもう一度着物の裾をまくり上げ帯に挟み込み、ありさを昆布巻きにしてしまった。
着物の女性と脱がさずに背後からいたす場合は、着物の裾をたくし上げて帯に挟みこむ昆布巻きが最適なのだ。
たとえ情交を結んだ相手ではあっても、無理やり着物の裾をまくられるのは女性にとって屈辱的な行為といえる。
「もっとおいどを高う上げて」
九左衛門はピシャリと尻たぶを打った。
顔を顰めるありさ。猿轡の奥から小さなうめきが漏れる。
九左衛門は後方から肉棒を太腿の間に滑り込ませ、割れ目にぴったり沿わせた。
陰裂をなぞるように前後に腰を振るが、焦らしているのかまだ挿入はしない。
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ありさ 土蔵の濡れ人形 (改) 第十八話 「濡れ人形」 Shyrock作
秘孔を剛棒に貫かれ、下腹部をブルブルと震わせている。 昨日よりも蜜液の量が少し増し痛みが和らいだのが、せめてもの救いかも知れない。 肉道のすべりも幾分か滑らかにになり、膣襞がしっかりと擦られている。「うぐぐっ……ふんぐっ……」
松葉のように交差させてグングンと押し入ってくる剛棒に、ありさは猿轡の隙間からうめき声をあげた。
「ありさ、この格好はどうや?気持ちええやろ?松葉くずし言うんやで」
九左衛門はニタニタとに淫靡な笑みを浮かべながら、剛棒でありさをいたぶった。
「うんぐっ……ぐぐぐっ……」
ありさは身体の奥底から沸き起こってきた奇妙な感覚にくぐもった悲鳴をあげる。
股を交差させ次第にせわしくなっていく九左衛門の腰の動きに、髪を振り乱し泣き喚いた。
「ごっつうええ具合やないか。わしのもんに吸いついて自分から奥に吸い込んでいきよるわ。まるでタコ壺みたいや。ほれ、ほれ。子宮の中にわしの精子をたんとぶちまけたるからな~」
「ぐぐぐぐぐっ!うぐぐぐぐっ!」
冗談じゃない。昨夜土蔵で縛り上げて処女を強奪し、そのうえ体内に精子まで放出したではないか。
何が何でも体内への放出だけは避けたくて懸命に抵抗を試みたありさであったが、がっちりと絡められてなかなか脱げだすことができない。
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拐かし (かどわかし) 第十話
手初めに、なんとしても吉原妓楼 海老屋に新次郎を泊めないことには苦労して編み出した仕切りもかなわない。吉原の遊女は四ツ (午前十時頃) に起床し、入浴や食事をしたあと、昼見世の準備にとりかかる。
昼見世が始まる前、孫兵衛は二階にある小春の部屋を訪ねた。
小春は上級遊女の部屋持ちで、八畳ほどの個室を与えられていた。 この個室に平常起居し、客も迎える。
部屋の隅には箪笥が置かれ、たたまれた三つ布団の上に枕がふたつ、並んでおかれていた。
壁には三味線がかかっている。
ちょうど、小春は鏡台に向かって化粧をしているところだった。 孫兵衛はそばにすわった。
「どうしたのでおざんすえ、 まごどん、 まじめくさった顔をしいして」
「花魁、昼遊びしかしない新次郎さんのことですがね。 どうです、新さんをどうにかして泊めてみませんか」
「材木屋の若旦那の新さんでおざんすか」
小春はあまり気乗りしないようだった。
新次郎が小春に夢中になっているのは傍から見ても明らかだったが、小春にとっては単なる客のひとりに過ぎない。
遊女として常套手段を用いなければならないのは、時々昼見世に来させる。 そのため惚れているように見せかける。 いまはそれでじゅうぶんのようだった。
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拐かし (かどわかし) 第十一話
中秋の明月の夜、新次郎は五ツ (午後八時ころ) 過ぎに現れた。その顔はうっすらと紅潮している。
いよいよ泊るという興奮はもとより、初めて経験する夜見世の賑わいに圧倒されたようだ。
昼見世の時間帯の吉原は閑散としているが、夜見世ともなると漢どもの女を抱きたくはやる熱気に満ち満ちていた。
大門をくぐると左手に面番所がある。 そこを過ぎると遊女が格子の内側に居並んだ張見世があり、大行灯がともされている。
一階の奥に居る楼主は夜見世の時刻が近づくと神棚に商売繁盛を願って拍子木を打ち、神棚の鈴をシャンシャンと鳴らす。
張見世の正面に座るのは上級女郎。 左右の脇の席に若い見習い女郎、新造たちが座り、楼主の拍子木を合図に清掻という三味線などによるお囃子が弾き鳴らされる。
若い衆である孫兵衛たちは清掻に合わせて紐でつるした木の下足札の束をリズムよくカランカランと鳴らし合いの手を入れる。
それが鳴り響いている間に、二階で化粧や着替えを済ませた花魁がすうっと障子を開いて部屋から出て来る。
上草履をぱたぁんぱたぁんと鳴らしながら、ゆったり階段を下りてくる。
張見世の前に多くの漢たちが群がり、熱心に格子の内側の遊女の品定めが始まっていた。
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あ・て・つ・け 第1話
日置徹は有頂天になっていた。 何度も通いつめ、この日やっと憧れのキャバレー穣 梨沙を口説き落とし、ラブホに連れ込めたからだ。梨沙の噂は聞き及んでいた。 美人なのになぜか独り身、しこたま儲けいてるはずなのにアパート暮らし。 普段の生活はそれこそ、そこいらの人妻と何ら変わらない楚々としたものだった。
その梨沙が時々遊び歩いているところを見たというものがいる。 しかも猟奇じみたアレが始まると豹変してしまうようなのだ。
徹の脳裏に不快な情景が浮かんだ。 それは梨沙が辱められてるシーンだった。
両手首を紐状のもので縛られた梨沙は全裸で床に這わされ、ふたりの漢に嬲られていた。 彼女の前に立った漢はフェラチオを要求している。
後ろに回った漢は梨沙を背後から貫き、荒々しく腰を躍らせていた。
単なる妄想に過ぎないが、楚々とした独り身の女を手に入れでもすれば、日ごろたまったうっぷんを晴らしたくなるのも無理はない。
妄想しすぎて下腹部に鈍痛さえ覚え始めた徹が、分身をだましだまし徘徊し、並木梨沙が住むというアパートを探し当てたのは、もうそろそろ出勤準備を始めているであろう時刻だった。
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あ・て・つ・け 第2話
徹は物陰に隠れ、しばらくアパートの様子をうかがった。 頃合いを見計らい、階段を上り郵便受けをのぞいた。 空だった。 どうやら梨沙は室内にいるようだ。恐る恐るインターホンを鳴らした。 古いとはいえカメラ付きのようだったので、顔が映らないようインターホンに背を向けて立った。 ややあって応答があった。
「どちら様でしょうか? 訪問販売ならお断りよ」
「ご家族のことで、ちょいとお話しをうかがいたくて……」
徹は小声でつげた。 ドア越しに狼狽の気配が伝わってきた。
「お手間は取らせません。 ご協力をお願いします」
「……わかりました」
インターホンが沈黙し、しばらく待つと玄関ドアが外に向かっておずおずと開いた。 徹はすかさず右足をドアの隙間に差し入れた。
すっぴん。 顔立ちは整ってはいるが、店で見た時と違いどこかしら生活の疲れが滲み出ていた。
「入って! 早く入ってください! アパートの人たちにこんなところを見られたくないの」
「わかりました。 それでは失礼します」
徹は三和土に入り、後ろ手にドアを閉めた。
梨沙が不安そうな表情で玄関マットに正座し、徹のために来客用と思えるスリッパをそろえ差出した。
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帰郷
中山峠は尼子家が滅亡へとひた走った一時期、要害山とも呼ばれており、幾たびもこの地を巡って毛利家との間で争奪戦が繰り広げられた。 この地を治めていた富田尼子は物流を断ってまでも富田の地を守るべく命運をかけこの地に関所を設けた。尼子家の情勢を探るべく忍び込む素っ破(すっぱ)・素っ破(らっぱ)の類を見分けるためだ。
したがって集落のはずれ、峠の入り口には麓の布部村の人口と比べ、おおよそ似つかわしくない堅牢な番所があった。
隣国との戦に明け暮れる富田尼子は、防衛上の観点からそれまで旅のものであろうが民百姓であろうが、大川に沿って城下に向わせるべく道を拓け、或いは筏で川を下るべく川床の石をどけるなどして利便を図っていたものを一切取りやめ、川奉行をあえて置き行き交う川舟を脅し、山越えの方面に向かわせるよう仕向けた。
敵方とみれば道中切り捨てるべく道の要所要所に密かに兵を配し、また、通行に難儀するような獣道状のものを街道と偽り、徹物は誰であろうと渓谷から更なる渓谷へと追い込んだのである。
その中山峠への登り口を、いま独りの漢が付近の樵にしては不釣り合いな質素極まりないいでたちで登っていく。 関所役人の問いに漢は「下薬研へ郷帰り中の上阿井村の佐吉と申します」と、蓑と菅笠で風体を隠すようにし名乗った。
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