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知佳の美貌録 更新情報 / 411

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知佳 2024/05/18 (土) 16:39:04 70297@909a7

拐かし (かどわかし) 第八話

「兄ぃじゃねえか。 久しぶりやなぁ」 「おぅ、 てめえか、 元気そうでなによりだ」 「いま、 どうしてるんです」 「俺は丁 (ちょう) の若い者よ。 そういうてめえは、なにやらかしてるんだ」 「兄ぃ、なにやらかしてるはないでしょう。 堀の油問屋 笹屋の手代をやらしてもらってます」

 丁 (ちょう) とは吉原の俗称で、関係者は気取って「ちょう」「さと」「なか」とも呼んだ。 同じく堀とは山谷堀のことで、大川(隅田川)から西に入る入堀、狭義では今戸橋下から 日本 にほん 堤下までをいう。

「それにしても、コツで遊んでいるようではお互い、たいしたこたぁねぇなぁ」
「八ッ八ッ八ッ、違えねえ」
「堀なら、帰りは日本堤だな。 どうでぇ、いっしょに話しをしながら帰ろうや」

 こうして、コツの女郎屋を出たふたりは連れ立って、三ノ輪から日本堤にはいった。

 話しの中で、何気なく忠八がいった。
「俺は舟を漕げるから、店ではけっこう重宝がられてるよ。 船頭がいないとき、俺が樽や油を荷舟で運ぶんさね」
「ん!? 忠八、てめえ舟が漕げるんか」

 兄貴分と敬う孫兵衛の問いかけに驚きつつも
「俺あ深川の漁師のせがれだからなあ、当たり前と言えば当たり前さね。 幼い頃から櫓を漕がされtらもんだ」
「…そうだったのか…」
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