電車がトンネルに入り、ようやく東京駅へと到着したと思われたが──
車体は大きく揺れて、急ブレーキがかけられた。
御ハッサム「おわっ──」
先ほど老人柿崎に席を譲っていたため、立っていた御ハッサムのみ転倒する。
あんみつ「人身事故…でしょうか」
柿崎「さて?」
自粛中といえど、中央線には多くの乗員が乗っている。人々は不安の表情を浮かべ、とりあえずスマホを取り出しざわつき始める。
するとそこへ──
「あぎゃああああああああああああああ!!!」
隣の車両から、大男が叫び声を上げながら現れた。
あんみつ「まずいドリランドだ!」
御ハッサム「あれが、例の狂人ですか!?」
狂人ドリランド、本名ロニーコールマンは人類最強と謳われた狂人である。
扉越しに見える隣の車内は、床も壁も鮮血で染められていた。無惨にも乗客は全員引き裂かれており、惨殺と呼ぶべき光景がうかがえる。
こちらの車内にいた人々はそれに気づき、悲鳴をあげて我先にと反対側の車両へ押し寄せたが──
ドリランド「あぎゃあああああああああああああああ!!!」
それが裏目に出た。野獣にとって、逃げる集団を追うのは本能といって良い。ドリランドは咆哮を放つと、なだれる人々に向かって全力タックル──衝撃で10人ほどを軽く圧死させた。
あんみつ「ダメだ柿崎さん!ここは御ハッサムを連れて逃げてください!」
御ハッサム「そんな──僕も戦います!」
柿崎「いいや、残念ながらあっしの銃も、お前さんの右腕も歯が立たんだろう。ここは逃げるに限るね」
御ハッサムは苦悶の表情を見せたが、あんみつは彼の肩に手を置いた。
あんみつ「君の力は後で必ず必要になる。そのときまで、万全の状態で待っていてくれ──銀座で合流しよう」
御ハッサム「…はい。先輩もどうかご無事で!」
2人は窓を割って外に脱出した。