あんみつ大王の鉄槌。それは正義の拳。微量の誤差もない垂直攻撃。つまり、最初の犠牲者となるのは必然的に高等生物となる。
当代のそれに当たる存在は、妖精王ベリヒであった。太極の接近を感知して、急いで逃げだそうとするももう遅い。全知全能たるあんみつ大王は、妖精王を自身の空間に連れ去った。
「こ、ここは...」
真っ平らな地平線。凸凹一つない精錬された空間。妖精の気配すら感じないということは、ここは異次元──強制転送されたということか?この私が?そんな芸当ができる者など存在するのか?
『欲望の塊。邪悪の権現。さすが、生物ピラミッドの頂点に君臨するものは、それを象徴する性質をしてやがる。』
「き、貴様は」
振り返ったところで、目が眩んだ。無敵の妖精王とて、太極の存在を視認することはままならない。
『
「...何者だ」
愚問であった。妖精王とて無知蒙昧ではない。気づいたがゆえに、認められなかったのだ。だって、その意味するところは──
『妖精王、命令だ。ここで死ね。』
「い、嫌だああああ!断じて認めてなるものかああああ!」
妖精王は魔法陣を展開した。たとえ異次元といえど、眷族の召喚は可能である。
『唯我論・国土無双──グランドクロス!』
必殺の奥義も、破滅の呪いも、数の暴力も、そんな効果をあんみつ大王は“知らない”。そんな概念は“認めない”。ゆえにただ“黙らせた”。
閃光が走る刹那の中で、哀れにも眷族たちは嬲られて、抉られて、叩き潰されたのだ。
「あ...ああ」
もはや妖精王に為す術はなし。文字通り八つ裂きにされて、マーデボルジュまで堕とされる。
あんみつ大王の怒りは、まだ冷めない。