あなたが夕食用の鍋をかき混ぜているところに黄色い何かを大事そうに抱えた若者――ネロリ博士から見習いリサーチャーとして紹介された――が近づいてくる。
「あー、先輩…。食事の支度中にすいませんっす。今ちょっとお時間いいっすか?」
頬をかきながら少しばつが悪そうに聞いてくる。
「ありがとうっす。先輩、この辺って…ピカチュウがどこで暮らしてるか知ってるっすか?せめて住処の近くで放してやりたいんすよ」
そういって突き出されたピカチュウは妙に不服そうな顔を向けてくる。
「あー…なんていうかっすね、うちのわんぱくウッウ、食材と勘違いして連れてきちゃったんすよね、この子を」
さすがにケンカになるから待機させたっす、と腰のボールをつつく。
「なんか自信なくすっすね。自分が指示聞かせられてないっていうか。こいつも自分の為に食材持ってきてくれるんすけど、たまーに…いや二日に一回…いやほぼ毎日?変なの持ってくるんすよね。今日もずいぶん気合入ってたかと思ったらとんだ大物だったわけっす…。先輩のとこのみたいにもう少し冷静になってくれればいいんすけどコツとかあるんすか?」
ちらりとあなたは連れたポケモンを見やる。長く付き添ってくれた大事な仲間だ。ただそれだけで、別に何か教示できるコツなんて思いつかない。
あなたが自らの相棒に目を向けているすきに後輩はピカチュウの前に余ってたリンゴを一個差し出していた。警戒するようにそろそろ手を伸ばしていたかと思うと、突如電光石火の如くリンゴを奪うと一心不乱にかじり始めた。
「おー…よく食うっすね。もう一ついくっすよ。あー、いい食べっぷりっすね。いっそうちの子になるっすか、って、いだぁ!でんき流すのやめるっすよ!!」
かみなりのようにやかましい声が響く中、やれやれとばかりにカビゴンは一際大きなあくびをしていた。
「そっすか。忙しいところ失礼したっす!」
そう答えるとそのまま周囲の草むらに入って行ってしまった。その背中にもう少しで食事が出来ると呼びかけるも、わかったっすっ!と元気な声が返ってきた。
あなたはその元気さに、やれやれと肩をすくめながら鍋をかき混ぜるのに戻る。
すき
ちょっとゲームブックみを感じて懐かしくなった