坂本:この言葉、ほんとうに嫌いなんですけど、(バッハの曲を聴くと)まさに「音楽に救われる」という感じがするんですよ。癒される、慰められる思いがします。子どものころ、ケガをして痛かったときに、母がこうやって手をあててくれた(話しながら自身の左手を右腕にあてる)、そんな感覚と似ています。
坂本:僕にとって音楽による慰めっていうのは、そういう感じのものなんです。「お母さんの手」のようなもの。なにも音楽のすべてがそうだというわけじゃなくて、なかでも特別な曲がある。バッハの「無伴奏チェロ組曲」とか。そういう意味では、「癒し」という言葉は嫌いだけれど、僕もやっぱり音楽に慰められているんですよね。
音楽の中でも、言葉を乗せて直に精神に触れてくるような歌と言葉のない曲とあるけども、歌もいいけどインストゥルメンタルの寄り添い方はより深い慰めを感じる。
個人的には、歌と一緒に沈めるところまで沈んで、インストゥルメンタルと一緒にゆっくり浮き上がってくる、という慰め方をそれぞれに感じる。その意味で、応援歌よりは悲劇をそのまま歌った歌の方が「効く」。
言葉があるとその言葉に関する自分の心情を整理することを積極的に求められている感じがどうしてもしてしまうけど、言葉のない音楽は自分自身がゆっくりながらも能動的に心情を整理することを支えてくれるという感じがする。
通報 ...