(EV)大手テスラは、自社開発のスーパーコンピューター「Dojo(ドージョー)」の活用で、時価総額を最大5000億ドル(約73兆円)上乗せできる――。米モルガン・スタンレーは11日、テスラが自動運転技術の基盤として開発するスパコンを高く評価するリポートを公表した。これを受け、テスラの株価は同日の米国市場で、前週末比で10%上昇した。
Dojoは、テスラが自社EVの完全自動運転の実現に向け、人工知能(AI)の機械学習を磨くために構築しているスパコンだ。モルガン・スタンレーはこのDojoに関するリポートでテスラの戦略を評価し、今後12カ月の目標株価を従来の250ドルから400ドル(11日終値は273ドル)に引き上げた。
QUICK・ファクトセットによると、11日終値ベースで時価総額は8683億ドルになった。
テスラは、路上を走行する車両から送られてくる動画をスパコンに処理させ、自動運転技術がどうあるべきかを学習させていく計画だ。モルガンはテスラが今後、独自のスパコンの活用により処理データの急増に対応していけると分析した。
そのうえで「テスラは、価格が決まっている(売り切りの)自動車の販売にとどまらない新たな市場開拓が可能になる」とし、自動運転サービスのソフトウエア収入が利益率を大きく高める可能性があると分析した。
スパコンを基盤とする自動運転技術を他の自動車メーカーなどに提供することで、収益力が高まる余地もあるとした。ロボットや鉄道、航空などの自動車以外の分野にも技術を活用できる可能性があるとし、テスラの成長性の高さを強調した。
テスラは自社の自動運転支援システム「FSD(フルセルフドライビング)」を米国に導入しているが、技術開発は途上で「ベータ版」の運用にとどまっている。23年2月には、システムが安全ではない挙動をすることがあるとして、約36万台のEVをテスラがリコール(回収・無償修理)すると米当局が発表している。